わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百八十七回
************ ************
第1王女の『婚約の儀』には、松村家からは、明子が代表で出席する予定だった。
彼女は、しばらく前から、王国に入っており、マツムラ・コーポレーション・タルレジャでの業務を行っていた。
このところ、松村家の企業役員としての収益に対する世間の風当たりが、ぐんと強くなっている。
それは、およそ、法外な報酬が支払われているのではないか?
という話である。
確かに、地球上の企業の中でも、とびぬけて巨大な利益を上げるだけに、しかも、お饅頭屋さんから、極秘軍事産業にまで、その経営範囲が広がっているから、また、みな、かなり、相当、すごく、成功していることからも、松村家の収入は巨額になる。
もちろん、日本合衆国や、タルレジャ王国に入るお金も大きい。
とくに、王国においては、肩を並べられる企業はない。
実際のところ、松村家が行う社会援助や福祉関係への寄付なども、莫大な額だけれども、そこは、あまり人々には見えないとう面もある。
明子は、あまり、そこらあたりには、目が回らない昭夫に代わって、印象回復に、やるべきことが多方面にわたっていたのであった。
そこに、弘子暗殺の情報である。
まず、絶対にあり得ないと思っていただけに、ショックが大きい。
本宅との連絡も大変だった。
洋子は、どうするのだろうか?
弘子の・・・ヘレナの葬儀はどうなるのか?
彼女は、王国の『王女様』なのである。
第1に、犯人は誰なのか?
王国内は、混乱状態になった。
北島に対する実力行使に出た王国政府は、窮地に立たされたのである。
『とにかく、婚約の儀は、中止と延期しかないだろう。』
と、首相は語った。
政府の閣僚たちは、おおかた、同じ意見だった。
ただ、この件は、政府が勝手に決定する権限がない事項だ。
王室と、教会と話し合い、その上で決めなければならない。
内戦状態のままでは、どうにもならないのである。
しかし、ここで手を引くことには、パブロ議員は反対だったのだ。
『せっかく、始めたんですよ。やめたら、それで、終わりになる。そうなっては、まずい。第一、それじゃあ、あなた、首相閣下は、命が危なくないかな。』
『む。第2王女様だ。まずは、総督閣下と話し合いをしなければ。早急に。なんとかして。皇帝陛下は、その結果を見るだろう。』
『まあ、そこは、首相殿の、お役目ですからな。皇帝陛下は、こちらの側にあるという見方は変わらないが、慎重にやってくだだいよ。首相。』
こうした話しあいが、行われていたのである。
************ ************
「姫様。ご気分は、大丈夫ですか?」
侍従長が、『第2王女』を、覗き込んだ。
ルイーザは、第2タワーから降りて、王宮の自室に来ていたのだ。
「ありがとう、じい。自分のからだが、半分無くなった気分です。でも、倒れてなんかいられません。」
「はい。『第1王女様』が、握っておられた、国王特権は、あなたに委ねられます。あなたは、地球帝国の、ナンバー2ですからな。そこが、『第1王女様』と、大いに違う。あなたの動きひとつで、北島の存在がひっくりかえりますぞ。まあ、それも、悪くはないでしょうけれども。」
「わかっております。じいは、北島が、いわゆる『解放』されてもかまわないと?」
「かまわないとは、いえませんなあ。立場上は。しかし、可能性としてなら、あっても、おかしくはない。まあ、まず、教母さまと、ご会見頂きたい。あなたが言わなければ、向こうから言ってきますぞ。」
「そうね。」
「あの・・・・」
「なあに?じい。」
「なにか、隠していらっしゃいませんか?」
「じいに、隠し事は、しませんわ。」
「ほんとに?」
「まあ、だいたいは。」
「はあ・・・・」
「いい、じい、もちろん、お姉さまの婚約の儀は、行えません。でも、あたくしの儀式は、予定通り、行います。」
「なんと?」
「それが、姉上のご意志です。万が一の場合はそのように行うように、指示されておりました。」
「なんと、なんと。」
「皇帝陛下も、それを認めてくださいました。教母さまには、これからお話にお伺いいたします。」
「反対されたら?」
「『第1の巫女』に、事故ある時は、あたくしが、その権限を実行します。教母さまには、覆す力は、ありません。例外を除いては。つまり。国王も反対した場合です。国王様の同意は、まず、直ぐに頂きます。一時間以内に、そこらあたりは、かたがつくでしょう。」
「はあ・・・・。わかりました、じいが、とやかく言うことはできません。しかし、正晴さまには、荷が重い事でしょう。」
「そうですね。そこは、配慮いたします。」
「宇宙空間で、戦争が始まったようですが?」
「そいつは、おまかせよ。手は出さない。もっとも、警部さんが入ってくださるでしょう。」
「警部さん。。。。ねぇ・・・・・・じいは、面識がないが。」
「まあ、まだ、あなたが出る幕じゃないわ。いましばらく、わしに、まかせなさい。」
「それは、もちろん。ですがね・・・・・」
************ ************
「こいつら、何者だ? ソー?」
「さあてえ・・・見たことない宇宙船ですなあ。乗員は、見えないですが、明らかに何かの意志で動いてます。」
ダレルは、大方、見当は付けていた。
「『光人間』の一派かな。『第9惑星』にいるという連中さ。もと、移住者。」
「しかし、移住地は、放射線の影響は受けないですからねぇ。そういう、幽霊みたいなのが、いるという、噂は、たしかに、ありましたが。」」
「いいかい、ソー。2憶5千万年だよ。なんでも、変わって来るさ。たとえ、女王が作ったにしてもね。どこかに、スキが出来るさ。植民地内は問題無くても、外から侵略して来るやつは、きっと、いるさ。」
「そうですかね。光人間に、軍艦が必要でしょうか?」
「相手は、肉体がある火星人と金星人と地球人だよ。」
「ふうん・・・なんか、もうひとつ、絡んでいそうなんですがね。」
「だれ?」
「女王さまですよ。」
「ああ、ふうん・・・・そうかもな・・・うん。」
『第1バリヤー破壊! 持ちこたえられないかもです!』
報告が飛んできた。
「相手は? 相手の被害は?」
ソーが尋ねた。
『おそらく、無傷です。』
「ソー、アブラシオさんは、どこにいるの?」
ダレルである。
「今は、見えないですが、おそらく、月の裏側でしょう。」
「月のリリカさんに、協力要請してくれないかな? 拒否するかな?」
「了解。やってみます。」
「この機会だし、だれが、どっちの味方なのか? はっきりさせようよ。」
************ ************
************ ふろく ************
「あ~~あ。やましんさん、今年も終わりですよ。いよいよ、お話し、迷宮ですねぇ。」
あいかわらず、お饅頭をかじり、おさけパックを握って、幸子さんは、言います。
「さ~~~~て、奥さん、今夜は来るんでしょう。幸子、お池に帰って、テレビみよう~~っと。おつかれ、やましんさん。お饅頭、どっさり置いておきます。また来年。といっても、すぐだけど。」
「やましんには、お正月も、特に、ほほ笑んではくれないですよ。まあ、良いお年を。幸子さん。」
「お正月には、い~~~~っぱい、ひきつれてきてあげるね。じゃあ、また。ばいばい。」
「あああーあ、いっちゃった。さて、買いものに行くかなあ。」
2020年に続く・・・・・・・




