わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百十六回
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アニーさんは、ついに、語り始めた。
ただ、宇宙警部『2051』は、一切の自分を拘束しようとした『力』を無力化して、さっさと自分の母船に戻ってしまった。
アニーさんは、これだけは、なすすべがなかった。
ジャヌアン本体は、収監されたまま、話を聞くことになった。
取締官長は、なぜだかわからないが、自身が拘留されてしまっていたが、頭の中に、この中継を見せられていた。
海賊ジニーは、もとから、自分の船の部屋に籠ってしまっていたし、マオ・ドクは、逆に、さらになんとかお嬢がいる空間深くにまで入り込もうと余計な手を尽くしたが、逆にぶっちぎり号に戻されてしまい、そこから離れられなくなり、『ふてくされ』になって、デラベラリ先生と共に、艦長室に座り込んでいた。
「おれのような、お嬢にすべてをかけてきた男が、なんで、ここにいるんだ?」
「さて、でも、こうして中継が来ると言う事は、無視されてはいない証ですよ。船長。」
「はあ・・・まあ、な。でも、それじゃあ、プライドが立たないんだ。」
デラベラリ先生は、それ以上は語らなかった。
心中では、ヘレナがそれを理解していないはずはなく、でも、フィアンセがいるところに、老マオ・ドクを入れたくはなかったんだろうな、と、解釈していた。
ポプリスは、いつの間にか、怪しい個室に、ひとりで放り込まれていた。
「ふん。あたしに、何をやれってんだ。確かに、ビュリアは、『いとこ』、だったがね。あれ、旦那は、どうなってるのかな。」
ポプリスが、この後に及んで、ド・カイヤ集団のボスである、キラール公について、心配そうに言ったのは、アニーさんには、かなり意外だった。
キラール公もまた、訳の分からない空間に連れ込まれていた。
彼自身も、遥かな過去に存在した、あの火星の王室に、血がつながっている。
金星の生き残りたちも、同様だった。
空中都市の一般市民でさえ、アニーさんは、除外しなかったのだ。
もうひとり、重要な人物が拘束されていた。
それは、王国の、例のパブロ議員である。
北島と南島の軍事衝突にこぎつけたのは、彼にとっては出来過ぎだった。
しかし、まさか、第1王女を殺害する羽目になるとは思っていなかった。
確かに、究極の成果だったが、計算外だ。
おまけに、まったく、さらに計算外のどこかに、自分が拘束されてしまった。
それが、ヘレナの、あるいは、ルイーザの持つ本来の力ならば、自分などは、実にばかばかしい存在かもしれないと、ふと、始めて、思っていた。
こうした具合に、この2億年を超える、いささか常識はずれなスケールの事態に関わった人たちは、アニーさんが思いつく限りにおいて、この歴史的な中継を、無理やりにも、見せられるはめになっていた。
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紅バラ組と、超能力軍団も、同様だった。
まさに、戦いの真っただ中にあったが、それを継続させることは、もはや、出来なくなった。
頭の中に、中継が、無理やり入り込んできたのだから。
しかし、その他、一般の地球人には、アヤ姫さまが、説明役に立っていたのだ。
それは、世界中に中継されていた。
ヘレナが行えば、不感応者以外の、人類全員の頭の中に中継することだって可能だが、今の場合、そうした状況ではなかったのだ。
むしろ、テレビ中継の方が、十分役に立つ。
アニーさんは、あまりに多くの仕事を同時にこなしていたので、多少の手抜きが必要でもあった。
それだけのことだ。
つまり、アヤ姫様は、アニーさんが話そうとしていることから、あまりにプライバシーに関わりそうな事柄とか、関係者以外には、知ってほしくないようなことを、上手い具合に省いたような、お話を行ったのである。
それは、まあ、人間とうものは、あまりに多くの情報は、処理仕切れないし、自分に関係のない、あまり、面白くもない話は、聞きたくないだろうからでもある。
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アヤ姫様が、スタジオに姿を現した。
つまり、それは、この世で初めて現れた、公式な幽霊の姿、というべきものだ。
しかし、実際のところは、アヤ姫様は、『幽霊ではなかった』のである。
それは、実に簡単なことで、ビュリアや、女将さんや、番頭さんや、海賊さんたちのように、また、火星のダレルや、リリカのように、アヤ姫様は、不死化されていたからだ。
