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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第三十四章

 **********   **********


『しかし、ついにブリューリが現れましたね。ヘレナさん。』

『まあね、ブリューリは、『1体』見つかったら、その周囲に『30体』はいるというのが、火星の常識。でも、これだけ注意していたから、どこから出てきたのかが、わからないなあ。わたくしが、少し留守した間に起こったとすれば・・・、まあ、まだあまり広がってなければいいけどな。ですよね、アニーさん。』

『面目ないです。』

『とにかく、今ここで抗ブリューリ薬を散布してみてね。みんなが、あまり気にならない位で、やってみて。もし本物がいれば、平気じゃあいられないわ。学校内もすべてに散布。教頭先生の立ち回り先にもね。教頭先生の再生時間は、大分かかりそうかな?』

『昔に比べれば、グンと早く楽になりましたが、そうは言っても、まあ苦しいでしょう。5時間くらいは、かかるでしょう。すでにマツムラ病院に搬送しましたよ。』

『まだ、先生は滞在中よね。』

『アムル先生なら、いますよ。』

『診てもらって。今後の為にもね。再生したら、先生に事情を聴いてもらってほしい。』

『了解。』


 アニーは、校庭と学校中に薬剤を散布したが、結局、特に異常は見られなかった。

『変化なしです。』

 生徒たちは、それぞれに下校して行っている。

 先生方は、教員室に向かった。

『ふうん。安心したような、意外なような、ですわねえ。なんかおかしいなあ。』

『火星の時とは、様子が違いますね。』

『ふうん・・・わたくしに警告をしたつもりなのかも。まあ、あいつならやりそうよね。まだ、見つからない?』

『ええ。ダメです。地球中確認していますが、まだ出て来ません。もう一回、薬剤を、全球散布しましょう。』

『いやあ、どうかなあ。なんか細工してるなあ、きっとね。でもまあ、やってみて。ほかのブリューリが捕まるかも。案外、今頃本人は、温泉につかってるのかもよ。ちょっとこの国の温泉をすべてチェックしてみてくれない? 正体の分からない人物を洗い出してみて。あと、やはりダレルちゃんを捕まえる必要があるな。そっちは?』

『いやあ、これもどこに隠れたのやら・・・でも、なんで温泉ですか?』

『勘よ。この国ではね、温泉がいつもカギになるの。文学でも、政治でも、経済でも、旅行でも、なんでもね。王国とはちょっと違うのよ。それに、隠れ金星人もきっと見つかるかも。あと、第九惑星ね。あそこを、もっとよく探してみて。すっごく深いところよ。人間には危険すぎて、絶対に近寄らないあたりね。ダレルちゃんは、そういうところが、大好きよ。』

『はああ・・・了解ですが、光人間化してたりするかもしれないですよ。』

『ふん。でもそれは、さすがにしないでしょう。まだ、本懐を遂げていないもの。』


 **********   ********** 


 世の中は便利になった、といえばそうだし、わけがわからなくなった、といえば、それも実際そうなのだ。

 正体不明の電子『怪文書』が活躍するかと思えば、肝心の『書類』が無かったりもする。

 下っ端がやったミスは、とことん追求されるが、偉い人は、そうでもないのかもしれないらしい。

 おかげで、ブリューリはアッと言う間に予約を取って、夕方には温泉に到着していた。

 この国でも、非常に有名な『割賦温泉』にまでブリューリはやってきていたのである。

 

