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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百十九回


************     ************



 『いいか。あすは、授業は休みだが、各自14時までには登校すること。地球帝国創立式典は、地球首都が置かれるタルレジャ王国の首都タルレジャで、18時から始まる。時差は、3時間向こうが早い。したがって始まるのは15時からだ。24時間寝ない君たちには、問題は無いかもしれないが、安全には十分注意すること。政府で、ゴタゴタがあるらしいが、気にするなと言われている。先生にも、さっぱりわからないが、それまでには、かたがつくんだろう。』


 担任臨時の渡場先生が言った。


 臨時。なぜ、そうなったのかは、さっぱりわからない。


 噂では、担任の山鹿先生は、教育センターで、頭が爆発したんだとか。


 つまり、正常ではなくなったという。 


 あくまでも、噂であって、本当のところはどうやら教師を含めて誰も知らないらしい。


 さらに、弘子が亡くなったという『事実』は、確かに、全員に衝撃を与えた。


 にもかかわらず、タルレジャ王国は、婚約の儀と、地球帝国の創立式典が優先だとばかり(正式には何も言わないが)、弘子の葬儀などはまったく行われていない。


 松村家の本宅にも、大きな動きがないというが、何しろ丘の上のお城なので空からしか見えない。


 マスコミが、ヘリから取材したりもしたが、プライバシーを重視してほしいと政府から注文が付いたらしい。


 この学校の生徒たちのいくらかは、町内会どおしであるし、クラスメートでもある。


 あんじもいなくなって、学校全体が、もう、がたがただけれど、それでも、友人としての結束と言うものがある。


 だから、弘子が死んだりするわけがない。


 きっと生きているんだ。


 みな、そう思っている。


 なにしろ、王国の『第1の巫女』は、不死であると、宗教上は考えられてきている。


 学友たちは、弘子の生存を信じているのである。


 もっとも、この学校の生徒たちは、本来おとなしく、『だんまり』、になるはずがない。


 とにかく、様々な意味で、札付き生徒の集合体である。


 別な言い方をすれば、ある種の才能をもった、個性的な生徒が多いのだ。


 とはいえ、いまや、『紅バラ』に改造された生徒も多い。


 『紅ばら』にされてしまった生徒たちは、学校側が校舎も別にして、特別クラスを編成し、そこにまとめてしまっている。


 しかし、このところ、ミュータント軍団との闘いで、学校にはあまり出てきていない。


 もっとも、政府は、『紅バラ組』を、暗に保護しているようだ。


 彼女たちは、『地球帝国』の擁護者であることを宣言していたからだ。


 一方で、『超能力者』グループは、地球帝国を認めず、政府機関に攻撃を仕掛け、総理官邸や、国会、防衛隊本部などに突入した。


 世界各地で、攻撃が行われ、一時は政府を占拠した国もある。


 しかし、地球帝国は、また、紅バラ軍団も、彼らが思っていたよりも、強かった。


 それは、後ろに火星などが、付いているからである。


 だから、一進一退の攻防だったが、おとつい、ついに、その火星軍が直接介入した。


 火星軍は、かつてミュータントたちと闘ったノウハウを受け継いでいる。


 また、一種の幽霊軍団である『池の女神様』たちは、火星の女王様の傘下にある。


 しかし、実際に指揮しているのは、アヤ姫様だ。


 アヤ姫様の挙動は、どうも不可思議な点があった。


 必ずしも、帝国を支持しているようには見えない。


 王国各地の教育センターを攻撃したことも、火星の女王側とは、思えない。


 そこから後は、籠ったままで、動いていない。


 その火星の女王様は、弘子の身体を根城にしていると、シモンズなどは考えていたが、こちらも、かなり訳が分から無くなってきていた。



 「先生、弘子のことは、どうなってるの?」


 ミアが尋ねた。


 彼女は、なんだかんだのドタバタの中で、紅バラの洗脳をまぬかれて来ていた。


 見渡せば、女子生徒たちは、三分の一くらいになってる。


 要するに、『紅バラ』になった生徒の方が多かったわけだ。


 ただ、ここのところ、『紅バラ』の生徒に取り囲まれて、向こうの校舎に引きずり込まれる生徒は、いなくなっている。


 そういう指示が出ているからである。


 でも、ミアは、相変わらず、『紅バラ』側のスポークスマン的なことはやらされていた。


 くっこから、しばしば、連絡事項がやってくる。


 しかし、くっこ本人は、紅バラの中で出世しているらしく、学校にも姿を現さない。


 『弘子は、どうなってるのか?』


 それは、紅バラの中でも、問題になっているらしい。


 弘子という存在が、いったい何だったのか?


