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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第四十九章


  **********   **********


 もう一人のヘレナは、かなりの時間、大人しく待たされていたので、さすがにもう嫌になって来ていたのだ。


「あまりにも、あまりにですわねえ。立場上やむおえないとも思いますが、火星で長年『女王』を張ってきたのは、ほかならぬ「わ た く し」なのじゃからのう、そこは考えてもらわなければ。とはいえ、あちらのヘレナ様はわたくしの母体であり、一瞬にして吸収されてしまうのですから、圧倒的に分が悪い。命を握られている気分は、やはり良いものではございませんわ。気が付かないでいたうちが、花ですわね。ここは、分身をつくって、脱走と行きましょうか・・・・あららら。出来ないわ。まあまあ、しっかり能力制限してくれてますか。やれやれ・・・なぜかこの部屋は厳重に仕切られていて、外が見えませんし、脱出も無理と見た。しかたがないか、この『テレビ』とかでも見ましょうか。」


 もう一人のヘレナは、大きな『液晶テレビ』を稼働させたのである。

「まあ、地球の文明はまだこの程度ですか・・・」


 リモコンでいろいろとチャンネルをいじっていたところ、たまたま、あの『松之山温泉』での怪しいチャンバラ風景を、観光客が撮影した映像が流されていた。

 リポーターと、解説者らしき人物が会話を交わしている。


「いずれ、これはミュータントと見て、間違いないでしょうか。」

「まあ、そうですな。他に解釈のしようがないが、首が飛んでも復活するなんていうのは、まるでアニメのようですね。しかし、これは実写ですから。信じがたいですが、そうとしか考えられない。」


「む、これはあのブリューリに間違いが無い。この無機的で無感動な目。間違えるはずもない、なんと、この世界で復活していたおったのか。おのれブリューリ、再び我が前に現れるなど言語道断じゃ。ただちに成敗いたさねば。・・・・といって、この檻の中では手が出せぬ。おーい、ヘレナ様。何をしておられるのか!」

 

 ブリューリらしき男の首が飛ぶところは、画面上では巧みに細工されていたが、それでも何が起こったののかは一目瞭然である。

「おのれ、おのれ、こうしてはいられぬのじゃ。あいつの弱点ならば、わたくしが一番よう知っておるというのに。ヘレナ様はなぜ声をかけてくださらぬのか。」



「ふうん。お姉さん強いんだ。」

 小さな声がした。

 みれば、目に前にちょっと小太りな、背の低い、不思議な女の子が立っているではないか。

「あらら、あなたどなた?」

 もう一人のヘレナが、不思議そうに尋ねた。

「あたし、雪子。」

「ユ・キ・コとな。そなた、地球人か?」

「まあね。」

「『まあね』とは、いかなる範疇の言葉かな・・・・・それはつまり同意したのか、否定したのか、どっちなのですか?」

「一応同意。」

「『イチオウ』というのは、これまた何であろうか?」

「おねえさん、火星の女王さまでしょう?」

「おお、なぜ、そなたそれが解るのですか?」

「ふふふふ・・・・・ねえ、おねえさん?」

「なんじゃ?」

「おねえさん、また地球で一番偉い人になりたくない?」

「それもまた、意味がよくわからぬ表現じゃな。つまり、地球の女王にならなぬか?という意味の誘いなのか?」

「まあ、そう。簡単に言えばね。」

「ふうん。しかし、それは無理じゃ。ヘレナ様がいらっしゃる限りは、歯が立たぬ。」

「ふうん・・・でも、ヘレちゃんが認めたら?」

「ヘレちゃん?へレナさまは、ここでは『へれちゃん』と呼ばれているのか?」

「まあ、あたしはね。でも、本人は知らないよ。もっとも雪子のことは知ってるけども。」

「さっぱりわからぬなあ。だいたい、そなた、何処いづこから、ここに侵入したのじゃ?」

「どこでも、入れるよ。あたしの妨げになるものなどは、どこにもないもの。あらゆる物質も、あたしの邪魔にはならない。すべての空間も時間も意味はない。」

「そなた、何者なのじゃ?」

「ヘレちゃんの妹だよ。」

「イモウト・・・ああ、少しわかってきた。この地球に於ける、肉体的な、妹なのじゃな。」

「あたり。さすが女王様。」

「でも、それでは、先ほどの言葉と矛盾する。人間がまったく物質に妨げられずに動けるということはない。避けるか、穴をぶち抜くか、ドアを付けるか・・・」

「まあね。でも、そのあたりは置いといて、また本当の女王様に、なりたくない?」

「むむむ、そなた、悪魔、魔女・・・そういう類のものじゃな。確か、アンドロメダ銀河で聞いたことがある。そのような完全な『負』の存在がいると。わたくしとは、まったく別の起源があるらしいと。」

