わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第五十七章
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「さあて、ダレルちゃん、美味しいものも戴いたところで、はっきりと言いましょう。なぜ、あの、にっくきブリューリなんかと一緒にいたのかなあ?」
ダレルは、その最高のラーメン・スープを、まだすすっている。
「そうですわね。母としても大いに気になりますわ。」
元女王へレナが、さらに追加で追及した。
「いやいやあ、お二人から言われるとなんとも気が重いですが、一緒にいたなんてこと、ないでしょう?」
「まあ、この期に及んでよくもまあ、しゃあしゃあとおっしゃいますこと。」
第一王女が憎々しく言った。
「松之山温泉で、一緒にいた方は、いったいどなたですの?」
ダレルは目をまん丸くした。
「ええ~! あの人は、たまたま、あそこにいただけです。あんな怪物だったなんて。急に皆さんが襲ってきたから、ああなっちゃったのです。」
「あなた、ずいぶん性格悪くなった。この2億5千万年ほどで。」
元女王へレナが言った。
「じゃあ、お伺いしますが、あなたは死んだ。「永遠の都」とか言うところに行ったんでしょう?じゃあ、あなたは幽霊? それとも、何?」
「うんま、良く言いますわ。中身です。中身。体は、まあ、こちらのヘレナ様が用立てくださったといいましょうか。」
「作り物なんだ。」
「人間の体をベースに使いましたから、本物ですわ。」
「おわー、なんという恐ろしい事を、相変わらずやってますなあ。」
「あのね、ダレルちゃん、あなたは地球帝国の最高顧問なのです。皇帝陛下に意見を申し立てることができる存在なのです。火星の再興が、あなたの本心なのでしょうけれど、地球をおろそかにしてはなりません。ダレルちゃん、ブリューリは人類の敵ですよ。」
「ああ~、まあ、じゃあ言いますが・・・、仕方がないのでねえ。ブリューリは、あなたの敵ではあっても、もはや人類の敵ではなくなったのです。」
「は?」
「2億5千万年は長いですよ。ねえヘレナ、ええと、どちらにもね。ブリューリさんは、地球に来て地獄にまず落ちた。それで、夢から覚めた。それで分かりますか?」
「む。」
二人のへレナが同時に唸った。
「まあ、今それ以上、言う必要なんかない、でしょう? ぼくが求めるのは平和であって、混乱じゃあないですよ。」
「なら、同調してください。どうも、おかしな動きをするから、おかしなことになるのです。ヘネシーに何をしようとしているのですか?」
「それは秘密です。」
「ばかな。言いなさい。」
ダレルの全身に、強烈なショックが走った。
「うぎゃ!」
「さあ、言いなさい。も一回やる?」
「やはり、あなたは悪い魔女だ。ぼくは火星時代から、あなたからは離れたかったのだが・・・うぎゃ!」
「まあ、ありがとう、そんなに褒めないで。ほら、そんな聞き分けのない子みたいに言わないの。いったい何、企んでるのかなあ?」
第一王女が上半身を露わにして、ダレルをぐっと抱きしめながら言った。
「うわ。離れてください。うわ。」
「まあ、母に向かって・・・・ああ、でも生んだのはあなたね・・・」
「はい。だれるちゃん、わたくしだって、必ずしも、こちらのヘレナ様とはすべてが同じ意見な訳ではないけれど、でもこの際ちゃんと言いなさい。あなたのあたま、割っちゃうわよ。」
「冗談じゃない、やはり同類じゃないか。悪魔だ。 おお、こわ。・・・あ、 うぎゃ! うぎゃ! うぎゃ!」
ダレルの体から、もうもうと湯気が吹き出した。
「ふうん・・・・言わないわねぇ。あまりやると壊れるわよね。人間だからな。」
「はい。ほどほどにいたさねば。可愛そうですわ。わが子なのですから・・・」
