表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第四章 


 第一王女は、月の裏側に来ていた。

 ここには、二億五千万年前から、リリカ(複写)の研究施設があった。

 その後、改修したり、地下の部分を大拡張したりして、今では地球上でもめったに見ないほどの、大研究施設になってしまった。

 それは、まあいいとして、久しぶりに、リリカが二人そろっていた。

「いらっしゃませ。」

 二人が声をそろえて出迎えた。

「あなたがた、長い年月、別々に過ごして居たにしては、あいかわらずそっくりね。」

 ヘレナが感嘆したように言った。

「今回は、助けていただいてしまったわ。ありがとうございます。」

「いいえ、女王様。私たちは同一人物で、年を取りませんからね、同じであたりまえなのです。」

「はあ、なるほど。」

「どうぞ、こちらにおいでください。」

 二人は、研究マスター室にヘレナを案内していった。


「まあ、ここが研究所の中心です。すべて、ここで管理操作できます。」

「すごいわね。これなら、マツムラ・コーポレーションの中央研究室にも劣らないわねえ。」

「まあ、沢山予算を割いていただいておりますので、ありがたいことでございます。」

「まあね。で、成果の方はいかが?」

 リリカ(複写)が答えた。

「女王様からご依頼がある沢山の研究は、自分で言うのもなんですが、十分上手くいっているかと思います。まあ、兵器関係は、あまり気が進まないものの、仕方がないですから・・・」

「まあ、ご挨拶ね。でも、ここが妹二人に見つかると、やっかいなんだよなあ。ダレルが話してるんじゃないかと思ったりもする。」

「そうですね。でも、彼は打算的で、自己中心的ですから、あまり女王様に打撃を加えることは避けるとは思いますが。」

「いえいえ、どうも、そうでもなさそうよね。あの、最近の妹二人の画像が出るかしら。」

「はい、昨日のものならば、すぐに。」

「ええ、それでいい。そう・・・そうね。この友子の目、明らかに正常じゃないもの。こんな目じゃなかったわ。もっと澄んだ美しい目だったのに。わたくしが、こんなのにしてしまいましたのね。血走ってるわよね。まるで、血に飢えた獣みたい。自分の意思があまり感じられない。」

「まあ、何ともお答えしにくいですが。ダレルに指示したのですか?」

「こういう風にしなさいとは言ってないわ。でも、支配者にふさわしい風格には、してほしいとは、言いました。確かに。」

「ダレルさんは、女王様に仕返しをしようとしています。」

 リリカ(複写)が指摘した。

「いまさら?」

「はい。もちろん想像ですよ。でも、恐らくそうした意図が、見え隠れします。ブリューリを解放させたのも、おそらくダレルさんでしょう。ただ、方法がわからない。どうしても、そこはまだ解明できません。申し訳ないのですが。」

「ええ、まあ、それは気にはなる。・・・・そうそう、これ、これよ。ほら、道子の・・・ルイーザの右腕の・・・これ」

「ああ、ブレスレットと言うか、もう「腕輪」そのものと言うか。」

 リリカ(本体)が言った。

「そう、古代火星人が身に着けていたような、派手なものよね。材質は良いものらしい。宝石も本物のようだわ。とても高価なモノよね。でもね、これルイーザの趣味じゃないわ。あの子、こう言う派手なのは嫌いだから。だいたい服装が派手よね。露出が多すぎ。これって、ダレルの趣味なのかな?」

「まあ、妻なしでずっと来ましたからねえ。相当、願望が溜まってるんじゃないですか?」

「ううん。危ないなあ。でも、このブレスレット、いろんな波長とかで見て御覧なさい。おかしくない?」

「そうですね。ううん・・・確かに特に内側に向かって、何かの力が働いていますね。あああ、これ、内側で、体に溶け込んでると言うか。まるで肉体と一体化してますね。血液も内部に入り込んでいます。これは、普通では外れませんね。もう体の一部ですもの。無理に外そうとしたら、相当な苦痛が来るでしょう。」

