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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第三十七章


「ところで、首相様?」

「何でしょうか?」

「さきほど、火星人になぜ抵抗しなければならないのか、国民によく説明するようにおっしゃっていましたが、それはなぜなのですか?」

「いわゆる自称『火星人』たちが、侵略行為やテロ行為を働いているからです。そこに尽きます。断固として屈する事はできません。」

「ふうん・・・じゃあ、もしその自称火星人が『同盟を組みたい』とあなたのお国に言って来ていたら、どうなってますか?」

「それは、反発する国が多いでしょうから、その手には乗りません。」

「ふうん。もし南北アメリカ共和国と先に同盟していたら?」

「我が国をさておいて、そのようなことは、起こりえなかったでしょう。」

「ふうん。じゃあ国連に同盟を呼び掛けて来ていたら?」

「それは、内容によっては多少話が違ったかもしれないが、先に脅迫して、武力を使用した以上、後戻りは効かない。」

「本当に?でも、実際はそうなっていますよね?」

「それは、もう、まやかしなのです。」

「ふうん。あなたはどうなったらいいと思いますか?本当に『火星人』と戦争できますか?あなたと、わたくしのお父様とで。」

「手の内を明かすことはできません。」

「なるほど。空っぽの手でもそうでしょうか?」

「戦略というものは、常にあるものです。侵略者に屈することは出来ない。」

「多くの国の方が、これまでもそう言ってきたのでしょうけれどね。平和に帰依して解決するべきではないですか?多くの地球人は、その道を選んだのですよ。」

「無理やり、そうさせられたのですよ。『自称火星人』には、真の友好平和なんて言う、その気はないでしょう。地球を征服し、支配する事しか考えていない。屈辱でしかないのです。みな、正気ではない。」

「ふうん。なるほど。あなたとお父様だけが、正気な訳か・・・」

「違いますか?大体、誰がどうやって人の心を操っているのですかな?」

「偉大な、火星の女王様が、行ったのですわ。そうでもしなければ、地球人は憎しみと絶望で遠からず自滅したでしょうからね。」

「あなたは、女王の言いなりですか?」

「そうですね。基本的には。だって、それが組織でしょう? ただし、物事には幅というものがあります。電線だって糸だって、近寄ってみたり、拡大したりすれば、幅がある。その幅は、結構広いものです。小さな小さなものからすれば、その幅だって、無限に近いのです。わたくしは、幸いものすごく小さいのです。皇帝や総督は、大きくてそうはゆかないのです。だから、わたくしには、物事を修正する幅が与えられているのです。語弊はありますよ。皇帝陛下や総督閣下に直に聞かれたらさすがにちょっと、まずいでしょうけれどもね。また、あなたにとっては、これはちょっとしたチャンスなのですよ。」

「チャンス?ぼくは、裏切り者ではない。」

「そうですか。じゃあ、これを・・・・」

 第一王女の右手の人差し指の先に、小さな箱が乗っかっていた。

「これが、いわゆる『最終爆弾』です。まあ、本来爆弾というものとは違いますが。このサイズだと、タルレジャ王国全体を飲み込んでしまうくらいの能力しかありません。しかし・・・・」


 見た目は華奢な彼女の指の上の箱が、家庭用高級オルゴールくらいの大きさになった。

「このくらいになると、もう地球の『核』以外の、すべてを飲み込む力があります。で、ほら。」

 箱は、デスクトップパソコンの箱くらいになった。しかし、いまでも第一王女の指の上にある。

「このくらいになると、もう地球すべてを飲み込む力が出て来ます。さらに大きくすれば、太陽でさえ飲み込めるようになります、ちょっと指には乗りませんが、やがては太陽系内の物質全てを飲み込むこともできるようになります。」

