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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第四十一章

 ************   ************


『いざ旅立ちとおもへども、なごりもなかば、この世を楽しまんかな』


「なによ、アニーさんそのへったくそな、でこぼこ道で転んで水たまりに顔突っ込んだ様な『うた』は?」

 ヘレナが文字通り突っ込んだ。

『いえいえ、アニーも誕生して46億年ですよ。いろいろ考えるところもあるのです。』

「ふうん・・・まあねえ。わたくしなんかどうするのよ。この宇宙でいったい何十万個目の宇宙やら。」

『あなたは特別ですから。』

「だれも、わたくしの故郷がどこなのか、いっこうに教えてくれないもの。」

『神のみぞ知る、でしょう。』

「それじゃあ、全然、解決にならないのよね。」

『そりゃあまあ、あきらめた方が良かないですか?』

「いえいえ、まだまだ。時にアニーさん、各国の核ミサイルは?」

『現在「閉鎖諸島」に集めておりまして、ほぼ半数程度回収完了です。国連で廃止決議が出次第、残り半分を集めて、すぐに廃棄できる体制にします。』

「溜まりに溜まった、核のゴミも廃棄しなければ。」

『それは、じっくり計画しなくてはなりません。うっかり宇宙空間に放り出すと、後が怖いですからね。』

「ええわかった。どこか害のない異次元空間に、2~3万年は保管するようにしましょう。保管施設の場所はちょっと考えます。火星の時に見失った前例もある事だし。」

『まあ、ちゃんと捨てる算段までしたうえで、作ってほしいですよ。』

「そうだなあ。実際、原子力の技術というものは恐ろしいモノよ。使うことと捨てることと殺すことが、おなじレヴェルに一体化しかねないからね。地球の人間にはまだ扱うのは無理かな。きちんと区別できないからね。」

『はあ。そうですね。おっと、『緊急報告』です。核保有国に残っていた核ミサイルが、一斉に発射されました。』

「は・は・は?なにそれ。」

『全世界に向けて、核ミサイル飛行中。王国首都到着まで10分。日本首都15分。』

「無効化させて! 進路変更。海に廃棄!アブラシオさんも協力して!」

『無効化実行中。進路変更実行中。ほぼ完了できます。あ・・・しかし、5発が拒否。意味不明。ミュータントが介入しているらしい、コントロール不能。トウキョウ、グレート・マウントハッタン、首都タルレジャ、パート・リース、ボン・ドンに着弾します。』

「冗談じゃないわ。仕方がないな、わたくしが介入します。」

『残念、着弾‥と思ったけど、王国首都上空で爆発の瞬間に消失。他は無事消失。すごいですね、さすが、やりますね。あれ、ヘレナどうしましたか?』

「弘子さんの体に負荷がかかり過ぎた。仕方なかったのよ。抜け出す間が無かった。」

 弘子は、その場に倒れていた。

『あらら、大変。心停止。回復措置します・・・・・・・・・なんとか復活させました。脳にはダメージなし。多分ですが。』

「また、2~3日入院ね。」

『可哀そうです。』

「まあ、そういう運命よ。この子は。でも彼女の子どもは、もっと強くなるわ。それよりも、犯人は、誰?」

『目下、探索中。声明が発表されました。表示します。』


 空間スクリーンに、男の姿が浮かび上がった。

 古代地球の偉人たちの姿が、いくつも合体したような不思議な印象の男だ。

 ソクラテスかアリストテレスかプラトンかデカルトか、ニーチェか、孔子か聖徳太子か? というような・・・


『我が子、我が地球人たちよ。あわれな異星人の侵入は阻止されるであろう。私に従いなさい。そうすれば、この世に真の平和と友愛が訪れるであろう。すでに、この正義の戦いは開始された。私は、『地球そのもの』である。』


 ************   ************


「またまた、おかしな奴が現れたな。核ミサイルを撃ったやつはこいつかな? それはしかし、無茶苦茶な言い分だよな。」

 シモンズがテレビを眺めながら、いい加減にしろよなという表情でつぶやいた。

「たとえ地球が、一つの生命体であると考えるにしても、地球さん自身が『こんにちは、僕、地球です。』なんて言ってくるとは思えない。何者だろう? 自意識過剰なミュータントかな。まあ、そんなところだろうな。ヘレナとブリューリだけで十分なのに、まだ割り込むつもりかな。ミサイルを撃ったやつと、こいつは別物だろうか。」


 その時、シモンズは、まさにブリューリの居場所を割り出そうと頑張っていたのだ。

 ヘレナはこの国の温泉地が有力候補だと言う。

 シモンズは、各地の温泉の顧客リストをハッキングしていた。

 全国各地のテレビカメラの映像も。

 さらに超小型衛星を飛ばして、情報を集めていた。

 御自慢の量子コンピューターで、データを解析している。


 温泉巡りをしている人間は、それなりにいると考えられる。

 今回のポイントは、江府山温泉と、割賦温泉。

 そこに、ここ半月以内に滞在している同じ人物らしき人を探る。


 アニーは、どうやら上手く調べられなかったらしい。

 同じ名前を使っているとは限らない。

 ブリューリならば、毎回姿も違うかもしれない。

 支払いはどうやったのか?

 クレジットカードは足がつく。

 現金が一番安全だ。

 大金を持って歩くのは嫌だろうけれどな。

 しかし、ブリューリは荷物を持って歩くのか?

