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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百九十一回


  ************   ************



 「くそ、こいつら、ばけもんか?」


 火星の生き残り小型宇宙攻撃機のパイロット、オータ少尉が叫ぶ。


 「当たってるのに、素通りと来た。これじゃあ、勝ち目はない。」


 『少尉、先に行きますよ。そんなへなちょこではダメです。』


 気の強い、しかし抜群に頭の良いコーモット連隊長が叫ぶ。


 『まて、まて、無駄死にするだけだ。』


 『あたくしに、考えがあります。』


 『はああ????』


 そう言ってる間もなく、コーモット連隊長は、第9惑星の『幽霊戦闘機』に飛び込む。


 開戦間もないのに、すでに『幽霊』とあだ名された、不可思議な戦闘機部隊は、遥か後の世に『ニンジャ』と呼ばるような、あり得ない動きを見せた。


 一機だったはずの機体が、三つに分かれる。


 それぞれが、個別に攻撃して来る。


 しかし、また合体する。


 さらに、6機に分裂する。


 狙いが定まらない。


 『ふうん・・・・そうきたか。』


 コーモット連隊長は、ものすごく動きが速い。


 リリカが開発した、脳と直接操縦回線がつながっている、高性能宇宙戦闘機だから、ということもある。


 しかし、他の誰よりも早い。


 つまり、まあ、頭が良いのである。


 一瞬でも迷ったり、逡巡したりすると、すぐに動きに反応してしまう。


 それが、弱点だ。


 だが、彼女にはそうした欠点が見られない。


 アンドロイドなんじゃないか?


 ともうわさされたが、まぎれもない火星人類なのだ。


 こんどは、分裂した4つの戦闘機を、完璧に捉えた。


 推進装置部を、それぞれ、一発で吹き飛ばした。


『やったあ!』



 はずである。


 しかし、相手は、すぐに、修復してしまう。


 『あらあ~~~~???おかっしいなあ。当たってるのに。』


 『連隊長でも、ダメですかな? まさに、化け物ですな。』


 オータ少尉が皮肉った。


 『くそ。あり得ない。こいつら、ほんとに、幻影かしら。』


 『いやあ~~。ちゃあんと、物質反応してますよ。幽霊じゃない。ああ。危ないですよ。後ろ来た。』


 オータ少尉が、さらにその後ろから攻撃した。


 『きさまあ~~~~あたしに当てる気かああ~~~!』


 あやうく、同士討ちだった。


 いや、あっちでもこっちでも、同士討ちになっている。


 『三番、四番、五番、離脱。六番は大破。救出不能。』


 『こりゃあ、被害が増えるだけかな。』


 コーモット連隊長がくちびるをかみしめた。


 


 様子をじっと見ていたダレルが指示した。


 『全員、いったん、帰れ!』




 「やれやれですね。」


 ソーが、あきれたように言った。


 「あれは、どうなってるのかな?ブリューリよりたちが悪いぞ。」


 「さあて、分析してますが。要は、動きが早すぎるんでしょう。光速でぴゅんぴゅんかわす。分裂するのは、よくわからないな。一種の細胞分裂みたいな感じですかね。」


 「生きものかよ。こっちの攻撃波だって、光速で動くんだから、差はないはず。当たらないはずがない。」


 「当たってますよ。確かに。ただ、効かないだけ。効いても、すぐに修復する。そんな技術は、火星にも金星にもないです。地球にも。たぶん。」


 「それじゃあ、もう、話にならん。戦いにならない。バカにされてるだけだ。」


 「おやや、連中。金星の大気圏内に侵入しようとしてますよ。金星人が黙ってない。攻撃用『空中都市』が大気圏外に浮上。さすがに、でっかいですなあ。」


 「感心していてどうするの。相手には、被害が出ないぞ。歯が立たないな。金星人も可愛そうに。」


 「ああ、宇宙警部殿が、参入しました。おやや・・・おかしいですよ。敵さん、なんだか、同じ空域を旋回してます。」


 「ああ、ほう・・・あそこから、出られないんだな。空間が丸まったんじゃないかな。ここから見てると。おおきなたらいの中の、『金目フライ』みたいだ。(金魚の親戚みたいなもの。)」


