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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百二十一回


   ***************   ***************   



 「ふうん。あたくしも、ばかにされたものね。」


 ヘレナが呆れたように言った。


 「優子さまは、ごく普通に生きるように設定されておる。ここに出てくる意義はないはずじゃ。」


 優子は、少し、たゆたうように、テーブルの周囲をゆっくりと歩いて回った。


 「そう。でもね、弘子ちゃん。あなただって、身体は人間にすぎない。それに、本物の弘子ちゃんは殺害された。あなたは、複製品。おや、もしかしたら、あなたが本物かな?」


 「ほほほほほほほほ。さすがお姉さま、と申しましょう。わしは、確かに本来人間ではあるがのう、しかし、すでに、普通の人間ではないのじゃ。火星の女王とあたくしは、一心同体であり、不即不離でもある。」


 「まった。そこは、おかしいよ。」


 シモンズが異議を唱えた。


 「ヘレナは、いや、ヘレナと自称している化け物は、弘子さんの身体を利用しているに過ぎない。その証拠に、あんたは、その身体から離れることができるし、その間、弘子さんは、正気に戻っていた。ぼくは

、間接的にではあるが、それは確認した。それに、ヘレナやいわゆる火星人は、人間のコピーを作る技術がある。ぼくは、火星人なんて、いまだにほんとは信じたくないけど、でも、そうした技術があることは、どうやら事実みたいなんだ。そうなると、火星人も、事実だと思った方がよさそうなんだ。で、道子さんは、お気の毒だが、基本的には、弘子さんのオリジナルな写しだろう。外形的には、双子で間違いがないが。人工的にそうなった、と、僕は見てる。いろんな出生時の伝説みたいなものがあるようだけれど、独裁者には良くある話だしね。でも、今回、弘子さんが、いやあ、第1王女様が、殺害されたのは、間違いない。そうだよね。第2王女様? それとも、やはり、間違ってるのかな?」


 ルイーザは、しばらく、会話から外れていた。


 それが、ふいに、呼び戻された感じになったのだ。


 「不即不離ですか。お姉さま。確かに、付かず離れずですものね。あたくしは、お姉さまの味方です。あたくしたちは、ひとつですもの。お互いに、けっして裏切らない。それは、出来ないのです。そのようなことは、あたくしには、考える余地がないのです。シモンズさま。おわかりですか?」


 「ほう・・・・つまり、答えらえないと? まあ、あなたの意識は、弘子さんに取り付いてる化け物によって、良い具合にコントロールされている。ですよね。ただ、一定の範囲の自由は与えられており、ロボットではない。時には反発するんだ。そこが、実に、興味深く、また、面白い。道子さん、あなたは、弘子さんが射殺された現場に後から駆けつけているよね。その生死は、しっかりと、確認したはずだ。違いますか?」


 「確認、いたしましたわ。」


 「その結果は?」


 「まあ、お答えできませんわ。」


 「ふん。ビュリアさん、・・・・洋子さんの方がいいですか?」


 「どちらでも、お好きなように。」


 「あなたは、かつて一時期、女王へレナだった時期がある。これは、事実ですか?」


 「そう。認めましょう。」


 「じゃあ、このお二人が、いま、どういう関係、というか、もの、になってるのか、ここではっきり、説明してください。」


 「そうですね。いいでしょう。」


 「それに、あなたのそばに近寄ったもの、特に男は、みな、狂ってしまうとあなたが小さいころから言われたようだが、ぼくは、特に異常を感じていない。そこんとこも、ついでに、説明してください。」


 「いいでしょう。」


 洋子=ビュリアは、どこから出たのか分からないが、いつの間にか、北欧調の、なかなか良いスタイルの椅子に腰かけていたのである。


 重厚なゴシック調の、この食堂の椅子とは異質なものである。



            ************************



 ここには、いないはずの友子が、今だ、幽閉状態の『地球そのもの』に語りかけていた。


 『もうすぐ、出番ですよ。起きなさい。』


 『なんだ、結局、頼るのか? おれは、排除されたんだろ? なら、早く消すがいい。』


 『そんな、ひねたこと言わないで下さい。あなたは、長く、王国の初代国王であったのですもの。本当は、真の都に入るべきものを、ヘレナさんは、あなたを、あの反乱に当たって、罰した。しかし、ようやく、その期間も終わりになる。』


 『ぼくは、計算された駒のひとつなんだ。そうだろう? 母は、どこに行ったの?』


 『それについては、分からない。本当に。誰が知っているのかも。まあ、本物の女王はすべて知ってるとして、あとは、リリカさんくらいでしょう。自分で確かめなさい。』


 『ふうん。そういうことなら、また、是非、この世に出ても良い。』


 『そうでなくては。』


 『しかし、どうした情勢なのか、知らなければならない。』


 『もちろんです。それに、もうひとり、連れ出さなくては。』


 『あの怪物かい?』


 『もちろん。』



 この会話は、なぜか、ふたつの、これを管理しているコンピューターさんには、聞こえていなかったのだ。





   *********************************











        **********  幸子さんこーなー  **********



 『やましんさん、なんだか、100年ぶりという感じですよ。』


 『いやあ、そうなんです。ひたすら、深き淵に、はまっている。そんな感じです。』


 『詩篇129だったかなあ。』


 『そ、”深き淵から、あなたに叫ぶ。” そんな感じです。ドラランドさんの曲とか、あれは良いよなあ。ぼくは、異教徒だけどね。』


 『でも、誰も聞いてくれて、いないとか? ふんふん。お饅頭いかが? 幸子は聞いてますよ。』


 『そ。一個戴きます。そんな感じです。でも、誰しもそうなんだろうけど。まあ、実際、幸子さんだけかも。』


 『(お饅頭くわえながら)・・・ふんふん。十分よ、十分。美味しいなあ。やはり、新発売のスぺシャル饅頭は美味しい。』


 『そう。ま、美味しいけど、あまり変わらないような。』


 『このお味、分からない人は、分からなくて良いのです。』


 『そりゃそうだ、分からないこと、分かるのは、難しい。』




   **************************************








 





 





 



  

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