「ばかな・・・」

「やって見ましょうか?」

「はあ?」

「ふふふ。ただし、これを活性化させるにはこの『キー』が必要です。これがなければただの箱です。」

 第一王女の、箱を支えている右手の、こんどは小指の先に、小さな古典的な『キー』が現れた。

 それから、箱はすーっと、元のように小さくなった。

「これを、あなたにお預けいたしましょう。」

「え?」

「ただし、むやみに人に見せたり、下手な研究者に渡したりしてはいけません。よほど、あなたが信頼のおける人でなければね。特に火星のダレルさんには十分気を付けてください。こういうものが大好きですから。もし、うっかり作動させると、やっかいですよ。念のため。あなたの大切なお国も、国民もいなくなる。」

「むむむ。」

「さあ、お食事がお済になりましたら、お家にお返しいたしましょう。ほら、王室特製のお土産袋でございます。ちょっと本とか、重たいですが。美しいでしょう?」

「確かに、これは奇麗だ。」

「そう、あの風景ですの。」

 第一王女は、壁に掛かっていた絵を指さした。

「ああ、同じですな。」

「はい、これは『アヤ岬』から見た、日の入りを描いたものです。あちらが本物で、約2千年前に描かれたものです。この袋は特殊な紙で出来ておりまして、スチールなどよりも、軽くてよほど丈夫です。底が抜けたりは致しません。まあ、お帰りになってから、今後の行動はよくお考え下さいな。そうそう、もしご希望ならば、お父様との会談を用意いたしましょう。ただしこのように秘密で。」

「ほう、それは良いですな。是非頼みます。いや、御馳走になりました。興味深いお話が聞けて、良かったです。」

「はい。じゃあ最後にこれをご覧ください。教頭先生の様子です。」

 空間スクリーンに、病室のような場所が映った。

 大きなカバーに覆われたドームの中に、何かが横たわっている。

 石像のような、ミイラのような、解けてまた固まったアイスクリームのような。

 しかし、もう人間の形ではない。

「マツムラ総合病院の、特殊な隔離治療システムです。この、石のように固まったもの。これが教頭先生です。」

「これが、人間?」

「そうです。ブリューリ細胞を注入されて、ブリューリ人間になり、怪物に変貌までしたあとに、抗ブリューリ剤を浴びたのです。そうすると、こうなります。昔はこれでお終いだったのですが、今は人間に戻すことが比較的簡単に出来るようになりました。ただし、再生時にきつい禁断症状が出ます。本人は相当苦痛を味わう事になるのです。そこで、今回その苦痛をかなり除去する方法を開発しました。病院で一定の処置が必要ですが。じゃあ、薬剤を注入します。」

 第一王女がちょっと合図を入れると、なぜかそれが相手に伝わったらしく、医師たちは肯いて行動を始めた。

「皮膚も硬化していますので、ちょと強力な注射が必要です。」

 堅い機械の腕が伸びて、元教頭先生の体に注射を行った。

「これで、体が戻ってゆきます。ほら、もう再生が始まったでしょう。」

 確かに、カチカチになっていた皮膚が、少しずつ緩んできている。

「まあ、時間はかかります。あなたにお見せするのにちょっと待ってもらっていたので、教頭先生には申し訳なかったのですが。ほっとくと、周囲の人間をどんどん仲間にしてゆきます。現在確認を続けていて、三人ばかりブリューリ細胞を植え付けられた人が見つかっています。もっと増えるかもしれないです。事件が起こる可能も十分あります。教頭先生は昨日出張で江府山方面に出てらっしゃったことがわかりましてね。そこでかなり活動した形跡がありますから。いかがですか。最後までご覧になりますか?」

「いや、いい。帰る。」

「はい。じゃあ、あちらのドアからお帰り下さい。ええ、護衛を5人つけましょう。」

 例の、黒いスーツの兵士たちが、ぱっと現れた。

「ああ、なんですか、これは?」

「あなたの護衛ですわ。コピー人間さんたちです。一週間お付けいたしましょう。あとは勝手に帰ってきます。では、あちらのドアからどうぞ。さようなら。首相様。またお会いしましょう。」