「可哀そうに。いずれ普通の物体ではないわけね。」

「そうです。生きている腕輪ですね。誰かがコントロールしてるんでしょう。意識とか、考えとかも支配しているかもしれません。」

「アニーさんは、それを知ってて、伝えてこなかったのか? アニーさん。聞いてる?」

「・・・・・・・・・・」

「返事がないですね。」

「ここでは、いいのよ。アニーさん。答えなさい。」

「・・・・・・・・・・・」

「まあ、無視してるわ。こら、アニーさん、答えないと機能、切るわよ。いい?」

「現在、休止中。」

「だれが、休止しろなんて言った?」

「回答不能・・・・・・・・・・」

「くそ、てメぇ、わいをなめとんか!」

「あ、あ、あ、あ、・・・・女王様、切れないでください。」

 リリカ(本体)が慌てて言った。

「まったく。この犯人は、ルイーザではないと見たわ。」

「では、どなたが?」

「ふうん・・・・・。わからないことだらけか。ダレルは今、どこにいるの?」

「それが、先ほどまでは、火星の地下に居ましたが、今しがた、どこかに出かけたようです。」

 複写が答えた。

「ふうん、逃げたか。」

「じゃあ、これも、ダレルさんが?」

「まあ、そう見るのが合理的でしょうね。」

「アニーさんを、ダレルが操れるのですか?」

「まあ、通常ならば絶対にできない。」

「通常ではない、とおっしゃるのですね。」

「はい。どんな手を使っているのか、まだ分からないけれどね。大方、わたくしにも、あのブレスレットが用意されているのでしょうね。」

「あの、地球の情報ですが、第二王女様が東京に向かいましたね。」

 リリカ(複写)が報告した。

「ふうん。いわんこっちゃない。でも、こっちの動きは、アニーさんから筒抜けか。この建物、しっかり出来てる?」

「え?つまり・・・」

「攻撃が来るかもよ。」

「まあ、女王様。正解です。ミサイルが来てます。」

「あの子、わたくしたちを、一気に抹殺するお積りかしらね。まあ、狙いは施設なんだろうけど。バリヤーを独自に張れるかしら?」

「できます。周囲保護完了しました。ミサイルが来ます。通常弾ですが、強力です。うわわ!」

 激しい衝撃波が施設の周囲を覆いつくした。

「なんとか、無事ですが、あまり撃たれると、持たないかもしれません。もう一発来ます!」

「いいえ、認めない。爆破!」

 ミサイルは、月から大分離れたところで自爆した。

「女王様が・・・」

「あまりにも、バカにしてくれるじゃない。どこから発射されたのかな? 見つけた。攻撃衛星がいるわ。破壊する。・・・・おしまい。人は乗ってないわ。ダレルはどこかな。いたいた。こんなところに、潜んでいる。小惑星帯の中ね。お仕置きよ。そら・・・少しそこで、悩みなさい。」



  ************   ************


 ダレルの宇宙船は、両側から襲ってきた小惑星に挟まれて、動けなくなっていた。

「これは。ダメです。相当な圧力がかかってますね。徐々に力が強くなってゆきます。このままだと、2時間くらいでぺちゃんこですが。」

 ソーが告げた。

「くそ、誤解も甚だしい。いい迷惑だ。」

「そう言いますか?でも、腕輪は、あなたですからね。」

「まあね。しかし、あれも、もとはと言えば、女王のご希望から生じたものだ。まあ、多少拡大解釈はしたけども。」

「そう言いましょう。これは脱出できません。殺されますよ。いくら不死でも、宇宙空間では、おそらく死にます。肉体が活動できません。」

「取引しよう、通信開いてください。」

「はい。どうぞ・・・」



「こちらダレル。女王様お聞きですか?」

『聞いてるわ。』

「お怒りですか?」

『かんかんですわ。許さない。』

「誤解です。ヘレナ、半分以上は誤解です。ぼくは、ミサイルなんか発射していないですよ。」

『うそおっしゃい。他に誰がいるの?』

「前にもあったでしょう。火星と王国の対戦中に。』

「む。ブリューリか?」

『それがたぶん正解、だと思いますが。リリカ二人を殺して、あなたの肉体を巻き添えにし・・でも最終的には、分かりませんがね。あなたを滅ぼすことは不可能だし、その気はない。あなたが欲しいんだから。』

『じゃあ聞きますが、誰がブリューリを解放なんかしたの?』

「知りませんよ。」

『む。誰が、道子に腕輪なんかつけさせたの?』

「それは、ぼくですよ。でも、それは、あなたの為にしたことです。いいですか、第三王女の意識をコントロールして、皇帝にふさわしくすることは、あなたから依頼された。ついでに、サービスとして、第二王女の心も、念のために奪ったのです。あくまでも、あなたのためですよ。今後の地球支配の布石です。あなたが、陰で操りやすいようにね。」

『うそおっしゃい。わたくし用のも用意してたんでしょう?道子に持たせて、東京に行かせた。』

「ぼくは、そんなこと指示していないです。」

『いいわ、検疫で、無理でも身体検査させるから。伝染病の疑いとかで。』

「それは・・・まあ、無駄です。」

『じゃあ、そのまま潰れなさい。ご苦労様でした・・・』

「あ、あ、あ、ちょっと待ってください。ぼくの協力は必要ですよ。いろいろとね。」

『いい。代わりのもっと優秀な人、見つけてあるから。』


・・・・・『ああああ、女王様、ダレルさんは息子さんですよ。あの・・・。』

      リリカ(本体)が横から突っ込んで来ている。

       『証拠も必要ですよ。殺したら、消えますよ・・・・』


 少し間が開いた。


『ふうん。いいわ、そこには、ソーさんもいるのね?』

「はい、女王様。」

 ソーが答えた。

『ダレルを、逮捕しなさい。女王の権限で命令します。』

「え?あの?え?」

『逮捕しなさい。縄かなんかあるでしょう。ぐるぐる巻きにして、ミノムシさんみたいにしなさい。見てるからね。やらなければ、潰す。ぐっちゃっとね。わたくしを、人間と同じだなんて、まさか思ってないわよねえ?』

「あの、いや・・・・」

 ダレルが肯いている。

 機体がミシミシと悲鳴を上げた。

 ソーは、強力な鋼の縄を見つけてきた。

「いや、それでは、死ぬかもしれん。」

 ソーは、女王にその縄を見せた。

 女王は喜んだ。

『いいわ。それなら。思いっきり縛り上げなさい。で、月に連れておいで。しばらくは、小惑星も一緒じゃ。ほほほほほ!』

「お覚悟!」

「くそ!」

 ダレルの宇宙船は、小惑星に挟まれたまま、月に向かって勝手に動き出した。



 ************   ************




 


























 































































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