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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第二十章 


 壇上に現れたのは、確かにマヤコに違いなかった。

 彼女は2憶5千万年前において、始めは「不死化」を拒否していた。

 しかし、『カタクリニウク事件』や、『光人間』化したウナのことを考え抜いた結果、「リリカ」の不死化処理を受けたのだった。

 しかし、王国の閣僚から退いた後は、ウナともども、いずこへともなく消えて行き、その行方は解っていなかった。

 もっとも、ヘレナがあえて探さなかったと言った方が正しいのだろうけれど。

 「光人間」になったのだろうという見方が多かったのだが、誰も確認をしてはいなかったのだ。



 お面の顔自体が、もう昔のマヤコだったのだ。

 けれども、今の時代にマヤコの素顔を知っている者は、ごく少数にすぎない。


 彼女は、ところが、ヘレナ以外の聴衆には、まったく意味不明の言葉で話し始めた。

 それは、先ほど首相が乗った車の中で「秘書が」話していた、タルレジャ王国のごく一部で使われている言葉に、やや似ていたのだが、会場内の人々にはまったく理解不能な言語だった。

 聴衆は、相当困惑していた。

 同時通訳もなさそうだから。

 その状態で、それでも三分くらい(結構長い時間だが)話したあと、マヤコはこの国の言葉に切り替えた。


「みなさん、こんばんは。わたしは、マヤコと言います。「マ・ヤ・コ」というと、このお国の皆様には、親しみ深い名前のようなのですが、実はこれは「金星」の名前なのです。つまりわたしは、「金星人」だという事です。」

「ほう・・・・・」

 という、ちょっとあざけるような感じの反応があっちこっちで上がった。

「まあ、信じていただけるとは、わたしも、思っていませんけれどね。」

 こんどは、軽い笑い声が起こった。

「お話し中すみません。」

 一人の女性が声を上げた。

「さっきの言葉は、じゃあ、どこの言葉ですか?」

「金星標準語、だった、言葉です。」

「今は?」

「わたしの知っている限り、そのままを使ってる人は、地球上にはいません。金星文明は、大昔に消滅しましたから。ただし、その系統の言葉を使っている人は、タルレジャ王国にごく少数います。」

 弘子は(ヘレナは)、この質問者の女性を知っていた。

 タルレジャ語の研究家として、名を知られる気鋭の学者さんだ。


「みなさん、これは大変興味深い事です。私は、「コータ・ロウ大学」でタルレジャ語の講師をしておりますが、この方がおっしゃるように、タルレジャ王国のごく一部で使われている言葉に、かなり共通する言葉でした。その言語は、タルレジャ語とは全く違うもので、また、タルレジャ語もそうなのですが、地球上には類似の言語がなく、なぜその地域でだけで使われているのか、いまだに謎のままでした。しかし、火星人の言語を聞くと、タルレジャ語にかなり似ています。是非、続きを聞いてみたいと思います。大変失礼しました。」


 マヤコが、話しを再開した。

「わたしは、学者さんでも無いし、何かの専門家じゃないんです。なので、回りくどいお話は出来ません。今日は珍しい映像を持ってきました。最近の地球では、大概の不思議な映像を、素人さんでも作れるようになっています。だから、これもまた、信じていただけるかどうかは分かりません。まず、この映像です。」


 巨大な(と思われる)都市の映像が浮かび上がった。

 とてもはっきりした映像だ。

 ただし、都市自体が空中に浮いているように見える。

「金星にも、大昔には海があった時代が少しだけあったそうですが、わたしは知りません。わたしが生まれて育ったのは、この「空中都市」でした。これは「C.G」とかっていうものじゃなくて、実写なんですよ。別の「空中都市」から写したものなんです。」