「それは、おとぎ話よ。あ、ヘレちゃんが来た。考えといてね。この話、内緒よ。ヘレちゃんに言ったら、もう二度と来ないからね。あ、そのまえに、あなたを、消しちゃうかも。じゃね。」

「消えてしもうた・・・・ううん。これはなんであろうか。」

「おまたせー!ヘレナさんごめんなさい。待たせてしまいました。ちょっと面倒があってね。お久しぶりですね。元気そうでなにより。あら。どうかしたの?」

 もう一人のヘレナの様子さぐりながら、ヘレナ(弘子)が尋ねた。


「いえ、ああ、なんだかテレビに見入っておりました。ヘレナ様、ご機嫌よろしゅう。お懐かしゅうございます。母上さま。」

「うん。いやあ、そう言われると、ちょっと弘子の心がずきずきしておりますわ。あなた、怨んでるでしょ?」

「いえ、この体は、プロキシマケンタウリで作ってもらった、疑似人体ですから、心を持ちませぬ。ゆえに恨みは生じませぬ。」

「あ、そう・・・。まあ、あそこの技術には謎も多いけど・・・ウナさんのも昔、頼んだことがあったなあ。」

「それよりも、ヘレナ様、ブリューリが出ております。これは、いかなことか?」

「ああ、もう見たか。うん。そうなんだなあ。まあ、今のところ、『泳がせてる』状態ですけどね。ダレルちゃんが絡んでるみたいで、『抗ブリューリ剤』の対抗薬なんかを作ったみたいなんだ。でも、ダレルちゃんは身柄を確保した。これから尋問するんだ。あなた、ルイーザと一緒に来ない?」

「ルイーザさまと申しますは、どなた?」

「この世の妹よ。双子のね。」

「何とほかにも、まだ・・・」

「は?何よ。それ。」

「いやいや、お気になさらずに。わたくしも会いとうございます、ダレルちゃんには。」

「でしょうね。わかった、まあ積もる話は後にして、先に行きましょう。あなたに害が及ばないよう、監禁したみたいになっていたげど、ごめんなさいね。」

「あ、いえいえ、もう、そうであろうと思うておりましたゆえ。」

「そう。」

 ヘレナ(弘子)は、かなり疑りぶかそうに分身のヘレナを見渡した。


 ************   ************

































  **********   **********


「やましんさまあ、お池が凍ってしまいました。幸子、まだ帰っちゃだめですか?」

「幸子さんのお家は、そっちでしょう?」

「やましんさまが、孤独ってると女王様からお伺いしましたよ。」

「う・・・いやまあ、ははは、なんのなんの(確かに生きてていいのかって疑問あり・・・)・・・いいですよ。もう来てもらっても。」

「やた。これじゃあ、お客さん来ないですよ。まるで北極か南極みたいだもの。」

「幸子さんの、炎で溶かしては?」

「それが、直ぐ凍っちゃうんです。こういう事は、久しぶりです。むかし、すっごく寒かったり暖かかったりした変な時期があったんだけど。」

「それって、火山の大噴火のあとくらいじゃなかった?天明の時期じゃなかった?」

「女王さまが、そのような事、おっしゃっていましたねえ。大飢饉が起こってるって。遠い外国で大噴火があったとかも。このあたりでも噴火があったし。」

「でもお池の底はあったかいんでしょう?」

「うん。ここは、まあそれなりにいい。ちょっと前にエアコンが壊れちゃって、困ったことがあったけど

も。でも、そっちの方が楽しいしなあ。」

「なんか、訓練するとか?」

「そうそう、そてはもうちょっと。だから二月になったら、すぐ行きま~す。じゃあね。」

「むむ、この静寂が破れる時がついに来たか。」


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