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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百七回


  ************     ************



 シモンズは、ある晩、ひとりでシブヤのママの店に行った。


 事前に頼み込んで、個室に入れてもらった。


 この人は、いまだ、謎の人物、『ビュリア』さんの実の母親なんだという。


 シモンズは、だから、このビュリアについて、もっと、詳しく聞きたかったのだ。


 「でも、シモンズさん、申し訳ないけれど、ビュリアに関しては、あまり分からないのよねぇ。確かに実在した。それは本当。まあ、宗教的には、タルレジャ教の開祖様であり、あくまでも伝説的で神秘的な存在なんだけれどもね。そこが、まあ、母親にとっては、悩みの種なんだな。あるとき、ふと、いなくなった。それで、おしまい。火星での事績は、あなたが調べあげたことで、ほぼ間違いなくすべて。細かいことは、そりゃあ、いっぱいあるわよ。でも、それは、家族の中のことで、歴史には関係がない。もし、政治的なことや、『青い絆』のことならば、むしろ、リリカさんや、ダレルさんに聞くべきだね。まあ、それは、難しいかなあ。でもね、リリカさんは、会ってくれると思うよ。秘かにね。」


 「ええ。まあ、でもね、それも確かに、やりたいんですが、僕の立場は、火星人を追放すること。あ、あなたには、失礼かもしれない。平和的に、地球に定住している人は、考える余地があると思う。でも、だからね、リリカは、僕を拘束すると思うよ。へレナが定めた範囲を超えるからね。で、ヘレナと、ビュリアさんは、別人なんですね。女王が取りついてることは、別として。」


 「そう。人間的なこととしては、別人。弘子さんは、つまり、ヘレナさんは、17歳。そこは、事実だと思うな。」


 「おそるべき、17歳だな。」


 「あなたもね。」


 「ああ、そりゃあ、ども。ビュリアさんは、2億5千万年前に、地球に来た、しかも、信じがたいけど、いまの王国の場所に。そうして、タルレジャ教を創始した。あなたは、その前から、地球で温泉を経営してた。すごいな。で、王国の方は、『パル国王』が初代の国王になったが、ビュリアさんは、政治には関わらなかった。で、いつまで、ビュリアさんは、王国にいたの?」


 「パル君が、国王である間は、いた。パル国王は、約3000年間、王国に君臨した。長いようだけど、短い。そうして、第2代の国王は、パル君の娘がなった。王国の、初代女王。それ以来、王国は、女王の方が多くなった。」


 「うん。ぼくはね、最近になって、ようやく、おそらくは、正しいだろう、その系図を見つけだしたんだよ。伝説の方は、かなりはしょってることが分かった。二代国王、つまり、女王は、『ヘレナ』だよ。でも、女王には、『ヘレナ』が多い。これは、あのヘレナが、取りついていた証拠じゃないかしら。」


 「さああて。だれに、女王様が取りついていたのかなんて、誰にもわからない。女王様は、間接的に人間を操る事も簡単にできるんだ。」


 「うん。そうなんだろうね。でも、弘子さんには、へレナが取りついていたんだろう。ぼくには、そう言ったんだよ。」


 「ああ、あたしは、否定しないけど、でもね、ここだけの話だけれど、本当に女王様が乗り移っているのかどうかは、確かめようがない。誰にも、確認できない。困ったことに、自分が本物の女王だと思っていても、実は、そうじゃないことがあった。取りつかれてると思わない場合だってあるみたい。火星の女王様は、長く、自分が本物の女王だと思っていた、そういう状態になっていたと、ビュリアもそう、言ってたんだよ。」


 「ああ、そうだろうね。ヘレナの一番弟子のアニーさんでさえ、騙されていたことがあるらしい。もっとも、アニーさんは、否定するけどね。・・・・・・・おや、出て来ないな。」


 「アニーさんは、コンピューターだろう? 機械だよね。」


 「ああ、星を素材とした、コンピューターなんだと。ぼくには、そこまでのことは、出来ないけどね。で、・・・?」


 「そう。で、パル君が退位したあと、新女王の即位式があり、そのときは、ビュリアも出席したんだ。その夜。あたしのところに、ビュリアが来て、旅に出ると言った、それで、おしまい。あと、今の今まで、来たこともない。連絡もない。でも、なぜか、資金援助はずっと教会からしてもらってるよ。また、王国の保養施設の施設長だから、お給金ももらってる。断る理由はないし。」


