わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百六回
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『ここは、つまり、どこ?』
正晴は、そう尋ねた。
・・・君、死んだはずじゃないのか?
まさか、歌の歌詞のようなことを、頭から尋ねる勇気が出なかったのだ。
正晴と弘子の力関係は、絶対的に、弘子・・・いや、ヘレナ王女が強い。
絶対君主時代の、支配者と、被支配者くらいの力関係だと言って構わない。
実際、北島では、それが事実上、まったく正しいのだから。
しかし、それでも、へレナは、極力、正晴に気を使っていたのだ。
今後、彼女を、弘子、と呼ぶことは、公式な場では厳禁とされる。
けれども、ふたりだけの場合は、『自由でいいわ、いや、今まで通りでよいのよ』、と、ヘレナは正晴に説明していた。
その部屋は、やはり、薄赤い色に染まっていた。
シモンズなら、これが女王へレナの色なんだと、教えるだろう。
正晴は、シモンズよりも、女王に関して、いや、王女様に関する情報でさえ、遥かに少なくしか与えられていない。
その部屋の中央には、大きなベッドがあった。
見たこともない位の大きさだ。
少々、どうなっても、落ちることはあるまい。
「正晴様、あたくしは、あなたのために、この衣装を選びました。まあ、伝統でもあるけれど。どう、あたくし、かわいい?」
「え・・・いや、もちろん。」
「奇麗かしら?」
「もちろん。奇麗です。」
「です、は、いや。いい?ここは、あなたが、主役なのよ。さあ、あなたの望むように。これこそが、婚約の儀の真の儀式だから。」
「うん。あのさあ・・・あ・・ヘレナさん・・・・」
「ばか。弘子でいい。ここは、二人以外は絶対に入れないお部屋だから。」
「はい・・。あの、ひゃあ、弘子さん・・・」
「ばか、『さん』、いらない。」
「ああ・あ・・・弘子。」
「なあに。正晴様。」
「あの。つまり、ぼくは、子供のころから、自分の役割を言い付けられてきた。だから、ぼくは、君のために、なんでもする。自分の命をかけて守る、はずだった。わかるかな。君が、殺せと言えば、だれだって、殺す覚悟だった。両親からも、ずっと、言われてきた。君に、食べられてこそ、ぼくの最高の栄光なんだ。王女の夫は、みな、早死にする。でも・・・」
「でも・・・なによ。ここまできていて、じらさないで。早く。」
「うん。あの。。。つまりね。ぼくは、君のためになら、何でもするよ。ただ、知りたいんだ。真実を。」
「ううん・・・いいわ。じゃあ、大切なことを、やってくれたら。教えてあげるわ。」
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「あのね、武さん。」
「なんだよ。」
こちらの二人は、部屋の中で、あおむけにひっくり返っていた。
「武さんは、なんでも、そつなくこなす。いまもね。でも、正晴様は、そうじゃない。」
「まあ、あいつは、ぶきっちょだ。しかし、くそ度胸は、ぼくよりある。そうだろう?」
武は、あちこちを、道子に噛まれていた。
「そう。もちろん。しかも、お姉さまには、忠実よね。わんちゃんみたいね。」
「ぼくは、忠実じゃない?」
「役割が違う。武様は、最後まで敵と戦う。先頭に立って。正晴様は、お姉さまを、ひたすら、守る。」
「どこが違う? 君は、実は弘子よりも、かなり強い。隠してるけど。おそらく、ほんとに一騎打ちしたら、弘子は、一瞬で、君に叩きのめされる、たぶん。」
「じゃあ、さあ、もう一回、試す? ね?」
「痛いんだ。あのね、道子さん。」
「なに?」
「弘子は、何なんだ? あれは、本物? 正晴が文句言う力はないだろうさ。でも、あいつが、気になる。これは、正しい事が行われているのか?」
「まやかしだと?」
「そこまで、言いたくはないよ。でも、弘子は死んだ。君は、その通りだと言う。じゃあ、あれは、誰? あたりまえの質問だろ?」
「武様は、あたくしの独立性は、確信している? お姉さまの、ロボットだと、思う? あたくしの話のすべては、お姉さまに筒抜けになると。そう、思う?」
「どっちなのかい? たまには、君から真実を話そうよ。」
「なるほど。いいわよ。もう一回。キス・・・・」
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ビュリアは、いま、王宮で何が起こっているか、綿密にチェックしている。
もっとも、あの二人が、あのビュリア自身が慣れ親しんだ部屋に入ったあとは、さすがに覗けない。
それは、最低限のマナーだろう。
しかし、王宮は広大だ。
見るべき場所は、たくさんある。
また、今、世界の各地では、『紅バラ』や、『ミュータント』たちが、各国政府を襲っている。
明日からは、地球帝国の組織のひとつになる、国々だ。
ただし、この王国だけは、少し違う。
襲っているのは、『池の女神様』たちだ。
彼女たちは、実は、ヘレナの精鋭部隊だ。
その、リーダーは、もちろん、アヤ姫である。
王国には、まったく、未だ隠されているが、地球帝国の首都として、独自の役割がある。
それは、地球文明の最後を看取ることである。
女王ヘレナが、そう、決めた。
ヘレナは、地球の最後を見届けることになる。
そのこと自体は、ヘレナが決めた、というよりは、『地球自身』が、そのように決めたのだ。
『地球自身』は、第1タワー内に、保護されている。
ルイーザも、ヘネシーも、そうした自覚はない。
また、『地球自身』は、かならずしも、お利口ではない。
ママが、『金星自身』であったことを考えれば、それは、それほど、突飛な話ではない。
地球自身が、もうろくしたって、おかしくはない。
ビュリアは、そこらあたりの事情は、おおかた知り尽くしていた。
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シモンズは、そうしたことも、すでに、独自に推測していた。
『金星自身』は、金星のママ。
『火星自身』は、おそらく、ヘレナそのものだろう。
このふたつは、抜け殻だ。
『地球自身』は、その流れの上にある。
それは、誰か?
