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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第三十六章


「彼女は、アンドロイドですの。ムヤマさんです。年齢は秘密。でも、首相様のおじいさまよりもだいぶん年上ですわ。」

「もう、王女様、意地悪です。」

「あらら、ごめんなさい じゃあ、お食事よろしくね。」

「はい。本日はミドル・オールド・タルレジャ料理のフルコースでございます。このお料理の献立は、約3000年前に作られたものでございます。まず、食前酒です。ババヌッキ酒でございます。どうぞ。」

「ババヌッキは、本来創業者のお名前なんですが、いつのまにか、様々な飲料の一般名称になりました。ババヌッキさんは2憶五千万年前の金星の実業家です。現在は土星の衛星のひとつで工場が稼働しております。主に火星の地下都市や太陽系内に輸出されていますが、地球ではめったにお目にかかれません。地球人は中世期の初めごろまでは、まだ異星人にとっても、お付き合いしやすかったのですが、大航海時代以降になってからは、却って接触しにくくなりました。」

「異星人というのは、だれ?」

「大まかに言って、火星人と金星人の生き残りです。太陽系内の惑星や衛星に移住して、独自の発展をしてきましたが、女王様のご意向もあって地球人には接触しないことが原則とされてきました。昔は、異邦人というものが入り込みやすかったのですが、この頃は国境管理が厳しいし、通信技術が進み、地球が狭くなりましたからね、異邦人も幽霊も魔女も、世の中に出にくくなりました。けれども、ようやく地球人類も太陽系の端まで行けるようになりましたし、まあ、良いころ合いではあったのですわ。」

「今回の地球侵略は、やはり、あなた方が仕組んだわけか。」

「いえいえ、仕組んだのはあくまで火星人ですの。わたくしたちは、その子孫という事で、協力を求められたわけですが、でもご存知のように抵抗いたしました。だって、いまさら火星人の仲間だなんて言われたって困っちゃうでしょう。しかし、火星の女王様のお力は絶大です。はっきり言って、抵抗は、概ね、無意味です。ただし、同化されるわけではありませんよ。まあ、そう言う事も、可能ですけどね。でも、地球人は、あくまで地球人ですよ。ただ、ここは、少し妥協して協力の道筋を取る方が良いのではないかと。やはり、あなただって、奴隷的な扱いは御免でしょう? 『感応者』は、どうしても従属意識が先に立ってしまって、いつの間にか奴隷的な意識に陥りやすいのです。あなたのような『不感応者』の指導者が、実は必要なのです。」

「君は、結局火星人の味方なんだろう?」

「まあ、単なる味方なら、あなたの肩を持ったりいたしませんわ。もっと長期的な視点をお持ちください。太陽系の人類が、やがてこの太陽系を超えて、その外側に進出するための第一歩なのです。火星と金星の文明は、ブリューリの介入もあって、一旦滅びました。しかし、その力は、いまだ消えてはいないのです。この先、この三者は共同して宇宙の謎の解明に挑むのです。それが、女王様の意図です。もちろん、それは始まりにすぎません。間もなく、異空間に消えた金星人類が戻って来るでしょう。また、わが銀河系の外からやって来る使者が、再び現れます。また、最も近い恒星系の住人と女王様は、長いお付き合いがあります。この、アルファ・ケンタウリの住民と太陽系の人類はこの先協力関係となるのですわ。そうして、宇宙の果てに向かって進んでゆきます。時間はかかります。でも、あなたはその元祖のおひとりになるわけです。」

「元祖でも、本家でも、いいけど、あまりに現実離れしていてお話にならないですよ。」

 料理が運ばれてきた。

「前菜です。ダルレジャ王国の『アヤ湖』でしか生息していない、不思議なお魚『アヤ湖アユ』の酢漬けです。日本の方には大好評の一品です。ただし、捕獲が制限されていますので、珍品です。」

「うむ。たしかに、アユみたいな感じだ。」

「どうぞ。まあ、首相様、これは、いわば、一番外側の巨大な理想です。現実には巨大な理想も必要です。もはや地球上の国家、などという枠だけで考える時代は終わるのです。もちろん、様々な細かい課題は山積みですわ。でも核の廃絶は今月中には国連で可決します。あなたは、まだ賛成していないし、お父様は反対していますが、幸いあなた方には拒否権などはない。また癌を始め、多くの感染症や伝染病の克服も、もう間近ですわ。火星や金星で培われていた技術を一挙に投入いたします。東京とタルレジャで今回開設いたしました新しい病院では、すでに多くの癌が治療可能です。アルツハイマーなども、大幅に治療できます。難病に指定される多くの病気も、治療が可能になります。ただし、この施設の整備には、まだ多額の費用が必要なのですが。」

「その施設は誰が作ってるの?」

「まあ、今のところ、マツムラ・コーポレーション以外には作れません。」

「あなたのご実家の会社だ。」

「そうですわ。でも、技術は広がる。次第にコストは下がって来る。帝国のバックアップも始まるでしょう。やがては世界中で簡単に利用できるようになります。軍事的な費用は大幅に縮小されますから、そこからも補てんできるでしょう。」

