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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二百三回

************   ************



 正晴と武は、二人で神殿に向かった。


 それぞれに、一人ずつ、女官が付いてきている。


 警備の兵士のような存在は、まったくいなかった。


 もっとも、現在、外部から王宮のここに、入り込むことは、まず無理だったのだが。


 

 新郎と新婦が出会うのは、『婚約の儀』が行われる、そのためにだけ存在する、『暁の宮殿』に続くエントランス・ホールに入ってからだ。


 この宮殿が使われたのは、アヤ姫の婚約の儀、以来のことだという。


 それ以外は、この特別に神聖な場所が使われる要件に該当しなかったという。


 たとえば、『三王女』の両親は、王室から離れていた時代、トョウキョウで知り合って、結婚式を行った。


 この、母は、不可思議な歴史を秘めた、マツムラ家の出身だった。


 父は、当時のタルレジャ王国国王の末子で、将来王家を継ぐ可能性はまずなかったので、気楽にかの国で学者生活を送っていた。


 大学の同級生には、杖出首相などがいた。


 それが、度重なる不幸の末、国王にならざるを得なくなった。


 それは、公表されている事実であって、特に奇怪なことではない。


 それでも、王室研究家の中でも、正統派だが、オカルト志向があるとされる、ブルン教授は、非常に慎重にではあるが、『それは、陰謀が見え隠れしてるようにも見えるのだ。』と、述べていた。


 ブルン氏は、かつて、火星ではブル博士と呼ばれた人物である。


 ただし、それは2億年以上前の話しで、もちろん、誰も信じない。


 マヤコがシブヤに出現して、あえて、事実を公表したにもかかわらず、実際のところは、あまり、注目もされなかった。


 『不死化』なんて、絶対に嫌だと、教授は言っていたが、最終的にはヘレナの技に嵌められた格好になった。


 だから、彼は、女将さんやマヤコ同様に、この世には、あるべきではない存在である。


 いつか、すべてぶちまけて、宇宙に旅だとうとは、思ってきた。


 マヤコが、先にやったと聞いた時は、くそ、と、思ったが、まったく、効果がなかったらしい。


 おそらくは、ヘレナが、・・・当時は、ビュリアだったが、・・・が、地球人の意識に介入してるに違いない。


 だから、次は、自分の番だし、どうやら、その時期が近くになってきたと、ブルン氏は、このところの状況を眺めながら、思うのだ。


 彼は、こうした流れは、当然、すべて、ヘレナの意図に基ずくものだろうと考えていた。


 ヘレナは、筋書きを作り、地球人を、そのように動かしている。


 もっとも、ヘレナは、戦争は嫌だったことは、知っている。


 人類がしばしば戦争を引き起こすのを、ヘレナが、苦々しくも思いながら、地球人類の自主性と発展のためだと、あえて黙認していたことも、まあ、分かっている。


 話がこじれたのは、いや、その、ある時期が来たのは、地球人類が、核兵器を開発してからだろう。


 火星と金星の文明を破壊したのは、核兵器だけではないが、その手助けをしたことは、確かだから。


 いま、この、『婚約の儀』が進む中で、教授は特別な計らいで、タルレジャ教会の奥深くに入っていた。


 計らいをしたのは、もちろん、謎の存在『教母様』である。


 

 

 あっさり、女将さんと番頭さんに、その正体を明かしたビュリアは、『旧温泉地球』の、スイートルームに宿泊することになった。




 そうして、宮殿のエントランスには、男子二人が、先に入った。


 これは、そうした約束ごとだからである。


 

 しばらく待つうちに、大変官能的な衣装の、ルイーザが入場した。


 それで、地球帝国総督にして、ダルレジャ王国第2王女、ルイーザは、婚約者の武の横に並んだ。




 『なぜ、自分は、ここにいるのだろうか?』


 正晴は、当たり前に進行するらしき、この儀式が、いったい、なにを意味するのか、判断に困っていた。


 ヘレナは、いや、慣れ親しんだ呼び方ならば、弘子は死んだ。


 道子が、ルイーザが、そう言うのだから、間違いはないはずだろう。


 

 しかし、それは、やって来た。


 ルイーザと、瓜二つ、というより、そのもの、その姿。


 言葉は、発しないように、と、きつく言われている。


 でも、これは、だって、ヘレナそのものだ。


 正晴は、この双子を、瞬時に見分けることが可能な、数少ない人間だ。


 それは、つまり、弘子以外には、あり得なかった。


 死んだんじゃないのか?



 それから、『化け物』という、言葉が、不謹慎かもしれないが、彼の脳裏に、浮かび上がった。


 実際、正晴と武の、精神統制は、今は、行われていなかった。


 ここにきて、二人の精神は、まだ、自由なままだった。



 『おまたせ。正晴さま。ようこそ。ここに。』


 それは、正晴の意識に、強烈に突き刺さった。


 『うそだろ。アンドロイド? 偽物? コピー人間?』


 正晴の意識は、シモンズや、弘志などからの情報で、ぐるぐると渦巻いていた。


 『まあ、うれしいわ。ありがとう。正晴さま。化け物だと思ってくださって。でも、あたくしは、弘子よ。正真正銘、弘子なの。あなたの、弘子なのよ。さあ、参りましょう。』


 もはや、正晴には、もちろん、武にも、止めることはできない。


 そのような力がある者は、おそらくは、いないだろう。



 百年以上、開いたことがない、宮殿の正面が開いた。


 薄赤い、いささか、不気味な光が漏れてきた。


 その部屋、宮殿、


 それは、かつて、見たことがある者ならば、気が付いただろう。


 ヘレナと、彼女に招かれた者だけが、入る事が出来る、女王の『巣』であり、この世の中には、無い場所である。


 四人は、吸い込まれたように、中に入り、分厚い扉は、閉められた。




    ***************   ***************








 




 









 









 












 







 















 



 









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