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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二十三章 


「ビュリアさん、は火星の侵略者なの?さっき、お店の人は王女様と呼んだけど?」

 あいかわらずマヤコは、直球勝負だ。

「まあまあ、何か注文しましょう。何が、いいですか?わたくしのおごりですよ。」

「ああ、じゃあアイスコーヒー。」

「はい。ママ、アイスコヒーふたつね。」

 ヘレナは、インターホンで注文した。

「さて、わたくし、いまタルレジャ王国の第一王女をやってますのよ。」

「ええ? じゃあ、皇帝とか総督とかの・・・」

「そう、姉よ。ただし、わたくし自身は、地球帝国では無役。王国に専念しなければならないから。」

「ビュリアさんが、地球を征服したのですか?」

「ううん。物理的に言えば、あなたもよくご存知の、ダレルとリリカさんがやった。全体の作戦も、二人が作った。ただ、地球人の抵抗心を火星人に対する好意に変えて、火星の女王様と皇帝と総督への忠誠心を植え付けたのは、わたくし。その先は、妹たちに任せたから、タッチしてないのよ。」

「じゃあ、やはり、地球征服したんじゃないですかあ!」

 マヤコが怒った。

「うん。確かにそうかな。でも、このままほっといたら、火星人や金星人の二の舞になることは明らかだったからね。」

「いやあ、ビュリアさんはそんな行き当たりばったりなことはしない。きッと最初から計画してたんでしょう? 王国を作った時から。」

「まあ、それはいくらなんでも、言い過ぎですわ。確かに、未来予測のシナリオのひとつにはあったわよ。でも、決めていたわけでも無いの。結構、成り行きなわけよ。」

「怪しいなあ。」


 ママが自ら、アイスコーヒーを持ってきて、扉をノックした。

「どうぞ。」

 ヘレナが答え、ママが入ってきた。

「はいはい、お待たせしました。最高級アイスコーヒーですよお。」

「サンキュー、ママ。」

「あら、『ママ』?って、なんだか、昔の温泉地球の「女将さん」っぽい。」

「あらららら、さすがマヤコさん、見破られたか!内緒ですよ。そんな妖怪おばあちゃんだなんて、知られたら大変。」

「まあ、それは、あたしも一緒ですが。」

「マヤコさん、いったい何処にいらしたの?」

 ママが尋ねた。

「まあ、内緒です。」

「あらま、長いお付き合いなのに?」

「ビュリアさんが、本当のことを全部話してくれたら、教えます。」

「まあ、ほらあなた、全部洗いざらいお話ししなさい。昔はあたしの娘だったんだから。」

「ふうん、ですね。もし、マヤコさんが、わたくしのお仕事に協力してくださるなら、お話しいたしましょう。」

「そんな、地球征服の片棒なんか担ぎません。」

「ほらほら、やはりそうでしょう? あたしも嫌なんだけどね。まあ、巷の情報を集めろって、そしたら、シブヤとギンザにお店、持たせてやるって言うからさあ。まあ、マヤコさん、でも、聞いてみたら?いやなら断っちゃいなさい。」

「殺されるかもしれない。ビュリアさん、怖いもの。」

「まあ確かに、カタちゃんの例はあるわねえ。」

 ママと、マヤコは、ビュリア=弘子=ヘレナ、が入った女性の体を、怪し気に見つめた。

 結構、派手作りの女性だが・・・

「そうね、この体の方のご都合が、あと1時間もないのね。じゃあ、かいつまんで言います。今日は嫌だったら、数日、考えてくださってもいいわ。だって、殺したりなんかしません。カタクリニウクさんの場合は、異常事態で特別な例ですから。それに、今は、『真の都』で静かにお暮しですわ。」