「そうか・・・ふうん。ねえダレルちゃん、あなたにはセレモニーに来てもらいたいけど、ここはひとつ、リリカ様に代理という事にして来ていただいて、あなたは、すこしここで休養なさいませ。言っとくけど、アリムさん、つまりあのジャヌアンさんの動きには、注目しているわ。でも、あの子は未来人で、ちょっとやっかいなんだなあ。フェイク画像とかをいっぱい放出していて、アニーさんも混乱気味なの。だから、だれるちゃんが、きちんと説明してくれるといいなあ。少なくともセレモニーの当日までに、それと、当日に、いったいなにするつもりなのかをね。わたくしを皇帝にしたい。そうして、道子に追放されるまで、そのままにしておきたい。でも、それだけでは、ないはずよね。通常、人間には手が出せないところにまで関与したい。偶然未来に起こった事も修正したい。わたくしは、ね、そうじゃないと、ジャヌさんさんには、大昔に説明したけど、聞き入れてもらえないの。彼女は、試験的な未来の存在であって、本来の未来じゃあない。彼女の世界は、もともと用が済んだら立ち消えになる未来であって、そこはもう、仕方がないの。」
「よく言うよ。じゃあ、この世界が本筋だと言う証拠でもあるの?ここも、あなたの言う試験的な未来なんじゃないのか?」
「ほほほほ。そこは、まだ秘密です。でも、ここが本筋である可能性は高いわけ。それにね、どこを本筋にするかなんて、実はその時の、恣意的な事なのだもの。」
「でも、試験的な未来であっても、そこに生きてる生き物は、みな本物なんだろう?」
「まあ、そうね。でも消えてしまえば、そこまでなのよ。もともと、何もなかったものだもの。」
「自然に対する、いや、あなたが信仰する神に対しても、冒とくじゃないか。」
「それは、ものの見方次第ね。この太陽系や銀河系宇宙が、やがて終焉を迎えるように見えていることは確かだし、このまま行けばそうなるわね。でも、その前にある日、突然終結したって、誰にも分らない。本来、何もないのだから。」
「決めるのは、やはり、あなたなのかい?」
「ううん・・・そうだと言えばそうだけど、ねえダレルちゃん。考えてごらんなさい。こちらのヘレナ様は、誰が自分を生んだかを知っている。たまたまね。ね?」
もう一人のヘレナが肯いた。
「まあ、そうです。」
「自分の運命は、生みの親に握られていることも知っている。」
「まあ。。。そうです。」
「何が言いたいの?」
ダレルが、いい加減にしろよな、と、尋ねた。
「まあまあ、いらいらしないの。わたくしはね、自分の生みの親を知らない。わかる?それだけよ、でもそれ以上のことはわからない。もしかしたら、わたくしも、今この瞬間に、母体に吸収されるかもしれない。絶対の確信はないの。」
「・・・・・・・・」
「実を言えば、そこが知りたいわけなの。実を言うとね。さあ、ちょっとここで考えていてくださいな。言う気になったら、いつでも呼んでね。でも、そのままになっても、セレモニーは実施するわ。いいわね。」
「それは、ま、どうぞご自由に。しかし、もったいないことですよ。」
「ふん?なあに、それ。」
「いい、チャンスなんだがなあ。」
「だから、なによ、それ?」
「まあ、考えてください。」
「あら、そう。じゃあ、さようなら。」
第一王女は、さっさと消えた。
「あ・あ・あ・あ、待ってください。はあ・・・じゃあダレルちゃん、またね。」
にこっと微笑んで、元へレナも消えて行った。
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「まあ、ほんとにまあ、もったいないことですなあ。まだまだこれからですよ。」
ダレルは、じっくりとほくそ笑んだ・・・・。
「やましんさあん、外した文章がのこってますよ、あら、いなくなった。まったくもう。」
幸子さんが、お饅頭のやけ食いをしていました。
「あ、いた。ほらほら、ちゃんとお読み下さった方に、お礼言いなさいな。」
「あ、すみません。いつもお読みくださっている方には、深く深く、お礼申し上げます。この先、急がず慌てず、どうやら死ぬまでかかりそうですが、頑張ります!」
「まあ、こういう変人なんですが、幸子からもお願いいたします! ほら、ああ、椅子から落ちた。足元揺らいでます。まったくもう。。。。」
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