表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第三十九章

 **********     ********** 


 第一王女は、アブラシオに移動した。


「どう、アブラシオさん、パイロットさんは。」

『はい。やはり、記憶はありますが、「なぜだかそうすべきだと思った。」と言っております。アブラシオが見る限りは、通常の感応者であり、ミュータントでもありません。』

「よしよし、わたくしが見て差し上げましょう。」


 第一王女の中身、つまり、女王ヘレナの意思がパイロットの意思に入り込んでいった。

『ふうん。確かに操られた形跡はありますね。しかし、これはわたくしの知るミュータントではないようだな。ずっと隠れて来ていた新規参入者かな。しかし、やり方が巧妙だから、素人じゃない。つまりこの度の副作用で現れたのではないですね。結構、大物と見た。誰だろうな?まあ、アブラシオさん、情報はもらった。この方、もう帰して差し上げないさい。飛行機もね。それと、データをアニーとリリカさんに提供してください。あ、なんだろうこれは!』

『了解。ああ!』

『なんか起こった?』


 なにがしかの、軽い振動が伝わってきた。

 艦内のどこかで爆発があったに違いない。

 アブラシオが揺れるということは、並の爆発ではない。


『どうしたの? 何が爆発したのかな?』

『確認しました。戦闘機が爆破しました。いえ、戦闘機に搭載されていた核ミサイルが爆発した。』

『まあ、核なんか積んで、首都上を飛んでいたわけ?』

『そのようです。熱核爆弾です。東京全体を破壊できる規模ですね。エネルギーは吸収しました。ごちそうさまです・・・が、ちょっと周囲の物質化した部分が破損しました。放射性物質が一部に拡散。処理中です。問題はありません、しかし抜かっておりました。申し訳ありません。』

『いま、他に、お客様はいないのね?』

『はい。その方だけです。』

『良かったねええ。それよりも、どうやって爆破させたのかが問題だ。アブラシオさんの内部にまで影響を与えられたとなると、大問題だもんね。』

『どうやったのですか?』

『この人を中継に使ったわね。抜かったのは、わたくしの方ですね。せっかく内部に入っていたのに、封鎖していなかったわ。でも、おかげさまで、出所が掴めてきたでしょう。これ、わかるかな?』

『ええ、これはウィーン・タウンです。アニーさんと、捜索します。』

『ええ。よろしくね。』

『帰していいのですか?その人。』

『まあ、本人はさっぱりわかってないから、いいわ。監視はして。』

『了解。あの、せっかくですから、お茶くらい飲んでゆきませんか?』

『はあ、ありがとう。いただくわ。』

『ババヌッキ茶でいいですか。それともお酒ですか?』

『ああ、いえ、お抹茶が良いわね。』

『まあ、珍しいですね。了解しました。禁酒ですか?』

『ああ、実はルイーザに叱られて。お酒臭いって。正晴様に申し訳が立たないと。それを言われると弱いんだなあ。』

『もうすぐ、「婚約の儀」ですね。』

『そうなのよ。ただし、ダレルちゃんが、いったい何企んでるのかが、まだ分からないのよね。』


 **********   **********


 正晴は、母から居間に呼び出された。

 部屋数は三つ。

 六畳、六畳、四畳半。

 それに小さな台所と、バス・トイレ。

 豪華ではないが、この首都の中で家を持っているということだけでも、それなりに大したものだ。

 姉は、無理に無理を押して、アメリカ国に留学している。

 まあ、王国の援助を受けられたおかげである。

 両親は、非常に真面目なタルレジャ教徒であり、かつて北島に住んでいたのだが、姉が出来た時に、教会から東京に移住を勧められたと、正晴は聞いている。

 この家も、どうやらタルレジャ教会から与えられたらしいが、詳しい事は知らなかった。


 先日、あの巨大宇宙船に連れ込まれたことから、彼は自分に与えられた、見えない使命のようなものを、感じるようにはなっていた。


 全体、彼は、小さな子供の頃から、『あなたは、わたくしのお婿さんになるんだからね。』と、弘子から言い渡されていた。

 それが、いったい何を意味するのか、などという事は、それまで真面目に考えてもいなかったけれど。

 『婚約の儀』が近づいて来るに従って、不思議な緊張感が高まってきていたことも事実なのだ。


 母は正座して言った。

「いい、正晴。出発の日の前に、もう一回詳しい事は話します。ただ、ここで儀礼に従って、あなたに告げることがあります。」

「なんだよ、急にかしこまってさ。」

「あなたは、第一王女様、つまり『第一の巫女様』の夫になるお方です。それは、全タルレジャ教徒の規範となる人の夫となるということであり、あなた自身が規範でなければならず、それはもう、恐ろしいほどに重要なお立場になられます。しかも、第一王女様は、このままならば、現国王様の跡を継いで、女王様になられるはずです。あなたは、女王の夫となるわけです。そこで、本日今から、私は、あなたをそのように扱います。」

「そのように扱う、って、なんだよ。」

「あなた様を、『尊士様』として扱うのです。あなたは、母を宗教上、信者の一人として、公式に扱うことが求められます。それなりの態度、言葉使いが求められるのです。ここに、その『尊士儀礼書』を差し上げますから、よく読んで、これに沿った行動をしてください。母は、あなたの指導役となるので、足りないところは厳しく指摘いたします。」

「そんな、訳の分からないことを・・・」

「お黙りなさい。ご自分の立場を、よくわきまえてください。いいですね。まずは、あさっての晩までに、全てを読み理解し、規範に沿って行動しなさい。以上です、『尊士様』」

「あの・・・・はい。ただ・・・」


 宇宙船で見聞きした事は、痛いほどに分かっていた。

 父が亡くなって以来、母がそれなりに苦労してきたことは間違いが無い。

 学歴も経験もないのに、マツムラ・コーポレーションで仕事ができるのは、第一王女のおかげ以外の何物でもないけれども。

「あの、なぜ、僕が王女様の夫なの・・・ですか?」

 それは、当然の疑問だった。

 しかし、母はこう答えた。

「そう、決められたからです。」

「誰に?」

「教母様にです。」

「それだけ?」

「それで、不足ですか?」

「だって、そんなこと、今の社会ではあり得ないよ。」

「王国では、北島では、当然あり得るのです。」

「でも・・・」

「デモは禁止。終わります。」

「はあ・・・・」

 母の態度は、夕食までとは大違いだった。


『そんなの、ありか? あとで二人に電話しよう。』

 正晴は、そう考えた。


 同じころ、武も、同じことを両親から言い渡されていたが、こちらは当然予想されたこととして、口答えは一切しなかった。


「分かりました。」

 同じ書物を渡されて、このささやかな儀式は、すぐに終わったのである。


 ************   ************



「首相、江府山で、異常事態が起こっています。」

 本物の方の秘書が飛び込んできて、そう言ったのである。

「怪物でも、出たか?」

「え?ご存じだったとか・・・・」

「ふうっむ。第一王女から、警告はされていたんだ。」

「おお、なるほど。いや、住民が怪物に襲われたという報告が、いまのところ五件あります。」

 首相は、机の上で手を組んだ。

「ふん。すぐに、マツムラ総合病院のアムル医師という方に、報告して下さい。まあ、そう言われたんだがね。それと、緊急閣議を開きます。大至急、閣僚をかき集めて。まだ、みんな近くにいるさ。」

「はい。了解、わかりました。」



 ************   ************














 

 






 

 

 ************     ************



























































































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