 ここにきて、急に、敵も味方も、中立の者も、皆、大いに気になりだしたらしい。


 「先生が知ってるわけがない。君の方が知ってるんじゃない?」


 「まさかまさか。」


 「しかしだ、先生。この学校の理事長は、弘子の姉さんだろ。おかしいだろ。この世の中、かなり変だろう。」


 反抗的な生徒として知られる、『やましん』が言った。


 「まあ、政治情勢が、大幅に変わりつつあるんだ。君たちは、なにしろ、総督閣下の同級生だったんだ。畏れ多いことであるぞ。」


 先生は手を合わせた。


 多くの生徒が見習っている。


 尋ねた男子生徒は、強力な不感応者で、教育センターも、大混乱に陥れてしまった強者だ。


 「ちぇっ。ばかばかしい。先生、ずれてるよ。」


 彼は悪態をついた。


 「なにを。立ってろ。」


 「はいはい。廊下、出てます。」


 「廊下は駄目だ。教育を受ける権利は奪えないんだ。」


 「あのね、先生、その教育が、おかしいんだよ。」


 ミアが、隣から、彼のズボンを引っ張った。


 「そこまで。がまんがまん。」


 「くっそお。」


 「あんた、この学校だから、大目に見られるんだから。」


 「なんだあ。ミア、おまえも立ってろ。」


 「はい。先生、いつまでですか。」


 「次のが出るまで。いいかあ。教科書開け。はい、105ページ。ああ、ミア、読め。」


 「はあ・・・はい~。『気を取り直した老人は、地面にころがった杖を拾い上げ、まったく何事もなかったかのごとくに、また歩きはじめた。一太郎は、もう一回、老人を非難しようとしたが、和子はそれを押しとどん、いや、もとい、押しとどめたのである。この人は、昔のあの人じゃない。あんたのことも、覚えていないんだ。責めても意味がないよ。・・・・・』」



     ************   ************




 松村家の本宅では、ついに雪子が正体を現そうとしていた。


 洋子も、双子姉妹も、弘志も、行くえ不明(弘子は亡くなったと言う。)になっている。


 こうなったら、やや、気弱な長男よりも、明子が力を発揮することになる。


 吉田さんは、いつも、家族の強い味方であり、用心棒的な存在ではあった。


 謎のシェフも、そうとう危ない力を秘めているらしいが、そこらあたりを知っていたのは、弘子だけである。


 いや、王女様の専属ドクター、アムル博士もいたけれど。


 本宅内は、完全に封鎖された。


 外に出ることはできなくなっている。


 外部からも入れない。


 明子は、その異変に気が付いた。


 それで、本宅の事務室にいた昭夫に声をかけた。


 「あれ、おっかしいなあ。あきちゃん、なんだか、建物から出られないんだ。」


 「なんだい、どこからでも、出られるだろ。」


 昭夫は、事務室の窓を開けようとしたが、確かに接着したように開かない。


 外線電話を掛けてみようとしたが、これも通じない。


 本社の事務所に内線を入れたが、これまた通じないと来た。


 「あらら。たしかに、おかしいな。」


 そこに、不思議な声が降ってきた。


 『館内にいる、松村家の御兄妹のみなさま、全員、会議室にお集まりください。』


 「いまの、誰?」


 明子が尋ねた。


 「いやあ。え? 誰の声だろう。」


 『再度、申し上げます。全員、会議室にお集まりください。こちらは、雪子です。』


 「え~~~~~?」


 二人は、顔を見あわせたのである。 




     ************   ************



 アムル医師は、おかしな空間に閉じ込められた上に、勝手に壁中に配信されている、あの、あやしい映像に見入っていた。


 「あの子たち、何する積りかな。やはり、人を食べていたか。それは、おそらく間違いないとは思っていたけれどね。あれは、火星の悪い風習の生き残りだろうな。古い古い、生きた亡霊たち。でも、ついに反撃されたか。」


 アムル医師は、隠し持っていた、小さなコンピューターを開いてみた。


 「あらま、生きてるじゃありませんか。ラッキー。」


 医師は、自家製のデータを見ながら考えていた。


 「今回のごたごたは、みな、遥か昔の火星と金星の亡霊たちが引き起こしている。まだ正気だった道子さんからもらった資料と、現実の登場人物を引き合わせて見たら、いくらか関係性が判り易くなるわね。」


 アムル医師は、ポケットの中の『薬品入れ』を、ぐるぐると指で回しながら、つぶやいた。


 「でも、弘志クンは意外だったなあ。確かに、弘子と異常に共通性が高いとは思っていたが、彼が体のスペアだったのかあ。道子しか考えて無かったわ。」


 その、アムル医師のいる部屋の床から、ぶくぶくと湧き出してくるものがあった。


 「ふうん。来たか。」


 異常なまでに根性の座ったアムル医師である。


 「あなた、危害を加える積りなら、強力な消毒薬があるわよ。まともに話がしたいなら。聞いてあげましょう。」


 「先生。ぜひ、話を聞いてください。なんだか、記憶も帰って来たんです。」




     ************   ************








  






     ************ 幸子さんこーなー ************



 「やましんさん、だいじょび?」


 「まあ、なんとか。しかし、世の中厳しいなあ。ぼくには、避難してるしか手がないし。」


 「そうそう。役に立たないひとは、おとなしくしていることが、役に立つのよお。」


 「まあ、そうね。」


 「でも、やましんさん、あの途中でミアさんが朗読してるのは、何?」


 「いやあ、あそこだけのお話です。」


 「ふうん。ちょっとだけど、普通の文章も多少は書けるんじゃん。」


 「はあ・・・・そうですか。ありがとうございます。」


 「こんな、わけわかんないお話じゃなくて、普通の小説書いたらいかが?」


 「それがねえ。もう、めいっぱいなんだ。」


 「よく言うわよお。昼間中、寝てるくせにい。」


 「まあ、そうなんですがねえ。」


 「お饅頭を降らせましょうか。」


 「はあ・・・まあ、お好きなように・・・・」


 「こりゃあ、だめだわ。タマシイ、抜けてるわ。」




    ************   *************** 

























  








 










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