わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百ハ回
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「いやあ、ここに避難していて、よかったですね。」
王国のキャサリン日本大使は言った。
なんだかんだとあったのだけれど、彼女は『第1女王様』の覚えも目出度く、また、日本合衆国政府からも信頼が厚い。
当然、彼女は、ルイーザ総督の意志統制のもとにあったが、自分の意志が、どのくらい曲がっているのかは、まったく認識できない。
まあ、ルイーザは、ヘレナの意向もあり、あまり強烈な意志統制はしていなかった。
それでも、皇帝ヘネシーは、創立式典と同時に、さらに、王国民の忠誠心を高めるように、総督に命じてはいたのである。
「首相閣下には、ここから、秘かに新たに設置された極秘の宇宙空港にお連れします。そこは、松村家の所有地です。そこから、王国まで直行です。非常にあり得ないやりかたですが、このさい、仕方ないでしょう。」
「大使、正直言って、ぼくには、状況が呑み込めていない。あなた方は、事実を確認しやすい位置にあるでしょう。いったい、どうなってるの?」
「まず、日本合衆国中央政府は、『紅バラ組』に抑えられています。あなたの替え玉は、彼女たちに拘束されました。政府の要人は、彼女たちがいつも使う、強力な意志統制薬により、次々に洗脳されています。しかし、わりと、雑なやり方です。でも、それで、十分なことです。一方、防衛隊の幹部は、ミュータントたちに支配されています。彼らは、薬は使わない。直接、脳を支配します。ただし、われわれの調べた範囲では、比較的近距離にいる相手でないと、うまく支配できないらしいです。世界の主要国は、大方そう言う状況で、どっちか、または、両方、に、指導者が洗脳されています。非常に、ややこしい。しかし、もし、一堂に集まったら、どうなるのか? ミュータントの能力は、一堂に集まれば、最大限に効果を発するはずですから、最終的には、ミュータント側に、多くの人は付くのではないか?ただし、あなたのような不感応者は、おそらく、ミュータントには、感化させれないのではないか。しかし、おそらく、紅バラ組の使う薬は、もしかしたら、人間を不感応化させているのではないか、とも言われます。まあ、はっきりとは、わからない。でも、ルイーザ様の能力は、比較になりません。でも、ここらあたりは、未知の分野です。」
「はあ・・・・。で、あす、地球帝国の創立式典とな。まあ今回、火星軍の小型宇宙艇で、直前に移動させると言う、荒業に出てますからなあ。地球の反対側でも、30分もかからないとか。それで、我が国は、誰が出席する訳ですかな?」
「さて、そこですわ。紅バラ組は、あなたの替え玉を出席させる考えでしょう。一方、防衛軍は、その護衛に、ミュータント側に改造された人間を出すでしょう。各国、ごたごたです。でも、我が政府としては、あなたを差し替えるつもりはない。危険ですからね。でも、王国に行っては、いただきたいのです。会場で、なにが起こるのか、わかりませんが、おそらく、双方が、暴動を起こす考えです。紅バラ組は、帝国を支持しているようです。しかし、どうやら、厳格な独裁を主張しています。一方、ミュータントたちは、地球人の勝利を目指しています。創立式典は、破壊したい。ルイーザ様が、簡単に撃破できるのだろう、と、我々は考えております。」
「ふうん。でも、あなた方は、帝国側でしょう? それで、反対派は、どうするの?」
「まあ、そうです。我が王国は、皇帝陛下、総督閣下を送り出しておりまして、しかも、地球帝国の首都は、我が首都の中にあります。我々は、人間の犠牲は出したくない。それだけです。」
「ふうん・・・・でも、ぼくを匿ったのは、なぜですか?」
「総督閣下の、ご指示があったからです。」
「ほう。なりほど。なりほど。で?」
「あなたには、地球人が融和するための、非常に具合の良い、クッション材になってほしいのです。」
「なんですかな、それは。」
「総督閣下は、つまり、王国第2王女様は、あなたを、帝国初代大統領に据えたい。もちろん、当面は、国連総長が、首相になりますが、新憲法上、3年以内に、大統領を選出しますからね。」
「ぼくは、そういうのは、いやです。」
「まあ、時間をかけて、説得なさりたい、と、総督閣下は、仰せです。」
「ふうむ。ぼくは、式典には、出ないわけ?」
「出ますわ。だから、替え玉さんが。ただし、状況を見ながら考えます。」
「ふうん。ふうん。その替え玉さんて、誰?」
「さああて、分からないのです。ただ、総督閣下の忠実な部下と聞いております。」
「なあるほど。それなら、わかるな。そりゃあ、コピー人間て、やつだ。火星人の技術ですな。」
「あらま、ご存じなんですか?そのようなこと。」
「大使。ぼくはね、あなたがた王国の、国王とは、学友ですよ。しかも、打ち明けますが、『第1王女様』とは、何度も秘かに会ったし、さらに、まあ、『密約』もあますぞ。内容は、秘密ですよ。」
「ほう・・・・・そうなんですか? でも、ヘレナ様は、お亡くなりになりました。『密約』は、役に立たないでしょう。」
「ほう・・・・・・ルイーザさんが、引き継いでいるとしたら?」
「え。そうなんですか?」
「ははは。さああて。どうですかな。まあ、なにが起こるのか。興味深い。」
「まあ、他人事のように。困った、首相様ですこと。」
「ははははははははははは。」
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ジャヌアンは、手の打ちようがないと悟った。
この、あり得ない部屋から、脱出することは、どうしてもできない。
このままだと、未来はごちゃごちゃになる。
自分の分身が、何をやってるのかも、非常に心配だ。
女王の事だから、細部までコピ―したに違いない。
ただ、意識だけは、自分に忠実なようにしようとしただろう。
女王は、全てを、見抜くだろうか?
ジャヌアン自身は、ヘレナの妹である、未来のルイーザが、精魂込めて作り上げた傑作だ。
怪物ヘレナを、この宇宙から放逐するという、究極の目標を、達成、維持するためだ。
一度は、成功し、しかし、『池の女神』というあやふやな存在によって、反故にされた事実。
まずは、ヘレナを、皇帝にさせなければならない。
コピ―は、洗いざらいに情報を提供しただろうが・・・。
そこに潜む、ワナを、ヘレナは見つけたのか?
ジャヌアンは、ヘレナが殺された、という情報は、知らされないでいる。
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*************** おまけ ***************
幸子さん
『やましんさん、だいじょび?』
やましん
『いやあ、あまりね、よくないねぇ。』
幸子さん
『でも、ダメだダメだと言いながら、続いてるじゃん。』
やましん
『ああ。まあね。もうだめだ、もうだめだ。なんです。』
幸子さん
『だいじょぶ、いざとなったら、幸子にすべてをまかして、おわりにするのです。』
やましん
『ふん。まさかあ。・・・・・・・(いや、あり得るな。ふんふん。・・・・・)』




