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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百九十四回


  ************   ************



 大奉贄典は、弟子に伝えた。


 「たったいま、方針が伝えらたのである。地上では、『第1王女』さまの、葬儀が行われるが、それは、『婚約の儀』と、『帝国成立式典』の、後になると。したがって、ここでの儀式は、予定通りである。」


 「そうれは、慶事が先、という、王室と教会の基本からですか。」


 「まあ、そうであろう。ただ、我々は、決められたことを、実行すればよい。では、これより、正式に、式典の準備に入る。『聖なる捧げ人』の、身を清める。いざ。」


 「はい。いや、あの、師匠、失礼ながら、人数は、ひとり、減るのですね。」


 「いいや、変更は一切なしと伝えられた。したがって、そこは、気にしなくてよい。なにか、問題があるか?」


 「いえ。ありません。」


 「よろしい。」


 



       ********   ********




 アニーさんからの返事はなかったが、武と正晴の元には、これまで見たことがない、なんとも美しい民族衣装を着けた、女性の使者がやって来た。


 この王国は、古来、女性上位の社会である。


 大事な出来事の使者は、そもそも、女官が務めるのが、恒例である。


 ふたりの知識の中では、こうした着衣の使者は、『タルレジャ教会』の、たいへん高位の使者で、『教母さま』直属の存在であり、めったに目にすることはないという者である。


 国王直属の使者は、基本的には金色が主体の服であるのに対して、こちらは、赤や橙色が主体になっているのが特徴である。


 もっとも、非常に暑いお国柄であるがゆえに、日本の十二単のような厚着ではない。


 あちらこちらに、開いている部分があって、風通しは良さそうだ。


 「おふたりに、申し上げます。わたくしは、教母さまの使者です。さまざまな困難が降りかかっておりますが、一切の予定は、変更されることなく行うことという、天からのご指示がおりました。ゆえに、おふたりの『婚約の儀』も、そのまま行われます。ご準備ください。」


 正晴が反応した。


 「あの、しゃべってよいのですか?」


 使者は、少し会釈しながら丁寧に答えたが、その姿は、天使のようにさえ見えた。


 「もちろんです。」


 「あの・・・弘子は、いや。ヘレナさまは、お亡くなりになったという、情報を、聞いていますが。」


 「はい。しかし、ヘレナ様は不滅なのです。おわかりですか?」


 「そりゃあ・・・・そうだと、思いますが。しかし、人間は死んだら、蘇らない。」


 「はい。もちろんそうです。しかし、それでも、ヘレナ様は、不滅なのです。では、このあと、お二人の準備をする係が参ります。」


 使者は、すこし、そのまま、後ろの方向に、後ずさりしたあと、ドア付近でくるっと向きを変えて、出て行った。


 羽はなかった。


 「なんだ、そりゃ。」


 「う~~~ん。儀式だけなら、なんとでもなるだろうさ。しかし、おまえ、分かってるよな。それだけで済まないのが、普通だ。いやというほど、言われたろ?」


 「まあ、な。初夜の事か。」


 「それだ。相手なしで、どうするんだい?」


 「ぼくに聞くな。」


 「あ、ああ、そうだよな。じゃ、誰に聞く?」


 「それも、ぼくに、聞くな。」



   ************   ************



 弘志は、アニーさんに頼んで、サンドウィッチをいただいていた。


 「腹が減っては、いくさにならないからな。またく、これじゃあ、家にも帰れないか。それにしてもだ、雪ちゃんが、化け物であるとしても、誰の味方か、敵か、これでは、わからない。アニーさん、解説が必要なんだよ。」


 『あい。お食事が済んだら、解説者が現れる予定です。はい。』


 「解説者って、だれ?」


 『すべてを、一番よく知ってる方です。まあ、お楽しみに。』


 「う~~~~ん。この期に及んで、だれがいる? 洋子姉さまかい?」


 『いいとこ言いますな。たしかに、洋子さんは、大きな要なんですがね。ボスではない。しかも、現在、珍しくお留守です。』


 「え~~~~? 洋子姉さまが、お出かけかい? 滅多に聞かないけど。」


 『まあ、お忍びで外出することは、まま、あったのです。みなさんが、知らないだけです。』


 「社会が、混乱しない?」


 『お~~~、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ!』


 「弘子姉さんの、マネするな。ズキッと来るじゃないか。」


 『そりゃあ、失礼。』


 「いいよ。もう食べ終わるから。」


 最後の大きな固まりを、口の中にほおばりながら、彼は言った。


 『急がなくて、いいですよ。コーシーでも、いかが?』


 「オレンジジュースで、いい。」


 『おやまあ、おこちゃまですなあ。』


 「わるいか。おこちゃまだよ。立派な。」


 『おお。お~~ホ、ホ、ホ、ホ、ホ、ホ!』


 「~~~ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ!」


 アニーの声は、途中から、入れ替わった。


 それは、明らかに、弘子か、道子かのどちらかである。


 弘志は、錯覚した。


 彼は、この二人の区別が、声だけでも、すっきりと可能な、数少ない存在である。


 弘志の意志は、これが、弘子だと判断していた。


 しかし、弘子はもう、いないはずだ。


 ならば、道子しかないではないか。


 そうして・・・


 入口付近には、まごうことなく、弘子が立っていた。


 「うそだろ。弘子姉さま?」


 「あたり!」


 「びえ~~~~~。」


 弘志は、大好きな姉に、抱きついた。


 

  ***************   ***************





















   ************ ふろく ************



 「やましんさん、体調は、いかが?」


 幸子さんが、池から帰って来ていた。


 いや、やってきていたのです。


 「いやいやあ、ちょっと、お客様がいつもより多くて。斧が、もう、なくなっちゃったわ。仕入れるまで、休業。」


 「あいかわらず、あれ、やってるんですかあ?」


 「もちろん、あれが、幸子の主務だもの。」


 「そりゃ、どうも。」


 「ところが、このごろ、お願いは多いけど、お饅頭の奉納が少なくて。たてかん、書き換えなきゃ。贈答用ひと箱じゃなくて、箱入り、ふた箱にしようっと。質より、数。」


 「はあ。不景気ですな。」


 「まったくよ。性質・正体不明な、病気が流行って、池の女神様も、どこも、大幅、収入ダウンだもの。やましんさん、だいじようび?あ、やましんさんは、なに書いても、収入ゼロだもんね。」


 「まあ、あまちゅあでしから。それに、80%閉じこもりですから。でも、病院は良く行くし、お買い物もいくらかはしなくちゃね。まだまだ、油断できないですよ。ここにきて、マスクが売りに出され始めたけど、品質がいまいちな感じもしなくもない    。政府プロデユースの、高級マスクは、姿も形もないし。これで、相手が、さらに、パワー・アップとかしたら、大変だしなあ。心配だな。」


 「ふうん・・・・そうねえ、この際、お饅頭食べて、元気出して! おまんじゅうあらしい~~~!!」


 「あああ、お饅頭は、甘いから、食べちゃダメなんだから。ぶえ~~~~~~~。」




 ***************   ***************




 












 



 

















 




 

















 

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