シモンズは、それは、彼しかいないと、判断していた。
タルレジャ王国、最初の国王。
不死の存在には違いないが、火星のママの話からしても、どうやら、歳は取るらしい。
長い年月の中で、いささか、認知症的な状態になるのは、それほど、おかしな話しでは、ないのだろう。
まあ、少し、早いのかもしれないが。
しかし、ヘレナと、『地球自身』は、どういう、力関係になっているんだろう?
そこが、わからない。
普通なら、ヘレナが圧倒的に強者であるはずだ。
なにかが、おかしいな。
そこを知るのは、ヘレナは自身は、もちろんとして、あと、だれが、知っているのだろうか?
シモンズが思うところ、あと、みっつ、いや、よっつ、大きなピースが足りていない。
ひとつは、その初代国王。
つまり、パル国王。と呼ばれた存在。
そうして、その、母だ。
あと、ビューナスだ。
ギンザのママは、現在、彼らがどうなっているのかは、知らないと明言した。
マヤコも、同様だった。
知ってるかもしれない、洋子さんは、会ってもくれない。
へレナも、アニーさんも、つれない回答ばかりだったが、そこに思い至ってからは、返事さえしない。
アニーさんは、協力を約束したのにも、関わらずだ。
つまり、アニーさんには、何かの変化があったのだろう。
シモンズは、ついに、思い切った、単独行動に出た。
解放状態の『弘子さん』からもらった、あの機械を、活用して。
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・・・・おまけ・・・
『やましんさん、コメント、いただけないですね。』
幸子さんです。
『いやあ、やましんは、気が小さいから、厳しく言われると、すぐ、隠れてしまうからですね。落ち込むと、再起不能かも。』
『なに、いってますか。やましんさん、ここが、勝負だ!闘い抜くなら、徹底抗戦から。本出すなんて、ほんとに、これで考えてるなら、1億円は、かかる。途中には、おにや、怪物が張っている。やましんを、狙ってね。命かけないと、ダメですよ。』
『それは。あなた、一億なんか、ない。100 万もむり。』
『はい〰️〰️〰️〰️〰️❗もう、魑魅魍魎の世界ですよ。お金は付いてくる。ただ、現状、やましんさんは、評価が、ひくいからなあ。幸子、心配。女王さまの、奇跡が、起こればよいけれどなあ。』
『むり。やましんは、あらゆる、よいことからは、見放される。やましんは、もと、上司に呪われてる。亡くなったふたりはもちろん、いや、それ以上かも。』
『じゃ、偉い人を誉めなさいよ。ね。バンバン、誉め殺し、攻撃。』
『だから、ベートーベン先生を、褒めておりますが。』
『あああ、つまり、いま、強い人を、誉めなさいな。』
『はあ、努力はしましが、すでに、時、遅し。もう、あまり、知ってるひとが、いない。』
『たのみますよ。幸子の将来の世界が変わりますからね。はらはらだあ…………….うんじゃあまいやら、うんじゃあまいやら、なんのことやら、うんじゃあまいやらあ。めんくいにこ〰️〰️〰️〰️✨やましんに、たまには、幸も来てください。昔の偉いかたは、反則ですわ。あら、失礼。』
『やましんにも、落ち度はあったが、上司さまもかなり、意地悪した。仲直りしなければ。』
『そうそう。池の女神さま総出で、応援いたしましょう。』
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