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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百九十二回


  ************   ************



 『やれやれ、危なかったですね。』


 『アニーさん! これは、つまり、アニーさんが、ぼくを、救出してくれたと考えていいのかな。』


 弘志は、目をぱちくりしながら言った。



 広い広い、応接室のようだ。


 全体的に白が基調になっている、さわやかな部屋だ。


 空いている、大きなテラスからは、静かな風が入って来る。


 松村の家の応接室でも、ここまで広くはない。


 しかし、王国の王宮ならば、もちろん、この倍以上くらいは、いや、もっと、ある。



 『救出という言葉が正しいのかどうかは50%程度の正確性ですが、あの次元から、こちらに移転させたことは事実です。』


 『はあ、また、わからないことを。ここは、どこなんだい?』




 その部屋は、前に弘子や正晴たちが閉じ込められた部屋である。


 居場所が特定できたので、その後は、アニーが押収してしまっていた。




 『じゃあ、ここは、いわゆる異世界とか、そういう、いま、流行りの場所かい?』


 『まあ、そうとも言えますが、他には誰もいない世界です。何もない世界。何でもない世界。一切が無意味な世界です。』


 『無意味と?』


 『そうです。ここで起こるあらゆることは、あなた方の空間には、なんの影響も与えない。与えられることもない。もちろん、アニーさんが関与したら、少し変わってきます。』


 『食料は?』


 『自給自足が可能です。最初は、アニーさんも、わからなかったんですよ。しかし、その後、よく確認しました。じっつに、よくできています。もち、外部から仕入れることも、まあ、可能ですがね。』


 『誰が作ったの?』


 『ダレルさん。ということになってますがねぇ。アニーさんが思うに、ちょっと無理なんじゃないか?誰かが、後ろにいた。そう思います。』


 『だれ?』


 『さて、そこだ。そこが、問題です。』


 『うん。話がこじれてるんだよなあ。雪ちゃんのことは、すごおく、ショックなんだ。いまだに、あれが何だったのかが理解できないよ。雪ちゃんが、化け物? まさか。』


 『そうでしょうな。まあ、しかし、今まででも、十分、化け物ですがね。』


 『ああ、・・・・ううん・・・まあ、とにかく、整理が必要だ。ここは、安全?』


 『そう思います。アニーさんが、すでに場所を移転させてしまったので、ほかには誰も探せないでしょう。』


 『じゃあ、最初から、考え直してみよう。ああ・・・・・でも、お腹空いたな。』


 『そうでしょう。それが、話しの定番だ。何が食べたいですか? びふてき? らーめん? フランス料理のふるこーし? 海鮮丼?』


 『まったく、でたらめですな。おいしい、ラーメンが良いなあ。ライス、御漬物付き。』


 『あいよ。すぐできます。まあ、王子様としては、実に質素で結構です。ヘレナさんだったら、まずはすぐに、高級ワインとか、言いだすし。ここのシェフは、アンドロイドです。すでに、コントロールは、はく奪しました。自由の身です。』


 『そこだよ、アニーさん。人間性というものが、ものすごく侵されているように思うんだ。自分が自分じゃなくなったりするだろ。ぼくも、自分自身がそうだからわかる。女の子になると、なんだか、すっかり人格が変わるんだ。確かに、誰かに操られてるような気がしたことも事実だし。それは、弘子姉さまがやってると思っていたけど・・・・でも・・・』


 『まあ、ラーメン頂いてからにしましょう。』


 『ああ、そうだね。』



   **********   **********



 「連中、ちょっと腰砕けした様です。いったん後退してゆきます。金星内からもいなくなりましたからね。」


 ソーが報告した。


 「ああ。まあ、そこは、アブラシオさんが、やはり強いか。捕獲したんだろう、会いに行こうよ。」


 「受け入れますかねぇ。それに、第一、危険ですよ。ぼくらが捕獲されるんじゃないですか。」


 「ああ、そうか。ははは。確かにね。誰が敵なんだか。わからなくなったな。」


 「ヘレナさん、つまり、現在のヘレナさんですよ。殺害されたと。地球側にも確認しましたが、事実だとされています。タルレジャ王国も、殺害を確認しました。しかし、王宮は、まだ正式にコメントしていないです。」


 「ふうん・・・・怪しいなあ。まあ、もちろん、体が死んでも、ヘレナ自体は不滅だ。いま、このあたりにいても、おかしくない。あらゆる場所にいても、おかしくはない。いなくても、おかしくない。」


 「気持ち悪いですな。」


 「そうさ。化け物だもの。」



 『さんきゅ~~~~~~。』


  ~風のような声が聞こえた。かすかにだが。



 「聞いたかい。いまの?」


 「はい、たしかに、『さんきゅー』、とか。」


 「やはり、いるな。まちがいなく。ソーの、ほら、うしろ!」


 「ぎゃあ。やめてくださいよ。いっぺんに、汗が出た。」


 「はははははは。まあ、ヘレナはそうしたもんだ。しかし、あの、人間としてのヘレナは気の毒だな。」


 「そうです。ぼくも、そう思う、自分の人生じゃ、なかったって、ことでしょう? いかに、ものすごい天才でも、自分が自分じゃない。それって、人生ですかね?」


 「ああ。そうさ。人生には違いない。本人しかわからないがな。」


 珍しく、ダレルが哲学的になっていた。




 『お話ちゅう、失礼します。こちらは、アブラシオです。』



 「きたか。」



 予想していたように、ダレルがつぶやいた。



 『捕虜に会いに来ませんか? なお、お二人を拉致することは、禁じられています。』


 「ほう、だれから?」


 『女王様です。』


 「そうきたか。いいよ、行こうじゃないか。誰かに、合わなきゃ、話が、まったく進まないもの。な、ソー君。」


 「そうですね。ダレルさん。」


  二人は、立ち上がった。



  一方で、『宇宙警部』は、これらの会話を、しっかりと、盗聴していた。





     ************   ************
















 



 




 

  





 










 

















 








 









 

 







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