「天国でしょう?それか、地獄。」

「『真の都』は死を超越した精神的真実の世界です。特例として、これからお二人に、ちょっとだけお見せすることも、実は可能ですわよ。」

「怖いー! あの、じゃあ聞きます。それから考えます。」

「あたしも聞いていい?」

 ママが言った。

「ダメと言っても、聞くんでしょうから、いいですよ。」

「ふんふん。」


 **********   **********


 四人のパネリストが壇上に上がって議論を始めた。

 一人は、マツムラコーポレーションの前常務さん。

 元警察庁の幹部の人。

 今夜の司会者だったテレビの有名キャスターさん。

 そうして、・・・・・

『なんで、あいつがいるの!』

 会場に残していた女性の目を通して、ヘレナはあきれた。

「・・・そうして、もうおひとりは、アメリカ国の超天才少年、現在日本で、ある重要人物のコンサルタントもしているという、シモンズ・フォン・デラベラリさんです。アメリカ国や日本のマスコミに登場されたこともあるので、ご存知の方も多いでしょう。今日は特別においでくださいました。火星に関する情報もたくさんお持ちという事です。よろしくお願いします。」

「ども。」

『こらあ。なんであんたがそこいいるのよお!許可してないわ。』

 ヘレナは、マヤコと話しながら、シモンズに強力な思考を送った。

 シモンズは感応者である。簡単に操れるが、契約上それは禁止になっている。

『いや、本国から出るように指示が来たんだ。文句ある?』

『むむむ・・・・ない。あまり余計なこと言わないでください。それにしても、本国の情報部はどっちがコントロールしてるのよ?』

『内緒だけどね。ぼくの頭の中見るのは、契約違反だからね。僕の頭を守る約束もよろしく。』

「いいわ。勝手にしなさい。でも、ちゃんと聞いてるからね。』

『どうぞ、そうぞ。』



「マヤコさんは、あそこで、お話ししただけで、あとは聞かなかったのね。」

 ビュリア=弘子=ヘレナは言った。

「まあ、さっさと消えた方が身のためと確信しましたから。」

「ふうん。なるほど。誰に呼ばれたの?」

「マツムラのあのおじさんです。どうして、あたしのことを知ったのかはわかりません。居場所もですしね、なんせタイタンに、いたんですから。」

「はああ。なるほど。なんとなく、けっこう大勢が絡んでいそうだな。まあ、大雑把な支配しかしてないのよ。今回はね。まだ。火星ほどには綿密なことはやってない。あそこでは、ブリューリが絡んでいたから、女王の支配は徹底的に行われた。地球では、地球人自らが、自主的に進んで協力する方向に持ってゆこうとしているの。それで、地域紛争とか、核開発競争とか、病気の蔓延とか、貧困とか、地球環境破壊とか、そうした地球規模の崩壊から、人類を救い上げようとしているの。でも・・・」

「でも?」

 マヤコが聞いた。

「困難が起こることは予測していたの。地球人全体にコントロールを掛けようとすれば、必ず、その副作用でミュータントは発生する。不感応者によって、抵抗運動は起こる。でもね、どうやら内部に問題が発生していると思われるの。まだ調査中だけど、非常に怪しい動きがある。ブリューリが火星から地球に脱出したことは、はっきりしているの。でも、その本体がどこに隠れているのかが、まだ掴めないの。わたくしの自宅に籠ったのではないかとも疑ってみてもいるけど、どうやら言い切れない状態。それは今夜じっくり捜索するわ。それに、未来人がなにやら悪さをしようとしていることも、わかっている。さらに言えば、ダレルが怪しい。まあ、お互いがお互いを信用しがたい状況を、誰かさんが創ろうとしている。その犯人が、ダレルさんではないか・・・。彼は、さっき言ったような地球支配ではない方向にしようとしているらしい。それには、火星の急激な復興という目標があることは間違いない。地球には強制的な平和を与え、大量の労働者を徴発しようと考えているらしい。でも、ダレルは強力な不感応だから、読めない。まあ、いろんな人、人間じゃないのも・・・、のたくらみが絡んでいるわけだろうと思うの。そこで、マヤコさん・・・」