 杖出首相は、指定されたドアから退出していった。


 出て見れば、そこは、もう首相官邸の執務室だった。


 ***********   **********


「いやあ、首相、どこに行かれてましたか?」

 絵江府大臣が大幅に驚きながら言った。

「いや、タルレジャ王国の第一王女から緊急に会談したいと言われてね。」

「第一王女?それは・・・微妙な。まあ、しかし無事でよかった。あなたに首相を続けていただかなくては、どうにもなりませんからな。」

「え? それ、ほんと?」

「ほんとにホントですよ。大臣全員、安堵しております。」

 実際に待ちかねていたように、各大臣が集合してきた。

 王国で見た映像には姿が無かった、来栖労働大臣、手宇部安全大臣、岳蘇井素部法令大臣、久井地警察長官も来ている。

「まあ、よかった。皇帝陛下に何と申し上げるべきか、悩んでいたのですから。」

「ああ、そう。ふうん・・・・・」

 首相は考えていた。

『これは、思っていたよりも、ものすごい力が絡んできているな。どう対応するかな。実際タルレジャ国王と、よく相談する必要がありそうですな。』


 ************   ************

 

「さてと、このまま帰るのももったいない。お父様にお目にかかりたいけど、正式に申し込んでも無駄でしょうねぇ。このさい忍び込むのが一番ですが、あそこは、自分で作っておいて、こう言うのもなんですけれど、監視は万全だしな。アニーさんに頼むかな。ね、あにーさあん!」

『はいはい、なんですか、ヘレナさん。』

「お父様にお目にかかりたいの、何とかしなさい。」

「ぶ、だから、あの時、少し手抜きして作った方が良いと言ったのですよ。」

「すみません。」

「まあ、いいでしょう。ではニセ映像と音声を提供いたしますゆえ、お入りください。」

「わあ、ありがとう。でも、お父様とお話するなんて、どうしたらいいのかな?」

『は?ちゃんと人間語でお話しすればよいのです。』

「そうね。ははは、・・・いやあ、なんだか緊張するなあ。」

「おかしな慣習を作るからです。」

「すみません。」


 ************   ************



 第一王女は、中央監房に忍び込んでいた。

 監房とはいっても、事実上豪華な御殿牢である。


 父王は、静かに読書をしていた。


 そこに、第一王女の姿が現れた。


 父王は、立ち上がった。

 手に持っていた分厚い本が床に転がり落ちた。

 彼は、眼鏡をはずした。



 第一王女は、ごく自然に父の腕の中に飛び込んだのだった。

 実際このような事は、父が王に即位して以来、初めての出来事だった。


 アヤ姫は、あの時、このようにした後、アヤ岬から身を投げたのだ。


 あのとき、女王へレナは、アヤ姫の命を助けなかった。


 その魂は、『池の女神』として封じたのだが。


 ***************     ***************












































 ************   ************



「うわあ。アヤ姫様が登場しましたよお。こうなったら、幸子の登場まであと一歩ですね。やましんさん。」

「え?ああ、そう、あと一歩ね。ははは。でも、波は一度寄せては返すものですからね。ははは。」

「む、幸子を怒らせると、どうなるか、知ってますよね?」

「え! ああ、いえいえ、怒らせたりいたしません。はい。」

「じゃあ、次回、幸子を出してください。」

「ああ、そう・・ですね。検討しましょう。ははは。」

「むむむ、お饅頭嵐い~!!」

「うわー!!」

 やましんは、お饅頭の嵐に襲われたのです。

「幸子さあん、助けてえ!」

「出すなら止めます。」

「わかった。何とかします。はい!!」

「うああ、よかたああ!」


 嵐は収まり、ぼくの口の中は、お饅頭でいっぱいでした。おいしいなあ。あ、血糖値が上がる!



 ***************   ***************
























 






























 


























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