「ほー・・・・」

 聴衆の反応は、今度は、あまりあざけるような感じではなかった。

 聴衆が映像に見入っていた。

 とても自然な映像で、人工感が全くない。


 考えてみれば、いま、地球上には、すでに『火星人』が現れているのだ。

 『金星人』が現れたって、おかしくはないじゃないか。


 映像は、やがて、ずんずん後ろに引いて行く。すると、多くの空中都市が視野に入り込んできた。

 撮影しているのは、プロではない。素人撮影の映像だ。

「このような感じで、金星の空中都市は、たくさんありました。」


 画面の中に、大きな『飛行船』が飛んでゆく。

 宇宙に向かっているような感じがする船もいた。

 小型の、乗用車の様なものが沢山行き来している。

 どうやら、特定の飛行「コース」を走っているらしいが、道路はない。


 画面がぐるっと回って、建物の側に向いた。

 そこに映っていたのは、お面のない「マヤコ」その人だった。

 つまり、ここは自撮りしているということらしい。


彼女はそこで、お面を外した。

 いや、確かに少し、いや、ちょっと大分、歳は重ねたように見えるが、しかしどう見ても同じ人物だ。

 地球の人と、大きくは違わないような感じがするが・・・

「地球人と金星人は、外見はあまり変わりません。内臓の構成や、血液の成分とかは、違うんだそうですけど、素人にはよくはわかりません。それは専門家に聞いてくださいね。火星人さんは、本当は見た目がもっと違いますが、地球人さんの前では、地球人によく似た顔に変態しています。金星人の前でもそうでした。火星人さんたちは、おめかしがとても上手で、角や牙も、出したりひっこめたりできるのですよ。ほら、今度映る人、はい、ここ、これが素顔の火星人さんです。」

「きゃー!」という声が上がった。


『まあ無理もないか。鬼より怖い『火星人』ですもの。でも、悲鳴を上げられたら、やはり悲しいわ。地球人だって、見慣れたら、問題ないんだけどなあ。わたくしなんか、最高に、絶世の『火星美人』だったわ。でも、やはり、ちょっと心理操作した方が良いかなあ。地球人には、まだきついのかも。』

 ヘレナはそう考えていた。


 しかし、マヤコが、同じことを言い出した。

「まあ、これも、わたしみたいに、見慣れていたら、なんていう事はありません。そんなものなんですよ。地球のお魚とかでも、怖そうな顔のお魚がいますよね。」


『こらこら、お魚と一緒にするなあ・・・・・』


「はい、では、これから、この若き日のわたくしは、空中自動車に乗って、お隣の「都市」に移動します。

そこには、有名な遊園地がありました・・・」


 **********   **********


「運転手さん、どこに向かってるの?」

 杖出首相が尋ねた。

「ああ、タルレジャ教の東京本部に行くように言われてます。もう、途中下車はしないでくださいね。ばっちりロックはしました。携帯も使えません、悪しからず。運転席との間も、遮断してますんで、ご心配なくです。」

「いやいや、心配なのはこっちだから。」

「あはははは、そりゃそうだな。でもね、首相さん、あたしはこれでも、第一王女様お気に入りの運転手さんですぜ。まかしてください。時々お忍びをしますんですわ。あの方はね。まあ、並の女子じゃあ、ないからねえ。」

「どこに行くって?時々?」

「それは、秘密です。」

「はあ、なるほど。でも、ぼくもここまでやってるんだから、何か教えてください。彼女の秘密を。」

「そうですねえ、じゃあ、内緒で教えましょうか。言っちゃダメですぜ。」

「ああ、約束する。」

「まあ、首相さんだからねぇ。たぶん嘘はつかないでしょうぜ。あのね、第一王女様は、実は、昔で言うところの「スケバン王女様」なんですねぇ、いまはもう、この言葉は『死語』ですがね、他によい表現がないからなあ。」

「あの、姿のまま?」

「まあ、そこはなんですなあ、ぼくも見たことないんです。でもね、どうやら、変身するらしいですぜ。」

 最後の方は、運転手さんは、わざと声を、『ひそめて』言った。

「そのお姿は、誰もまともに見たことがないとか・・・・。」

「おいおい、乗る時はどうなの?」

「お面を被ってますぜ。まるで鬼のような・・・・そうして、特別な場所からお乗りになる。」

「はあ???」

「ふふふふ。まあ、ここまでですなあ。もう着きますから。ほら、賓客は裏側から地下に入りますんでね。ほらよ。」

「わわわ。急カーブだ。」

「まあね、ちょっとだけです。地下に入りますよお。」

 タクシーは、かなり深い地下に入って行く感じだ。

「おいおい、大丈夫かい?」

 しかし、地下道自体は、非常に明るく、壁面も美しい。

 なんだか、王国のどこかで見たのと同じような感じがする。

「はい、到着。お代は頂いてますんで、どうぞ。」

 首相の左側のドアが開いた。


 豪華な地下玄関には、三人が立っていた。

 背の高い男性・・・『これは運転手兼なんでも係』の吉田さん。

 それから、特殊警備の達人という男性。

 第一王女と、素手でなら結構互角に戦えるらしい。

 そうして、赤と黄色の長いパンタロン風のズボンに、裸足のままの足元。

 第一王女様その人だ。


 しかし、それは・・・・第二王女様だったのである。


 **********   **********



 








 






 






























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