自殺したことは事実だが、その体を利用していた、女王ヘレナが、お気に入りの彼女を、そこで死なせるわけがなかったのだ。
アヤ姫様は、伝説になることが、求められただけだから。
ただ、こうした、細かいところまで、地球帝国の人民に知らせる必要があるだろうか。
『火星には、そうして、金星にも、かって、華々しい文明があったのです。』
アヤ姫さまは、そう、話を切り出した。
『まだ、我々、地球人は、誕生する前のことです。その文明は、長く栄えたのですが、小さな行き違いから、双方が戦争状態になり、いま、地球の皆さんがお持ちの、核兵器と同様の、さらに威力が強い惑星間ミサイルが飛び交いました。こうしたことは、いくらか、タルレジャ教の古い経典において、私共にも知らされてはおりましたが、それは、事実だったわけです。その事実の詳細は、わが王国の、『第1の巫女』だけが、詳しいいきさつを伝え、継承してきました。教母様ではなくて、なのです。』
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『なんで、アニーさんが、解説するのか、と、疑う方もあると思いますよ。でも、それはカンタんな、コトで、全てを知っているのは、まずは、アニーさんだけだからです。』
「ヘレナはどうなんだい?」
当然だと言う風に、シモンズが口を挟んだ。
『あのですね、シモンズさん、アニーさんが、ところどころで、質問時間を置きますから、そこまでは、がまんしてください。』
「むりだね。わすれちゃうから。」
『ぶ! シモンズさんが、忘れるはずがないです。もっか、地球上の人類で、最も頭がいいのは、シモンズさんですから。はっきり言って、助けが入っていない単独状態ならば、ですが、ヘレナさんやルイーザさんをも、超えています。』
「あんさ、あたまの良し悪しなんて、コンピューターが測れるものじゃないんだよ。地位が高ければ、その分、評価は高くなるものさ。まあ、逆の人も、いないことはないけどな。いくらか、妥協したまえ。まあ、努力はするから。」
『いいでしょう。まあ、このお話の作者さんなんか、もっとも、マズイ頭脳の人ですからね。なぜ、ヘレナさんではないのか。そういう意味でしょうか。』
「まあ、そうだね。」
『では。もっとも、核心を先に言います。判決の主文を先に言うようなもんですよ。まあ、そのほうが、判りやすいでしょう。ここにいるヘレナさんの中身本体は、真実のヘレナさんではないから。です。』
ヘレナが立ち上がった。
「なにを、ばかなお話ですわ。ありえないのに。あたくしが、真実の女王であることは。間違いがないのです。あとは、分身ばかり。その証拠を、提示する事も、可能ですわ。すべての分身を回収すれば。あるいは、ここに、真の都を、展開すれば。」
『はいはい。もちろん、そうです。あなたは、そう、信じてきた。長い間。でも、この太陽系が構成された時点において、存在していたあなた、ヘレナさん、ご自身が、本物の、女王様では、なかったのです。いや、この、宇宙が誕生した時点で、すでに存在していたあなた自身も、本物ではなかったのです。もう少し、先を言えば、この宇宙に、本物の女王、ヘレナさんが、いたことは、ありません。一回も、です。』
うんうん、と、シモンズは肯いた。
他の者は、とりあえず、発言する内容が思いつかないでいた。
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*************** おまけ ***************
『え~~~~~。じゃあ、幸子を、女神様にした女王様は、にせものお~~~?』
お饅頭を、おくち、一杯に詰め込みながら、幸子さんが、言いました。
『まあ、そうらしいですね。』
『うっそおお~~~~~~。やましんさん、それ、だまってたんですかああ~~~!!信じられない。』
『いやいやあ、だって、弘子さんがそう言うからでしよ。取材、つまり、ぼくの、インタヴューに対してですね。』
『いやああ~~~~、信じがたいわ。絶対に、裏があるわ。そう、次回には、裏が明らかになるのですね。幸子さんが、実は、女王様だったあ~~~~。とかです。』
『そりゃあ、ないね。』
『ええ~~~~~~~!! そうか、ルイーザ様がいました。あの方が、怪しい。』
『ふんふん。まあ、また次回に。』
『ちゃんと、出来てるんでしょうね?』
『いやああ。はははははははは。これから、考えます。ははははははははははあ~~~。もうすぐ、お正月だしな。』
『むむむむむ。《はいパ~~~お饅頭嵐い~~~~~~~~。》』
どかどかどか~~~~~~~~
『わああ~~~~~~~~。』
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