 温泉巡りならば、普通はそれなりの荷物も必要だろうけれど。


 先日江府山温泉にいたこの男、ビジネス用の手提げかばんひとつだけ。

 温泉巡りにしちゃあ、ちょっとずれてるよな。

 ううん、この男、今朝、割賦温泉を出たが、やはり同じ手提げかばんひとつだけ。

 ますます、なにやら、ずれを感じる。

 勘だけれど、人間の勘は、ばかにならないぞ。

 温泉近くから、割賦港にバスで向かった。

 そこから四国に、フェリーで渡ったな。

 さらに汽車に乗って、松之山に到着。

 松之山温泉郷に入ったぞ。

 ここは、結構有名な温泉旅館だ。


 あらら、顔が違うじゃないか。

 おかしい、見失ったのか?

 いやいや、カバンが同じだ。

 ”どじ”だなあ。


 これはもう、見つけたようなものだ。

 簡単な仕事だな。

 

 そこで、シモンズはヘレナに電話した。


 ************   ************


「またまた、おかしなのが現れたわね。」

 キャニアが『接続者』に向かって言った。

「何かご存知ですか?」

 しかし、『接続者』はあっさり答えた。

「いやあ、おいら、知らね。」

「公表されていませんが、大量に弾道ミサイルが世界の各地から発射されたようですが、一発も着弾しませんでした。タルレジャ王国で、空中で一瞬何かが光りながらすぐに消えたらしい、という報告が来ています。」

「ふうん。指導者からは何も通達がないしなあ。ま、問題なかったってことだよな。」

「そうですか。じゃあ、何か分かったら教えてくださいよ。隠さないでね、」

「あいよ。」

 キャニアは『社長室』から出た。

「どうでしたか?」

 アンジが尋ねてきた。

「おいら、知らね。だって。」

「ふうん。怪しいです。」

 アンジは、ここに来て以来、急速に能力が高まってきていた。

「あなた、周囲の人の能力を吸収していない?」

 キャニアは、アンジにそう問いかけた。

「よくわからないけど、いろんなものが見えてきます。」

 そのアンジが、少しうつろに答えて言った。

「ミサイルが飛んできます。いっぱい。おかしな人物が、背景にいるけど、その姿はまだ見えない。もうちょっとで見えそうなのに。」

「慌てなくていい。でも、何が見えたのかは教えて。女王じゃないの?」

「違う、と言っても、女王の姿なんか知りませんけどね。でも、そうじゃないと思う。男性です。」

「ふうん。どんな形?」

「どんなって、頭があって手があって胴があって足があって・・・・中身は真っ暗。」

「そう。まあ、引き続き気にしていてね。でも、あまり追求するとしんどいから、適当に。」

「了解。」

「あのね、あなたのご両親が、あなたの居場所を必死に探しているようなの。警察も動き始めている。心配なさるのは、むしろ当然だけど、お宅の場合はちょっと事情がややこしくなってるの。」

「どうせ、地域の不感応者狩りとかに、勝手に手を付けているんじゃないですか?」

「よく、分かるわね。」

「昔からそうです。いつも地域のリーダーでありたいのです。特に父はね。松村のご両親が王国に行ってしまって、いなくなって以来、一層力が入ってきたの。自分が頑張らねば、とか言って。」

「そのこと自体は、立派な事でしょう。あなたは気に入らなかったの?」

「なんか、うざいし。怪しいし。」

「ふうん。確かに、町内会の不感応者探しに、ご熱心なようです。あなたの街は、つまり第一王女様のご実家がある街だけど、人口が多いし、人の出入りも多いようだし、まあ気持ちはわかるかもしれないけど。」

「いいえ、わかりません。」

「操られているだけよ。火星人にね。無事でいる事は、何かの方法で知らせてあげたいけど。」

「いいです。」

 アンジはプイっといなくなってしまった。

「ふうん・・・」

 キャニアは複雑な心境になっていたのだ。

 『接続者』はこうした世事には、とんと疎いようだし、アンジの家族に連絡を取る事には、今の時点では反対だと言われていたのだが、それが全面的に正しいとは、彼女には、どうも思えなかった。



 その『接続者』は、沖縄のリーダーに連絡を取っていた。

「ああ、そうですか。こちらには非常に有能な女子をスカウトできました。まだ、決心は固まっていません。時間はかかりますよ。高校生だし。でも、保護する理由は十分にありです。地球人類の味方になってもらわないと、近い将来かえって、とても危険な存在になりかねないですから・・・ええ、誰がミサイルを撃ったのですか?・・・・・え? そんなことが・・・・・ふうん。・・・第一王女はどこまで掴んでいるのでしょうか?・・・・・そうですか・・・。」


  ************   ************




 






 

 




 








 





   **********   **********


「なんだか、やましんさん、お顔が良くないですよ。」

 幸子さんに、ずばりと、そう言われました。

 でも、悪気はないようです。

「はあ、じつは、ばっは先生の曲の猛練習をしなくちゃならなくって、この際、2月の半ばまでは、半分程度、お休みです。閃いたら書きますし、修正作業は、ぼつぼつ致しますけれども。」

「あらら、じゃあ幸子もお池に帰って、このお正月は、お饅頭とお酒ぱっくの猛練習をしなくっちゃ・・・。」


「え?それって、なんですか?」

「それはもう、『お饅頭嵐ぃー!』とか『お饅頭爆弾ー!』とか『お酒ぱっく砲ぅ!』とかの訓練です。」

「はああ・・・その標的は・・・」

「もちろん、やましんさんですよお。2月半ばになったら、その成果をお見せします。あ、でも、いつでも呼んで下さいね!」

「はあ・・・・・もうちょと休もうかなあ。」



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