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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第三十章 

 **********   **********


 アンジが登校してこなかった事で、生徒たちには『今日はおかしなことは起こらないだろう』と内心少し安心していたところが見られた。

 弘子は、そんな同級生たちの心理を、当然だなと思う一方で、アンジが少し可哀そうでもあった。

 もともと誰のせいなのかと言われたら、それは明らかに弘子の責任なのだ。

「道子にお説教する以前の問題ですわね。」

 とも考えた。


 とはいえ、まさか学校を、まともに攻撃して来る者があるなどとは、ちょっと考えてはいなかったのだ。

 11時過ぎだった。

 首都圏の基地を離陸した戦闘機が一機、どうしたわけか住宅地の上に姿をあわらした。

 そうして、爆撃態勢に入った。

 目標は、第一王女が通う高校。

「目標補足。」

『よし、攻撃許可!』

 誰かが指令を出した。

 戦闘機は、学校をめがけて、搭載していたミサイルを二発発射した。


 こうした緊急事態には、アニーが素早く対応する。

『ヘレナ、ミサイル攻撃あり!』

 そう伝えたうえで、アニーはそのミサイルを海の方向に投げ飛ばした。

『方向転換成功。海上の空中で爆破しますよ。花火です。』

 

 攻撃機は、爆音を住宅地にまき散らして撤退して行った。

『ぐわーん!!』

 という大きな音に、授業中の教室も、がやがやと湧いた。

 生徒たちが、大きな窓から空を見上げた。

『むむむ、航空防衛隊の新型機だ。信じられない。なんで、こんなところに来るんだ?」

 武器マニアの例の生徒が、一目見ただけで叫んだ。

 幸いミサイルは見えなかったようだ。

  

 けれども、周辺の住民の多くが、当然その様子を見ていた。

「学校を狙ったみたいだ。」

「第一王女様を狙ったらしい。」

「王国の国王と、共謀関係にあったとかじゃないのかな・・・。」

「第一王女様が、実は背徳者なんだとか・・・」

「いやいや、そうじゃなくて、ミュータントの基地が、学校にあったとか・・・」


 良からぬ大量の噂が、アッと言う間に広がった。

 しかし、ヘレナはなぜか、そのようなデマを、そのままでほったらかしにしてしまったのだった。


 お昼のニュースが、早くもその第一報を伝えた。

『先ほど入りました情報によれば、航空防衛隊の戦闘機が、首都の住宅地で、私立高校を目標にして、ミサイルを発射したとのことです。しかし、ミサイルは海上にそれて、爆発した模様で、今のところ被害の報告はないということです。これがその映像です。』


 『視聴者提供』という字幕が付いた映像が流れている。


 弘子は、厚かましくも理事長室に入り込んで、その映像を見ていた。

 民放各社も、特別番組を組んでいた。

 首都の真上で、自国民に対してミサイルを発射したと言うのは、それはもう大事なのである。

「あらら。まあ、またもや、思い切ったことをやったわねえ。アニーさん、誰が指示したの?」

『調査中です。政府中枢からではないようです。おそらく現場の指揮官の誰かですね。』

「でも、政府にとっては大痛手ですわね。ふふふ。楽しみね。」

『あのですね、あなたが狙われたのですよ。わかってますか?』

「もちろん。個人実技じゃ歯が立たないと見たどなたかが、一挙に破壊を狙ったかな。」

『地下の事を、知ってる人がやったのですかねえ。』

「さあ? まあ地下とは言っても、遥かな地下だからなあ。届かないわよ、あんなへなちょこミサイルじゃね。」

『そんな、のんきな。まあ、確かにそうですが。でも、そこの地下にあることは、確かですからね。』

「そうね。でも二十キロも下よ。防衛隊の内部に、ミュータントか何かが入り込んでいる。まあ、元からいた、と言うべきかな。杖出さんに、ニュースを伝えなさい。そのままよ。解説ぬき。」