「は?」

「難しい事はしなくていい。コンサルタントになってほしい。わたくしの。」

「はあ?」

「意見を聞いたときに、答えてくれるだけでいい。時々お茶会に出てくださったらいい。タイタンに住んでいていい。そのかわり、あなたのご希望を聞いて差し上げます。」

「ほんとに?それだけ?」

「はい。」

「じゃあ、あたしとそう変わらない。あなた、いいお店持ちなさいよ。もうかるわよ、地球って。」

 ママが勧めた。

「いえ、あまり表には出たくないから。あの、じゃあ一つお願いしていいですか?」

「はい」

「ウナが行方不明なの。探してください。」

「光人間の?」

「はい。」

「光人間の捜索は、わたくしの故郷をさがすくらいに難しいわね。まあ、でも通信が成り立てば、可能かもしれないわね。いいわ、わかった。やってみる。もう少し情報をください。」

「やたああ!!」

 マヤコ節が炸裂した。

『なんとなく、誰かさんによく似ているなあ。』

 弘子=ヘレナは思った。



 討論会は、超前衛的な(恨みもあってか)マツムラの前専務と、比較的「不感応者」だが穏健派の元警察幹部と、あくまで理論的で客観的なシモンズと、調停役の現ニュースキャスターさんとで盛り上がっていた。

「やり方は、ここでは決まらないでしょう。しかし、火星人に平和的な撤退を要求することでは一致しましたね。」

「そうです。ただし、もし第一王女様が究極の武器をお持ちなら、我々に協力してほしい。もちろん、使うことを前提にはしないが。」

 前専務が言った。

「そこは、異論があるのです。使う気が無いのなら、持ってる意味はない。『あらゆる選択肢がある』のでなくては、脅しにならないが、ぼくはそのやり方には賛同しかねる。だって、あまりに漫画的で意味さえない。そんなものがあるなんて、誰も信じないでしょう?」

 拍手が起こった。

「シモンズさんはいかがですか?そのような武器が実在するのでしょうか?」

 キャスターさんが聞いた。

「ふん。ぼくの持ってる情報や、経験、知識から推測して、その武器がある可能性は、高いですね。」



 弘子=ヘレナ=ビュリアが、シモンズの思考に介入した。

『あるある。ほら見せたげるわ。これ。』

 シモンズの頭脳に、小さな箱が浮かんだ。

『中身は、玉よ。でも、地球くらいなら、確かに飲み込んじゃうわ。活性化させないと動かないから、普段は安全。小さく見えるけど、もっと小さくもなるし、大きくもなる。大きくすれば、太陽でさえ飲み込むことが可能なの。まあ、活性化できるのは、いまのところわたくしだけ。』

『どこにあるんだ?』

『秘密。でもね、いい。こんな物なくても、同じことができる。さっきのマヤコさんの映像は見た?』

『いや、まだ着いてなかった。でも、見たけど。』

『まあ、そうでしょう。どうせあなたのちゃちな衛星を飛ばしてたんでしょうよ。まあ、ああした空間の大穴も開けられるわ。他の方法もあるしね。まあ、そんなこと、滅多にはやらないわ。じゃね。』

『くそ、バケモノめ。』

『なんか言ったあ?』



「まあ、実物は国王の言った通り、手のひらに乗る四角い箱に入っています。しかし、実態は円形のものです。箱の中に納まっています。普段は起動していないとかで、害はないらしいですが。第一王女は、たしかに自分が持っていると言っていましたがね。」

「あなたは、直接聞いたのですか?第一王女様から。」

「まあ、そういう感じです。実物は見てないですよ。映像だけですから。」

「あなたは、あの、火星人の巨大宇宙船に拉致されたのですよね。」

「そうです。まあ、証言者に選ばれたと言うかね。ただし、ぼくは確かに見たが、ぼく自身は女王の殉教者にもけっしてならないし、伝道師でもない。すべてを客観的に分析しています。火星人の実在は、ほぼ間違いない。あれは、地球人じゃあない。しかし、あの三人の王女様は、体は地球人です。中身はまだはっきりしない。明確に言えるのは、第三王女は、つまり皇帝陛下は、火星人に意識を改造されています。彼女は不感応なのにね。そこは要注意。つまり不感応者も安心なんかできないということさ。」

