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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第三十一章 


 絵江府防衛大臣は、第一防衛局長を呼びつけていた。

「いったい、どうして戦闘機が学校を攻撃するんだ。しかも、相手がマツムラの学校らしいなんて、最悪じゃないか。」

「いや、詳細は、いまだ分かりません。攻撃機のパイロットは確保していますが、本人は何も覚えていないと主張しているようです。通常の訓練だったと。」

「訓練で学校を攻撃するのかね?」

「いえ、そういうことはあり得ない。本人も分からないと言っていますが、しかし、それが普通だと思ったとか、わけのわからない事も言っているようです。」

「君が直に聞きたまえ。」

「はい、そうします。」

「当り前だろう。大蔵大臣に先を越されかねないんだから。まったく、君の出馬にも影響するぞ。」

「はい、すみません。」

「杖出首相の行方は?」

「ええ、わが省としても探していますが、まったく分かりません。」

「国外に連れ出されたとか、皇帝か火星人の怒りに触れて誘拐されたとか、ないのかね。」

「一応帝国にも確認しますか?」

「それは、やはりまずいな。でもまあ、ありがたく、このまま出て来て来ないでほしいものだな。」

「ええ、そうです。ただ、あすには、マツムラの副社長が政府に抗議に行くと、『文芸省』に通告してきたそうです。そっちが嫌でも行くと。」

「あのじゃじゃ馬娘だろう?」

「はい。手ごわいですよ。社長は大人しいですがね。」

「あそこの武器の中には、秘密のものが多い。」

「そうです。国際協定とかに触れるものはありませんけれど。何しろ他に類がないものですからね。」

「なんとか、事なきことにしたいものだ。」

「ええ、しかし、大蔵相兼副総理は、やはり、ちょっと、ちょっかいを出して来るでしょうか?」

「まあ、こっちの首相就任に、閣僚の中で唯一まだ賛成してないやつだからな。党内で選挙にしたいらしい。」

「行方不明にならないですかな?」

「ははは。まあ、それは無かろう。じゃあとにかく、上手く切り抜けろ。君の実力次第だ。」

「わかりました。」


 **********   **********


「防衛大臣は、何やってるの?」

 毛葉井大蔵大臣兼副総理は、秘書に尋ねた。

「事実確認は行ってるとのことです。パイロットは、どうやら誰かに操られていた可能性があります。」

「誰に?」

「さあ。まだ不明ですが、不可解ですよね。大方、反政府勢力でしょうけれど、ミュータントの可能性が高いと、ぼくは思いますですね。」

「ふん。警察は?」

「ええ、『裏ブラックリスト』から当たってるようです。」

「まだこっちも、体制が整わないからなあ。帝国のご機嫌も損ねかねないから、慎重には慎重を期さなければ。国民の反応は?」

「まだよくわかりません。マスコミも戸惑っています。しかし、我が政府が批判の矢面に立たされる可能性もあります。まずは、第一王女次第でしょうね。」

「お見舞いに行かなきゃ、ダメなんじゃないのか?杖出さんの事もあるしな、接触が図れないかな?副総理という立場はこの際便利だ。」

「やってみます。」

「ああ、絵江府さんには、決まってから通告でいいだろうよ。管轄はこっちだからね。」

「ええ、そうですね。」


 **********   **********


「ミサイルがこっちに向かって発射されたんだって!」

 ミアが弘子に報告していた。

 生徒たちは、大概スマホとか小型のパソコンとかを持ってきているから、情報は早い。

「弘子さんを狙ったのかもしれないってさ。」

 くっこも心配そうに、弘子の横に立っている。

「あんたたち、お弁当は?」

 弘子が尋ねた。

「まあ、済んだけど、昨日の事もあるし、ショックタイゲン(ショックで食欲大幅減退)よ。弘子、食べたの?」

「そう言う気分にはなりません。お腹空いたけどね。」

「さすがにそうよねえ。あのね、教室の周りには、弘子の監視役らしき人が取り巻いてるよ。あ、放送だ。」

 『ピンポーン、ポロリ~ン~』とスピーカーが鳴ったのである。


『生徒の皆さん。一時半から、校長先生主催の、緊急全校集会を行います。すぐに『大ホール』にお集まりください。理事長先生も参加します。全員においしいパンと飲み物を配ります。本日の午後の授業は、中止されることになります。すぐ下校できる準備をして集合してください。繰り返します・・・。」