「バラ色の計画には棘が多いものだ。」

「そう、人類はお互いにそう言って、足を引っ張ってばかりいましたからね。」

「だから、進歩したのですよ。」

「そう、これからもっと、進歩しますの。戦争で人が傷つく時代はお終いです。あらゆる選択肢の中から、戦争は消えるでしょう。」

「火星人とは、誰が闘うの?」

「はあ、首相様は、どうしても、そこから抜け出せないのですねぇ。」

「これは、夢物語じゃアないんですよ。現実の危機です。金星人も現れるって、本当ですか。」

「本当だったら、どうなさいますか?」

「敵対的な勢力ならば、闘わなければならないでしょう。」

「宇宙人は、みんな敵?」

「宇宙人なんて、いないですよ。あなた方が作っているでっち上げですよ。」

「はあ・・・・・・。まあ、ますます、お食事がまずくなりそう。」


「あの、タルレジャ特産の『大ハムラキノコ』のステーキでございます。日本の松茸にあたるものです。」「首相様、これは元気が出ますよ。高級食材です。」

「そりゃあ、どうも。これは、おいしそうだ。」

「はい。首相様。ポーカー大統領も、協力を約束してくださいました。核廃絶にも同意されました。核保有国のすべてが廃絶に同意したのです。これは、現実ですわ。」

「魔法を使ったのでしょうな。地球人を支配しようとしている。」

「じゃあ、火星人を認めたのでしょう?」

「いやいやあ、ニセ火星人でしょう。各国の独立を阻害してはなりません。」

「阻害しません。あくまで独立自体はそのままです。」

「どんな方法を使ったのか分からないが、人類を操るなどということは、認められない。」

「だから、あなたを首相様に留めたいと申しておりますの。」

「でっち上げに協力しろと?まさか、冗談じゃない。」

「む! じゃあ、このまま、さようならですわ。」

 第一王女が、手にしていた食事用のナイフを、テーブルにぐさっと、(ほぼ全部)突き立てた。

「おおお・・・・こ、こわ!」


「あのあの・・・・ガマダンプラールのジャヤコガニュアン風ステーキの焼き方でございますが。」

「ああ、わたくしは、良く焼きで。」

「ぼくは、ミディアムで。」

「ああ、はい。・・・あの、お二人は、ちょっと相性が良くなさそうですわね。ふふふ・・・」


「あらら、言われちゃった。あの方にはですね、ちょっとした超能力がありますの。」

「チョウノウリョク?」

「そうですの。」

「どんな?」

「ほら。」

 テーブルの上を、見たこともない生き物がいっぱいちょろちょろと、横切った。

「わわっわわ!」

「ディクトドンの赤ちゃんですわ。あの人、昔の生き物を、ちょっとだけ連れて来られるのです。マンモスだったこともありますわ。」

「マママ。。。。。ンモス?」

「そう、建物が壊れちゃいました。その時は。相手の方は、翌日失脚なさいました。怖いです・・のよ。」

「脅迫ですか。」

「そう、あの、ムヤマさんからのです。よく話し合え!とね。まあ、とても忠義な方なので。」

「それは・・・よい、部下をお持ちですな。」

「そう。さすが首相様。わかってますねえ。」

「まあ、ステーキを頂いて、また考えましょう。」

「賛成ですわ。」


 **********   **********


「ところで、首相様は、地球温暖化にはどのような見解をお持ちですか?」

 巨大なステーキを食べ終えた第一王女が杖出首相に尋ねた。

「非常に懸念を持っております。このまま放置すると、今世紀末には最大で4.8度、地球の平均気温が上昇するとの予測があります。対策を打つことは、まったなしの状況です。」

「しかし、反対の見解の方も、国もあります。対策と経済発展が共存しなければ、納得できない向きも多いようです。」

「それは認識しております。」

「そこで、化石燃料にも原子力にも依存しないエネルギーを供給しましょう。」

「どこから?」

「太陽と宇宙からです。」

「またまた、夢物語ですか。」

「いいえ、すでに実際に利用するための技術は出来ています、しかし、そのためには、火星人と地球人、そうして金星人の協力が必要です。金星と火星は、過去温室効果による、超温暖化を経験しました。そこから得たものは多いのです。今なら、本当に地球は救えます。そのためにも、今回のような地球の体制一体化は絶対に必要なのです。」

「そこに行きますか。」

 スープをすすりながら、杖出首相がぽつんと答えた。

「否定的にだけ、考えないでください。火星人が今回、強硬策に出たのにも、過去の理由があるのです。まあ、もっとも多少自分勝手な部分もありましてね、そこは、今後うまく解決しなくてはなりませんが。そういうところには、あなたのような方が必要です。」

「ふうん。どっちかというと、褒められてるよりも、けなされてる方が多そうですな。」

「素直になりましょう。首相様。いじめてるわけではありませんよ。このまま行くと、地球の未来は金星と同じ運命です。しかも、宇宙怪物が乗り込んできております。非常に知性の高い怪物です。もし、実例が知りたければ、私の学校にお問い合わせください。」

「は?」

「あなたがいない間に起こった事件は、お知らせしましたよね?」

「それは、見た。確かに。そこに、その『宇宙怪物』が絡んでいると?」

「そうです。」

「はあ・・・ぼくはもう、異常な世界に落っこちたのか。学校に行く前に、病院行きですなあ・・・」

「どうぞ、このあとすぐに、マツムラ総合病院にお連れ致しましょう。まだ、処置を始めたばかりなのですが、ちょっと再生を止めてまして・・・まだ、固まった状態でしょうからね。」

「はあ? さっぱりですが・・・」

「私の学校の教頭先生が、ブリューリ人間化したのです。ご覧に入れましょう。どのような危機に直面しているかをね。あまりほっとくと、可哀そうですし。」


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