わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百ニ十九回
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「ずいぶん、ぼこぼこにされましたね。」
リリカが、隣の観察ルームから、眠っているヘレナを眺めながら、いかにもあきれたように言った。
「ぼこぼこ、ずたずた、ぎたぎたですね。」
マムル医師が、深く同意した。
「しかし、いささか、不思議なんです。使用されたのは、ヘレナさんが開発したビーム銃です。特別仕様でして、このようなものは、今のところ地球では、我が王国の王室内にしかなく、北島の特別警備員のみが所持しています。戦闘に出ていた兵士は持っていないですよ。もちろん、一般には出回っておりません。わたしは、立場上、この王国にあるすべての兵器を調べていますし、地球上のものも、手に入る限り、そうしています。もちろん、ヘレナさんやルイーザさんならば、あるいは、ヘネシーさんならば、持ち出せますでしょう。ただし、火星の軍隊には、よく似たものがありますよね。いったい、この犯人は、どこから入手したのでしょうか。さらに、様々な波形、周波数、出力で発射できます。この場合、やや細いビームを使っています。威力はそれなりに出てますが、一発で焼き殺すとか、蒸発させるとかは、出来るはずなのに、していません。また、この暗殺者は、非常に腕がいい。良すぎるくらいです。致命傷を、間一髪かわしています。見事ですね。」
「つまり、意図的にそうしたと?」
「もちろんそうでしょう。あるいは、そのように誰かがコントロールしたか。わたしが見たら、その武器の正体は、一発でわかることも、承知してたはず。実行犯は知らなかったかもしれませんが。」
「ふうん。怪しい。」
「そらもう、怪しいなんてものではない。明らかに、計画的に、ぎりぎり、殺さなかった。ただし、瀕死状態にはした。言い方は良くないですが、普通の地球の医師ならば、たぶん大方は、救えなかった。わたしは、威張って言っているのではなく、この子が生まれる前から、ずっと観察し、出産に立ち会い、以降、ずっと健康管理をしてきました。この子の特殊性をよく知っています。また、この病院の設備がありますし。この子とルイーザさんは、一種の遺伝子操作により生まれた特別製です。また、弘志君もそうです。雪子さんも。さらに、あの家の長女さんも、かなり異常児でした。もちろん、公表されていません。この子たちは、母上のお腹の中で、シューベルトさまの歌曲をドイツ語で歌ったり、完璧な和声でフォレさまやブラームスさまなどをデユエットしていた双子です。誰が教えたのでしょう。」
「うわさは、聞いたことあります。」
「たまたま、非公式に覗いてしまった看護師さんがありまして。いいタイミングで歌ったのですよ。」
「はあ。」
「つまり、この子も、ルイーザさんも、誰かの意志で作られたのです。」
「女王様ですか。」
「まあ、あなたの方が、そのあたりは詳しいでしょう?」
「そうですね。火星でも、さかんに人体実験していました。」
「おそらく、この双子は、女王さんの傑作なのでは? そう思いますよ。出来すぎです。ヘネシーさんが、いささか嫉妬するのも無理ないでしょう。あの子も、並外れた天才ですが。」
「そんなこと、言っていた気がします。」
「そうでしょう。」
マムル医師とリリカは、さらに呆れたように、今は、やたらに大人しいヘレナ=弘子を、見やった。
しかし、マムル医師は、非常に重要な点を見逃していたのだが。
さらに、ここには、『ありえないものが、入り込んでいた。』のである。
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************ 幸子さんコーナー ************
「やましんさん、このセリフ、どっかで聞いたような。」
「そうですか。」
「うん。誰が、入りこんでいると?」
「そりゃもう、決まってます。」
「やっぱり、幽霊!」
「そりゃ、幸子さんでしょ。」
「失礼な、幸子は、女神様ですよ。」
「失礼しました。」
「写真には、写る?」
「写らないでしょうね。たぶん。」
「ふうん。幸子は、たまに写るけどな。」
「それも、不思議ですよね。」
「うん。不思議だ、おかしいな。あり得ない事ね。」
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