 「そりゃあ、そうだよ。もらえばいいさ。そこから、ビュリアさんは、消えた?」


 「そう。消えた。すっぱりと。」


 「地球には、いなかった?」


 「わからない。まだ、そのころは、地球人類はいなかった。でも、女王ヘレナは、人類の発生と進化に関係したと言われるから、どこかに、女王の身体として、いたのかもしれないし、はるかな宇宙に出ていたのかも。でも、ようは、さっぱっり、わからない。本人に聞く方が早い。」


 「まあね。ヘレナも、うまい具合に、はぐらかすんだ。なぜだろう。パル君は、どうなったの?」


 「消えた。おそらく、『真の都』に入ったと思われるなあ。永遠のパラダイスよ。女王が認めた場合しか、入れない。一時的に見学した人は、いるらしいと聞きますけれどね。」


 「ふん。名前は、良く聞くし、資料にも現れるが、実態が見えないんだ。でもね、ぼくは、おおかた、想像がついてる。」


 「え?! それは、すごい。教えてください。」


 「ははは。まだ、秘密。でもね、もうすぐ、訪問可能になるよ。ヘレナが口を開けてびっくりするところが見えるね。ふははははははっは。」


 「はあ・・・・・・・・」



 「それと、これは、すごく、嫌な質問です。女王は、人間を食べた。これ、ほんと?」


 

 「ほんと。哀しいけどね。火星人の多くは、食べる側と、食べられる側に分割された。この話は、本当に、長い間、しなかったねぇ。火星人は、最後まで、その悪習から脱却できなかった。滅亡寸前になって、ブリューリが成敗され、この悪習は、終末になった。けれど・・・・」


 「けれど?」


 「これは、未確認。オカルト関係の研究者とかは、今でも言ってるけど、女王様は、人間を食料にするという噂は、ずっとある。ただ、食料というより、儀式として行うものだけれど。北島では、そのためにのみ、特別な環境で育てられる人間がいる。というのも、南島ではごくよくある、怪談話なんだ。」


 「そうなんだね。ぼくも、そこに、すごく興味があるんだなあ。『第1王女ヘレナ』は、人を食べるの?」


 「だから、確証なんかない。でも、噂はある。それだけなんだ。でも、その場所については、・・・これは、絶対に秘密、あたしが言ったなんてわかったら、どうなるかわからない。もっとも、もう、どうなってもいいけどねぇ。あたしは、死ねない。って、知ってるの?」


 「知っています。事実かどうかは、確証はないよ。でも、マヤコさんも、公衆の前で、そう、告白したよね。」


 「そうね。」


 「女将さんは、人間を、食べた?」


 「答えたくない。」


 「そうだね。わかりました。温泉のメニューには、あったの?」


 「ふう・・・・・。うん。特別メニューがね。あんた、残酷な子ね。」


 「すいません。ぼくは、地球を救いたいんです。化け物から。で、場所って?」


 「北島のさらに北には、小さな島がいくつもある。そこには、王女様しか入れない場所がたくさんあるの。そのうちのひとつは、特に地下深くにあり、そこで、秘密の儀式が行われてきた。2億年以上前から。あたしは、直接には関わらなかったけど、そこでは、ビュリアが、秘密の儀式をしていたらしい・・・・いえ、これ以上は、かんべん。」


 「ああ。すみません。その島は、この中のどれ?」


 シモンズは、自分専用の自慢のコンピューターを出して尋ねた。


 「ええと。・・・・たぶん、ここ。でも、ぜったに入れない。密航しようとしたら、かならず、捕まって、消える。」


 「消える・・・・?」


 「そう。消える、この世の中からは。」

 

 「そうなんだね。ねえ、女将さん。これって、おかしい話なんだよ。だって、地球の場合は、火星と違って、プレートがあって、それが陸地を乗せて動いてるんだ。王国が、二億年以上、そこにあって、地下の施設が維持されてるなんて、信じられないね。でも、女将さんが言うんだから、そうなんだろうね。」


「ふうん。」


 「それと、あと、聞きたいのが、踊り子ジャヌアンという人、それから、パル国王の母親である、『うな』というひとのことなんだ。」


 「いくらでも、ありそうね。分割しない?」


 「今日は、そこまでは、聞きたいんです。」


 「ほほほ。まあ、いいわよ。コーヒー、いかが?」


 「いいですね。ここのは、母国のより、うまい。」


 



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