「はあ、また中止か。学校潰れるんじゃない。あ、ごめん。弘子さんのおうちの学校だもんね。」

「まあ、法人ですから、普通の個人の所有物じゃないわ。でも、困ったものよねえ。」

「今の放送、山鹿先生でしょう。おいしい・・・なんて。」

「うんうん、そうそう。きゃははは。」

『この子たち、結構神経太いわね。』

 弘子が内心で感心した。


「ほらほらあ。聞こえたでしょう。集合よ!」

 そうこうしていると、山鹿先生が、わざわざそう言いに来た。

「はーい。」

「おらおら、てめえぇら、動けよな。」

「もう、男子は品が悪い。」


 生徒たちは、ばたばたと大ホールに向かったが、山鹿教諭は弘子に近寄って来てささやいた。

「王女様は、貴賓室で待機していてほしいとのことでございますよ。おつきの方からの指示とか。」

「あらま、また余計な事を、拒否ですわ。」

 弘子は、さっさとホールに行き始めた。

 廊下に出ると、明らかに学校には似合わない、怪しい男と女が立ちふさがった。その背後にも三人はいるようだった。

「第一王女様、こちらにどうぞ。」

「あんたたち、ここは遠慮しなさい。」

「いいえ、第一王女様の、ご安全のためです。あそこなら核爆発でも安全ですから。」

「ふうん。誰の指示?」

「皇帝陛下でございます。」

「はあ?あり得ない。今のあの子がそんな些細な事にちょっかい出すはずがない。ははあ、さては「じい」かなあ。大丈夫よ。それにね、ここは行かなきゃならないの。今後の為にもね、あんたたち、ホールの周囲で見張ってなさい。」

「いいえ、ダメです。本国からの指令ですから。」

「ふうん。えらく強く出たわね。いいわ、少し立ってなさい。」

「あ、ちょっと・・・・」

 怪しい男女たちは、たちまち、まったく動けなくなってしまった。

「じゃね、バイバイ。」

 弘子は、可愛らしく手を振りながら、大ホールに向かった。


 **********   **********


 札幌のアンジは、さまざまな情報をキャニアに見せてもらっていた。

 いつのまに、こんなに世界各地にミュータントたちの拠点ができていたのだろうか?

「まあ、誰が始めたのかは、あたしも知らないけどね。」

「一番偉い人って、誰なんですか?」

「そこも知らない。」

 キャニアが答えた。

「さっきの『接続者』さんは?」

「さて、『おら知らネー』とか言ってるけどな。たぶん『最高リーダー』の事は、ほとんど誰も知らないらしいな。ただ、日本支部の『支部リーダー』だけは、どうやら知ってるらしいわ。」

「どこにいるのその人?ここではないの?」

「そう、ここではない。普段は沖縄にいるらしいよ。でも、それが誰かは、あたしは知らない。」

「真反対じゃないですか。」

「まあね、『接続者』は知ってるらしいけど、言わないわよ。」

「ふうん。結構『ほんものの秘密組織』って感じだな。」

「だって、そうだもの。でもね、組織には相手の心を読んだりするミュータントもいるし、いちおう、用心はしてるわけよ。」

「なんか、疑心暗鬼になりそう。」

「そうそう。そこが問題なんだ。いつもあたしもそう指摘するんだけどなあ。ただね『過激派』の動きにも注意が必要なんだ。今日、昼前に、あなたの学校に、ミサイル打ち込もうとしたやつがいるのよ。」

「え!それは・・・」

「まあ、外れたようだし、全員無事だから。」

「ふう。そうですか・・・」

「でもね、何で当たらなかったのかがわからないの。何かの力がミサイルの方向を、無理やり変えたみたい。」

「ミュータントですか?それか、やっぱり弘子?」

「そう。確かに王女様の仕業かとも思ったけど、どうも、『レーダー』さんによれば、そうじゃ無いらしいんだな。『レーダー』さんは、いつも大体ここにいる。国内の超常現象の発生源を漁ってる変わり者だけど、ミュータントの仕業とは違うものだと言ってる。こうした例は昔からあったともね。つまり我々が知り得ない何かが社会に介在していて、人間を保護したり、逆に時には害を成したりするのだと。先日のシャーベリアの隕石もそうだったとか。正体はいまだ不明だけれど。」

「ふうん・・・・あたしの知らないことが、一杯ある訳かあ。」 

「まあ、そう。あなたも、でもその正体不明の現象の発生源の一人なわけよ。まあ、そのミサイルを撃つように防衛隊の隊員を操ったのは、『過激派』のミュータントだろと思われるわけ。彼らは、こうした行動を実際にもう、起こしてるということなわけ。」

「組織は、どうするのですか?」

「まあ、我々はそのやり方は支持しないが、お互い敵じゃあないからね。特に何も干渉はしない。」

「はあ・・・」

「心配?」

「そりゃあ、多少はね。」

「まあ、それが普通。ところが、それが普通じゃない世の中になろうとしている。いくら平和を達成するとか言っても、人が人を平気で仲間はずれにする社会。それは、認められないわけよ。別に火星人が相手だから気に入らないという訳ではないの。もっとも修正が必要な訳だ。」

「そうですよね。やはりね。でも、話し合いの余地はあるんですか?」

「ある。あたしたちはそう思ってる。過激派は、そうは思わない。そこは違う。」

「ふうん。そうなんだ。」



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