 「ふうん、さすが。宇宙警部と言うだけのことはある。逮捕はお得意ですからね。」


 「敵さん、どうやら、撤退したいらしい。あ!」


 「囲いをヒライちゃいましたね。警部さんは、おやさしい。」


 「ばかな。捕虜をとらなきゃ、意味が無いのに。」


 「いや、ダレルさん、ほら、いなくなっていた、アブラシオが帰ってきましたよ。出口をふさいでる。」


 「ふん。・・・・あああ、食べた。」


 「食べました。ね。」


 アブラシオは、敵艦を5機、巨大な胎内に取り込んでしまったのである。 


 のこりは、解放してしまった。




  **********   **********



 『ゆきちゃん、ぼくに、どうしてほしいと?』


 弘志は、いったん、シモンズと別れて、自室に帰った。


 『おにいさま、ショックでしょうね。』


 弘志は、まとめていた髪を、ほどいていた。


 驚くほど、弘子と道子に似ているし、男子だとは思いにくい。


『そおりゃあ、もう。弘子姉さまが死んだなんて、うそだろ。あり得ない。銃撃されたということ自体、あり得ない。姉さまは、周囲の危険を先読みできる。絶対に撃たれたりしない。違うかい?』


『違いません。そのとおりです。今回も、お姉さまは、撃たれるのが分かっていました。』


『な・・・なんて? わかっていた?』


『はい。もちろん、分かっていました。だって、お姉さまが計画して実行したのですから。』


『ゆきちゃんは、それを、知っていた?』


『はい。』


『でも、止めなかった。』


『まあ、止めようがないですよ。その必要が、ないと言うか。』


『ぼくに、言ってくれたら。』


『そうしたら、撃たれなかったと、思いますか?』


『いや・・・・つまり、姉さまを操ってる、化け物が、姉さまを、殺させたということか。』


『まあ、そうです。』


『なぜ?』


『邪魔だからでしょうね。』


『邪魔・・・もしかして、ぼくが、裏で動いていたことと、関係がある?』


『まあ、そうだと思います。』


 弘志は、しばらく沈黙した。


『なら、ならば、殺されるのは、ぼくだろ! 弘子姉さまではなくて。そうだろ!』


 弘志は、叫んだ。


 精神的な統制が、破壊されそうだった。


 雪子は、鎮静効果がある物質を、弘志に別空間から注入させた。


『ご自分を責めないでください。お兄様は、間違っていない。弘子姉さまの内部で起こった、なにかの変化に、内部の存在が気付いたのです。』


『悪魔みたいなやつだな。ねえ、ゆきちゃん。ゆきちゃんは、まだ、隠し事をしてるだろう。話してほしいんだ。いまの状態では、何が正しいか、そうじゃないか、分からない。』


『そうですね。結論から言えば、正しい事とか、間違った事とかは、ありません。立場の違いがあるだけで、正しいか正しくないかは、関係していません。お兄様は、いままで、一種、蚊帳の外にいましたが、今からは、その中心に立つことになります。』


『え? どういうこと。』


『弘子お姉さまも、道子お姉さまも、どちらも、あたくしの、しもべに過ぎないからです。』


『え? まって。ゆきちゃん、何、言ってるの?』


『この世に、あの二人を生み出させたのは、あたくしだということです。』


『え? あの・・・そりゃあ、ないよね。そか、・・・化け物が、ゆきちゃんに。とりついたんだな。』


 弘志は、じりじりと、ドアに近づこうとしていた。


『お兄様、ドアは開きません。これから、お兄様には、まず、女の子になっていただきます。もう、慣れてるでしょう。ただの、女子ではありません。あなたは、これから、道子姉さまをも吸収し、究極の弘子姉さまになるのです。まあ、お名前は、道子の方が良いでしょう。弘志兄さまは、この世から消えます。弘子姉さまの人格や能力は、あたくしが握っております。弘子と道子が、あなたの仲介で、同一人物に発展します。どのような人類も、ミュータントも、けっして対抗不可能な、絶対的な能力を持つのです。』


『な、なんのために?』


『この、宇宙の、統一です。』


『うな、むちゃくちゃな。』


 空間が歪み始めた。


 弘志は、自分がとろけるような気がした。


 そこで、雪子の身体から、点滴の管が外れた。


 警報が鳴り響く。


 10分以内に、適切な処置をしないと、雪子の身体は死んでしまう。


 弘志は、何かに、引っ張られる気がした。


 ものすごい力だ。


 なにがなんだか、分からなくなった。



   ************   ************
























 













































  




 














 








 














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