 高台にある温泉で、美しい海や山の風景が眺められる、最高の場所である。

 東側は海。西側には高い山々が連なっていて、そのかなりのものは火山である。


 荷を解く時間もほどほどにして、ブリューリは、さっそく温泉につかっていたのであった。


「いやあ、いい湯だなあ。地球の温泉は最高だね。」

 これが、かつて火星を滅亡にまで追い込んだ、恐ろしい怪物なのだとは、誰も思わないだろう。

 しかし、温泉は、実際危険だ。

 もし、彼とちょっとでも体が触れ合って、静電気が軽く走ったように感じたら、あなたはもうブリューリである。

 すぐに発現するかどうかは、ブリューリ本体の意向次第だけれど、一度発現してしまったら、もうその後は、人間を食べずにはいられなくなるのだ。

 そうして次ぎ次に、人間はブリューリになって行く。


 そこに、一人の男性が入ってきた。

 顔中が『おひげ』と言う感じの、豪傑風情をしている。

 軽く体を洗うと、広い広い浴槽に入って、わざわざ、ブリューリのすぐ隣に座ってきた。

「やあ、『ブリさんこんにちは。』ダルですよ。」

「いやあ、絵の題名かと思いましたな。なんかお姿が一段と違いますな。」

 幸いと言うか、他には誰もお客さんがいなかったが、特に気にする様子もなくブリューリは言った。

「まあ、奇遇ですなあ。」

 ダレルが答えた。

「いつ地球に?」

 と、ブリューリが尋ねた。

「ああ、いやあ、これはまあ一種の実態がある『幻』です。あなたとは、ちょっと違う理屈です。なんせチェックインなんていらないし。でも、温泉は味わえる。最高です。」

「ほう。それって、犯罪じゃないのかな? しかし、実体とまったく見分けがつかないなあ。でも、見られてないですか。あの『やなやつ』に。」

「まあ、実はね、大丈夫なんですなあ。あいつには僕らの正体は見えない。本当の話し声は聞こえない。」

「ほう、さすがダルさんですな。おかげで、ぼくは安心していられる。時に、様子はいかが?」

「ええ、悪くない。上手くいっている。ヘレナさんは、ちょっとご機嫌が悪いようだが。地球人はあいかわらずだな。同じように核廃絶ができれば良いとか言いながら、自分から先にやるのは絶対に嫌なんだ。まあ、よくわかるけれどね。おかげさまで、皇帝陛下は地球の歴史上で、最も偉大な指導者になれる。ヘレナにも実に正しく罰を与えられるだろう。火星と金星を滅亡させた罪でね。『ママ』に責任をなすり付けたままなんだから。おっと、あなたは今、こうして罪滅ぼしを行っているわけですが。」

「しかし、コントロールには失敗したとか。」

「まあ、もともと成功しないことを前提に考えてますからね。相手がヘレナの場合は、そうでないと成り立たないですよ。でも、実際に操れることが分かったから、大収穫ですよ。同じ手は効かないが、バリエーションなら、いくらでも考えられるでしょう?ぼくたちの勝利は決まったようなものだ。これも、あなたの協力のおかげです。」

「どうも、でも、あなた、仮にも母親でしょう?なんでそんなに歯向かうの?」

「あなたは、母親の事を、知ってますか?」

「むむむ。秘密事項でありますなあ。でも、まあ知っているけどね。」

「ほう、ブリさんの身の上話しなんて聞いてみたのは、初めてですよね。」

「ははは。怪物は身の上を語らないものです。で、ご用事は?」

「大人しくなさって頂いていますが、もうちょっと今度は、動いてくださいませんか。ただし、範囲限定付きでね。」

「ひとり、しもべにしたでしょう。もっとも、もう解放されてるだろうが。いまは昔の様には出来ないですよ。下手したら、今度は本当に地獄行きだからね。」

「もうちょっと、さわがせてもらったらいいのです。東京以外でね。例えば、こことか。」

「まあ、ヘレナには、僕も大きな怨みがある。『最終審判』の前に、少し遊びましょうか?」

「ええ、そうしてください。じわじわ、行きましょう。じゃあ、また遠からず。」

 ダレルの仮の姿は、温泉から上がって、そのまま消えてしまった。


 **********   **********


「教頭先生、お気がつかれましたか?」

 アムル医師が尋ねた。

 教頭先生は、まだ大きな息を繰り返していた。

 相当に、苦しかったようだ。

「まだ、話さなくていいです。ここはマツムラ総合病院です。わたくしは、医師のアムルです。基本的には王国の王女様たちの主治医ですが、いま日本滞在中です。まあ、同じ系列の病院どうしですよ。あなたの診察をするように、特に第一王女様から依頼されております。」

「第一・・・おじょう・・・弘子さんです、か・・・」

「そうですわ。先生。もう大丈夫ですよ。明日の朝には、もっとよくなってますよ。いろいろお尋ねしなければならないこともあります。でも、いまは、もう少し休んでいてください。いいですか?」

「あい・・・。」

『ふうん・・・思った以上に衰弱しているな。記憶がしっかりあるのかなあ。あやしい。地球での事例がないだけに、比較は難しいが、どうも火星と同じには行かないかもしれない。なんで、この人には抗体が出来ていなかったんだろう。下手したら、地球が危機なんじゃないかな。』


 **********   **********


「さて、アニーさん。杖出首相様に、会いに行かなくてはね。」

 練習を一段落させて、弘子はアニーに言った。

『お食事は?』

「首相様と一緒にしましょうよ。せっかくなんだから。」

『快く受け入れるとも、思いにくいですがね。』

「アニーは、皮肉屋さんだからね。でも、杖出首相は断らないわ。ちょっと連絡入れといてね。」

『あいさ。あのですね、2億5千万年前に来ていた、あの真っ青な『警察署』が、銀河系に入ってきましたよ。』

「あらら、それはまた、なんと珍しい。あなた、感度がぐっとよくなって、とても良かったわね。」

『はあ、まあケンタウリのクジラさんたちのおかげです。』

「そうね、でも何しに来たのかな? ちょっと、やっかいかもなあ。まあ、ここに来たとは限らないし。」

『こらこらヘレナさん、せっかく来てるんです。「やっかい」は、ないでしょうに。温泉に入りたいのではないですか?大好きだったですから。それに、ビュリアさんに惚れてましたからね!』

「こら! で、ブリューリはどうなの?」

『はいはい。いやあ、怪しいと言えば、3人です。北海道に2人、九州に1人、正体不明の宿泊者がいますね。でも、ブリューリの反応はまったくないです。』

「ふうん。それぞれに、観察者を付けなさい。コピー人間は見抜かれるわよ。こういうときこそ、特殊訓練済みの対ブリューリ工作員がいいわ。デビュー戦よね。」

『了解。』


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