 会場内が大幅にざわついた。

「危険発言だあ!」

 という声もあがった。

「わかってるよ。」

 シモンズがぶった切った。

「おまえも、改造されてるのだろう?」

「なら、こんなこと言わないさ。」

 またシモンズはバッサリと言った。

「まあ、しかし、・・・根は深そうですね。」

 キャスターさんが遮った。

「いいですか、みなさん。われわれは、危険な集会を開いているとも言えます。しかし、今のところ当局からの介入はない。」

 もと警察幹部が言った。

「このまま、終わるのかどうかわからないが、これは現状、発言の自由は保たれているように、見えるのです。この状態が壊れてはならない。ぼくは杖出首相の存在が大きいと見ています。」

「杖出は、引退!」

 誰かが叫んだ。

「民主主義なのですよ、この国はね。」

「まあ、残念ですが時間です。最後に集会決議を出します。多少強引ですが、読み上げます。『火星人は地球から出て行け!』『地球は地球人のものだ!』『火星人は、即刻、平和に出て行け!』以上です。これを全員でシュプレヒコールします。ただし、おいやな方は、座っていてけっこうです、じゃあ意思のある方は起立してください!」

 ここは、問題なのだ。

 さまざまな立場の人がいる。

 この先、身に危険が及ぶ可能性もある。

 それでも、半数以上が立ち上がった。


「では、いきます。

『火星人は地球から出て行け!』

    『火星人は地球から出て行け!』

『地球は地球人のものだ!』

    『地球は地球人のものだ!』

『火星人は、即刻、平和に出て行け!』

    『火星人は、即刻、平和に出て行け!』


「ありがとうございました。気を付けてお帰りください。」


 ************   ************


 アンジは、最後まで残っていた。

 もう一人、知らない女性がいつまでも座っている。

『ネットワークからは、危険だと言ってきていたけど、そう言う感じじゃやなかったな。』

 アンジは思った。

『まあ、ここは撤退。』

 彼女は、最後の人達に付いて出て行った。

 アンジのポケットにシモンズの「衛星」がくっついた。


 最後に残った女性は、ヘレナにコントロールされている女性だった。

 彼女の眼は、壇上の人たちにずっと向けられていた。


『まあ、幸い、何も起こらなかかったですね。』

 キャスターさんが言っている。

『シモンズさんのおかげですかな。』

 元常務。

『ぼくは、会議を計画しただけさ。あんな人が出てくるなんて、予想しなかった。』

 シモンズがぼそっと言った。


 ************   ************


 




































 ************     ************


「やましんさん。なんだか幸子が出て来そうな雰囲気がありますね!!」

「はあ、幸子さん。やましんもう、だめです・・・」

「あらあら、どうしましたか?また『お饅頭の嵐』が必要ですか?」

「はあ、落ち込んでます。」

「なんと。好調ではないですかあ!」

「お風呂の中で、いつも、深く悩んでおります。やましんには、きらめきが無いのです。テレビのアニメ見ていて痛感します。」

「ふうん。困ったなあ。」

「この世は、やましんのいる場所ではないかもしれません。」

「まあ、どうせもう、そうは長くはないあなたの人生の事ですから、気にしない方が良いですよ!美味しいもの、買いに行きましょう!楽しく楽しく。るんるん!」

「食べ物だけが人生か・・・・」

「他に何があるのでしょうか。生きるという事は、食べるという事ですよ。ほら、鬼になってさしあげましょう!」

「うわー。幸子さん怖いですーーー!!やはり、冷蔵庫のもので済ませます。外は怖いよお!」

「あららら。逆効果?女王様あ。タッチ!」


『いま、お食事中ですわ! 皆さま、またね。』

























































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