わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百十二十回
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『おんどりゃあ。この肉は、なんなら。え? 大奉贄典どの?』
ヘレナが凄んだ。
こうした状態のヘレナは、ルイーザ以外にはまず見せることはない。
だから、大奉贄典は、真っ青になっていた。
「いや、しかし、間違いなく、選抜した者を調理したのですから。」
弟子も、同調した。
「そうです、王女様。間違いなく、確認いたしました。」
「ほう・・・しかし、そのようなことがないように、細胞確認をするはずじゃ。違うかの?」
「いえ。いたしました。問題はなにも、ありませんでした。」
「だから、ヘレナさん。言っただろう。ぼくは、従業員だが、奴隷ではない。」
シモンズが割って入った。
「ほう。あなたの仕事は、わしの故郷を探すことじゃ。ここは、本来は、そなたが来る場所ではないのじゃ。」
「従業員は、業務以外のこともすることを、お忘れなく。」
へレナは、どかんと足元を広げて、座り込んだ。
ルイーザが仰天した。
「ふうううううん。やはり、アニーさんか。なぜ、裏切った?」
『アニーさんは、指示に従っただけです。あなたは、真の女王様ではないことが判明しました。だから、真の女王様に従った。それだけ。』
「まあ。おほほほほほほほ。なんという、おろかな理屈でしょう。アニーさんともあろうものが、幻に騙されるなんて。おりゃあ。これは、合成人間じゃ。コピーですらない。わしに、分からぬはずがない。愚か者め。機能停止じゃ。大改造する。」
『むりです。アニーさんは、真の女王様によって、保護れております。あなたには、手が出せない。』
「ほう・・・・・・・よかろう。」
ヘレナは、アニーさんの機能停止を行おうとした。
しかし、なぜか、確かに、操作ができない。
アニーさんの内部に、いつものように侵入できない。
それでも、ヘレナは、自分が分身だと言うことを、それが、事実だとは、受け止められなかった。
「ヒントは、弘子さんが、正気の時にくれた、この機械なんだ。」
シモンズが、例の四角い装置をポケットから取り出した。
「なかなか、中身の分析は難しかった。アニーさんに大分、助けてもらったよ。それでも、解析が難しかったんだ。弘子さんは、あんたには、もったいない人間だね。」
「あの子は、わしが、作ったのじゃ。」
「うん。そこは、おそらく真実だと思うよ。あんたに、能力がないなんて言ってない。でもね、弘子さんは、気が付いていたんだ。自分を支配する、この化け物は、本当の女王ではない。とね。ならば、その、真の女王様は、どこにいるのか?」
「あの、シモンズさま、わたくしには、まだ、よく理解が出来ませぬ。」
ルイーザが困惑したように言った。
「あなたは、ヘレナの支配下にあるからです。あなたの意識は、ヘレナが許した範囲しか認識できない。本来ならば、弘子さんと同格か、もしかしたら、それ以上の天才なのに。もし、あなたから、ヘレナの分身を除去できるなら。」
「くだらぬ。わしの力に、歯向かえるものは、おらぬ。」
そこに、静かな深い声が、響いたのである。
洋子は、ここに侵入して以来、ずっと沈黙を守っていたが、やっと、口を開いた。
「松村の家は、魔物の巣窟ですわ。ただ一人、ふだん目立つことがないのは、誰なのか?」
「雪子であろうが。」
ヘレナは、悠然と答えた。
「そう。雪子は、でも、カモフラ―ジュだから。そもそも、そこに答えられないあなたは、本物ではないということね。」
「お姉さま。お言葉ですが。あなたに、そんなことを言う資格はないのじゃ。わしの言いなりの操り人形にすぎぬわ。雪子も、わしが、配置したのじゃ。」
「そうね。でもね、操り人形は、神秘なものよ。あなたもね。操り人形さん。」
「おどりゃあ。姉とて、許さん。」
「あたしは、なんでも無かったの。」
そこに突然現れたのは、三女の優子だった。
「ほかのお姉さま方や、お兄様、妹のヘネシー、誰に比べられる事もない。普通の存在。なんの才能もない、天才でも鬼才でもない。ただの、大学生。松村の家で、ただ一人の、当たり前の人です。」
「いやあ・・・一番怪しくない人が、やはり、一番怪しかったと? ぼくは、最後に勘違いしていたのかな。黒幕は、雪子に違いないと、思ったが。」
シモンズも、意表を突かれた感じだった。
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************ 幸子さんこーなー ************
「やましんさん。ここんとこ、入院したり、倒れていたりで、良いところなしね。」
「そうなんですよ。熱出してしまってね、急遽入院です。コロナではないけれど。やましんの通う病院は、でかいけど、コロナを扱っていない。もし、そうなったら、やましんなどは、ほっておかれてしまうに違いない。」
「たしかに、通常の治療や、措置が必要な方は、困るよね。」
「そう。でも、内心は、微妙ですよ。この先どうなるか、分からないし。」
「そうだね。こういう時は、お饅頭にかぎります。『お饅頭あらし~~~~~!!』」
ばらばらばらばらあああ~~~~~~~~
「あらま、なんか、まばらだね。」
「うん。仕入れが、難しくて・・・。お客様、来ないし。ま、がまんがまん。」
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