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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第五十四章 


 **********   **********


『どうやら、弘子さんのこの機械は、単に空間移動をするだけの機械じゃあないらしい。試してみたいけど、どこに行くのか、行っても帰って来れないかもしれないし、さて、どうしたものかなあ。』

 シモンズは小さなキューブ型の機械を眺めながら考えていた。

『本人と話が出来ればいいけど、普段はヘレナが占領してるからどうにもならない。時々自由にされるらしいが、その時に連絡してくれるだろうか。可能性は極めて低いな。となると、自主的にやってみるしかないか。』

 そこには、市販の機械のように親切な表示などは何もない。

 恐ろしく小さなキーボードが張り付いているだけ。

 さらにこれまた特小の表示画面がある。

 キーを指で押すのはちょっと難しい。

 しかし、この国には「ようじ」という便利な道具がある。


『そうか、アニーさんに聞いて見ようか。』

 シモンズは、アニーに呼び掛けようとしかけたが、思いとどまった。

『まてまて、アニーさんは、あれでヘレナの秘書だからな。いつも味方だと思ったら大間違いだな。どうせこの様子だって、観察してるだろう。まあ、たぶん、見えないんだろうけど。』

 シモンズは、ヘレナに要求して、『アニーからは見えない』作業台を提供してもらっている。

 ホントかどうかはわからない。

『あにーさんの、ばか!』

 とか、

『ぼくの彼女を復活させたからね!!』

 など、紙に書いたりして、時々挑発してみているが、今のところアニーは反応しない。


 実際、シモンズの『彼女』の復活は、試してみている。

 『彼女』にとどまらず、地球上のコンピューターは、みなアニーに抑えられてしまっているが、新たな独立したシステムを構築できないかどうか試みている。

 シモンズ自慢のシステムをうまく拡大させたら、地球上だけでなら、アニーに対抗できると見ているのだ。

 そこで重要なのが、弘子さんの弟君おとうとくんだ。

 今のところ、新しい、良い連絡方法が見つからない。

 片っ端から、アニーに読まれてしまったから。


 そんな中で、おかしなメールが一通、届いたのだった。


『なんだこりゃあ?』


【間抜けなアニー君には読めないよ。】


『ふうん。差出人不明。罠かな? 乗ってみるか? どうしようか?』

 シモンズは、ちょっとだけ考えていた。


 **********   **********


「いた、あそこじゃ。7番8番左じゃ。挟み撃ちにせえ!」

 隊長が通信する。

 何かが、ビルの狭い間を駆け抜けぬけてゆく。

 早い。

 人間が走る速度じゃないようだ。

 けれども、その姿かたちはどうやら人間らしい。

 体は、まだ小さい。


 けれど、このバイクも素早い。

 キキキっとタイヤが悲鳴を上げるが、エンジンの音そのものは、相変わらず静かなものだ。

「右にそれた。くそ。わいが先に入るでぇ!」

 副隊長が宣言した。

 小型バイクは大概のところに侵入してしまえる。

 しかも、異常に運転が上手い。

 とてもアマチュアとは思えない。

 二台のバイクが追いかけて行く。


 人影は裏口のドアを開けようとしたが上手くゆかない。

 予定外だ。

 かなりあせっている。

 追い詰められた。

 また走る。

 左に曲がる。

「しまった。行き止まりか。」


「よっしゃ追い詰めたでぇ! 集合じゃあ。」

 隊長が指示する。


 影は行き場を失った。


 **********   **********


「まずいなあ、おいつめられちゃったべ。失敗、失敗。」

 接続者がのんびりと言った。

「こらこら、なんとかしなさい。」

 キャニアが接続者の背中をどんとつついた。

「まだ、無理だと言ったのに。」

「でも、情報は取ったべなあ。」

「ここで捕まったら、意味ない。助けてよ。」

「あいよ。じゃあ、開けるべ。よいしょっと。」


 壁が突然無くなった。

 一瞬だけれど。


 アンジは消えた。


 **********   **********


「あらら、消えた!!」

 副隊長があきれて言った。

「くっそう!おどりゃあ!あと一歩じゃったのに。」

 隊長がうなった。

「えーつが、ここんところの『影』じゃろか?」

「わからん。しかし、わいらの周囲を探っとる事は確かじゃ。アサクサ部屋の通信機が止まっとるようじゃ。アンディちゃんに通信コードを変更させた。データ取られたかもしれん。」

「じゃあ、メンバーがばれるじゃろうが。」

「いや、あれはおとりじゃケーな。こがんこともあろうかと。」

「さすが、隊長じゃ。」

「いやあ、えーつら、甘く見ちゃあおえん。一応組長には知らせにゃな。」

「こえー。鉄拳が飛ぶ。」

「まあな、ここは引き上げじゃ。」

「あい!」


 **********   **********


「ごくろさん。アンジさん。ひやひやしたっぺ?」

 アンジは事務所に帰ってきていた。

「べつに・・・」

 アンジはケロッとしている。

「まあ、よかった。捕まらなくて。」

「これ、データカード。でも、おそらくイミテーションだろうな。」

「どうして?」

「取ってください見たいに、乗ってたから。まあ、言われたようにはしたけど。」

「上等です。アンジさん。休んでいいよ。」

「どうも。」

 アンジは部屋から出て行った。

「どう、思う?」

 接続者が尋ねた。

「さあ・・・第一王女が不良さんのグループのボスだなんて、あり得ないと思ってたけどなあ。」

「まあ、分析してみようじゃん。ぼくが思うに、意外と何か出てくるような気がするんだなあ。」

「どうして?」

「裏の裏だべよ。あの王女はへそ曲がりだべな。」

「ふうん。ねえ、アンジさん、どうするのですか? 警察も、気が付くかも。」

「だべな。というか、王女がぼちぼち嗅ぎつけそうに思うなあ。移動すべっか。」

「やっぱ、誘拐でしょう。それは。」

「まね。でも、彼女は必要だべ。研修所が動き始める。今日はシブヤ。明日はサッポロ中央にセンダイだろう。来週にはフクヨカにもできるし・・・来月には全国全州主要都市に整備完了。よその国も似たような状況で、どんどん施設整備されてるべ。そんで、不感応者がどんどん洗脳されるべな。ゆったりしてたけど、そうもゆかなくなったべなあ。情報では、『過激派』があさってにも大規模テロやりそうだし。」

「どこで?」

「それが、どうやら北ロドロンらしい。」

「南じゃなくて?」

「はいー。たぶん。」

「警告は?」

「そっらあ、おいらたちのお役目ではないっぺ。協力はしないだども。邪魔もしないのがおいらたちの流儀だっぺな。」

「まあ、ね。」

 キャニアは、少し不満そうだったが、それ以上の情報は、残念ながら聞き出せなかった。

「そこで、予定通り、研修所の稼働を遅らせっぺ。今日は、シブヤは大混乱だべなあ。行かない方がいいだべな。」

「やりますか。」

「はいー。だども、あくまで、平和的に。」



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