『了解しました。』

『総督閣下殿、ご覧になっていましたか?』

 弘子は妹の意識に連絡をした。

『はい。確かに。』

『よろしいですか、帝国がどう対応するのか、見せてもらいますから。』

「ええ、皇帝陛下に連絡を取っております。しばらくお待ちください。でも、犯人は誰でしょうか?』

『さあて、誰かなあ?』


 そこに、理事長室のドアが開いた。

 明子が入ってきたのである。

「うわ!」

 明子がびっくりした。

「まあ、理事長先生。今時、何をしにおいでですか?」

「はあ、弘子様ですか。それはですねえ、弘子様。学校がミサイルで攻撃されたなんて言われましたら、さすがにほっておけないでしょう?どうぞ、こちらにお掛け下さい。」

「はいはい。」

 弘子は、理事長席から離れて、ようやく応接ソファに座った。

 どちらが偉いんだか、はた目にもよくわからないが、ここは学校であり、弘子は生徒なのだから、理事長が偉いに決まっているのではあるが。

「大丈夫でいらっしゃるのですね?」

 明子が尋ねた。

 明子は普通の感応者である。

「ええ。なんとか。へたくそなミサイルだったので、助かりましたわ。」

「ふうん。マツムラコ-ポレーションのミサイルなら、そんな打ち損じはあり得ませんのに。」

「よその国の製造品だったのでしょう。」

「まあ、実はそうなのです。しかし、あの機体の中枢にも、機材の供給をいたしました。わが社にしかできないものです。非常に不名誉な事です。」

「まあ、理事長先生、飛行機はちゃんと飛んだのですから。それに、先生はわたくしと飛行機と、どっちが大切なのですか?」

「そう言う話ではありません。まあ、でもよかった。無事で。心臓が飛び出ましたから。」

「胸なら出てますよ、ちゃんとね。お姉さま。」

「あのですね! 弘子様は時々、あの解任したおじさまみたい。あ・・、いえ大変失礼をいたしました、どうぞお許しください。まったく政府は何考えてるのかしら。これから抗議を行いますから、いらっしゃいますか?このまま。」

「いいえ、失礼いたします。理事長先生。」

 弘子は、理事長室から退室した。


 この学校の中には、第一王女(第一の巫女)専用の貴賓室がある。

 第二王女には無い。

 第一王女は、いつも特別な存在なのだから。

 もっとも、彼女が許可すれば、第二王女も使用可能だし、第一王女は実際に許可を出していた。

 その部屋の中にある暖炉の壁は、内部が豪華な秘密のエレベーターになっていた。

 そうして、それは地下20キロにある施設につながっていた。

 弘子は、エレベーターに乗った。

 20キロと言っても、すぐである。

 こいつは、平らな方向にならば、飛行機より遥かに早く進む。

 これは女王様御自慢の、古来からある地下移動設備の一部なのである。

 地球内部の変動で、大分壊れはしたが、今も結構修理しながら使えている。

 いくら速く走っても、内部には何の衝撃も来ない。

 しかし女王様は、このところ時空間トンネルの敷設に力を入れてきたので、最近はちょっと使用頻度が下がってしまった。

「ああ、王女様。いらっしゃいませ。」

 応対に出たのは、施設長だった。

「まあ、他の人はここから来ませんからね。」

「本当に、映画の中の、悪の秘密組織という感じそのままね。ここは。」

「あなたが作ったのでしょう?」

「はいはい。で、どうですか?」

「ええ、そうですね。今のところ次元に大きな動きは見られないです。しかし、明らかに第九惑星上の活動は活発化してきてますね。移住地はすでに全壊です。犠牲者は出ませんでしたが。」

「やはり、光人間たちが動いてますか。」

「そうですねえ。意図は解らないですが、何か企んでますね。でも、危険ですから、直接は行かない方が良いでしょう。」

「そうね。『真の都』のビューナス様は否定しているけど、誰かが『ビューナス復活』を企ててるのは確かなように思うわね。金星の『空中都市』が飛び出てこないように、よく見張ってくださいな。どうもあやしい。王国の施設でも見張ってるけどね。相当有能な技術者が、あちらにもいるみたいね。」

「ええ、ああ、どっちにお帰りですか?ご自宅?学校?会社?」

「学校ね。まだ授業があるし。」

「あなたが先生をなさった方が、良かないですか。」

「御冗談を。」

 弘子は帰っていった。

 実のところ、ここはマツムラ本社の地下研究所でもあるし、実家ともつながっている。

 飛行機なんか乗らなくても、王国にも行ける。

 今のところ、さすがにそれはまずいだろうけれど。

 

 ここの職員は、収入もずば抜けて多いが、制限も多い。

 労働条件は最高だけれど、よほどのもの好きで、口が堅くて、しかも才能がないと、ここでは務まらないのである。


 ************   ************


 明子は、政府に抗議した。

「民間の学校を目標にして、ミサイル攻撃するなんて、非常識も飛び越えてます。」

『目下調査中であります。抗議は政府に伝えます。』

 対応に出た文部藝術省の担当者は、申し訳なさそうに答えた。

「まあ、明日には直に内閣政府局に抗議に行きます。これは予告ですから。」

『それは直に、どうぞ言ってください。』

「よく言うわ、そこが管轄でしょう。そこからどうぞ、お伝えください。そちらが嫌でも十時に行きますと。場合によっては、新開発の機械の納入にストップをかけますと、お伝えくださいませ。」


 まったく、質の良くない『死の商人』なんだから、と明子も思う。

 これで、第一王女様の実家の二女なんだからな。

 しかし、持てる力を総動員しても、犯人を引っ張り出してやる。

 明子はそう決めていた。



「理事長、マスコミさんがいっぱい来てますが・・・」

 校長先生が連絡を入れてきた。

「はいはい。もちろん応対いたします。校長先生もよろしくね。」



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