わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百八十六回
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『じゃ、きみは、いったい、なに?』
当然のことを、シモンズは、やっと尋ねたのだ。
『まだ、お答えしません。』
雪子が、言い切った。
『なぜ?』
『消えてしまうかもしれないからです。』
すこし、沈黙が流れた。
『君は、消えるようなもの?』
『そうです。』
『肉体が消えるのかい?』
『そこは、まだ、秘密。』
『ちぇ! せっかく、話が乗って来そうだたのになあ。おい、アニーサン。あにーさん聞いてる?』
『・・・・・・・・・・・・・・』
『こういうときは、だんまりか。君は、アニーさんを知ってるの?』
『そうですね。知ってはいます。しかし、接触はしません。』
『なぜ?』
『必要がないから。』
『む・・・・・。やっかいな存在は、へレナだけで十分なんだ。そこに、ぶりゅーりとか、アニーさんとか、警部さんとか、地球自身とか、2億年以上生きてる人やら、そういうのがいるところに、あなたが入り込んだら、ますます、未知数が増えるじゃないですか。減らしたいのに、減らないんだ。』
『お気の毒です。同情いたします。』
『いいえ。どういたしまして。』
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シモンズは、いつのまにか、マムル先生と連絡を取り合っていた。
彼女は、王室の『主任監理医』であり、王女様3人の『主治医』である。
国王には、専属の医師がいて、彼女は手を出せない。
助けを乞われたら、まあ、話は別だが、そういう事態が起こったことはない。
これは、実に不可思議な事だ。
だいたい、誰が国王の医師なのか、誰も、知らないのである。
『第1王女』が知っていることは確かだが、給料のこともあるし、また、医師の労務管理や健康管理も必要だ。
にもかかわらず、侍従長さえもが、知らないらしい。
おそらくは、『教会』の管理下にあり、『教母』様が、仕切っているのだろうが・・・
まあ、それらはともかくとして、シモンズがマムル医師に取り込んだと言うよりは、お互いの利害が一致したと、言った方が良い。
マムル医師は、王女様3人の健康を預かっている。
最近の動向は、彼女には、非常に気がかりだった。
彼女は、『第1王女』と『第2王女』の意識に、なにものかが取りついていることは、オカルトじゃなしに、事実だと確信していた。
『第2王女』については、昔から、時にそうした兆しは見られたが、常時おかしいと思いだしたのは最近のことである。
ヘレナに問いただしたりはしない。
それは、まあ、暗黙の、ルールのようなものだ。
一方、ヘレナも、医師の意識に介入したりはしなかった。
これも、まあ、同様な事情である。
つまり、医師は、ヘレナやルイーザ、さらに、皇帝ヘネシーのすぐそばにいて、まっとうに正気な、数少ない存在なわけだ。
もうひとり、侍従長がいるが、ここはどうしようもない存在だと思う。
『教母様』にも、会ってみたいところだが、それは、無理というものだろう。
シモンズが、自国の大統領に会う方が、簡単に違いない。
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宇宙海賊マ・オ・ドクと、デラベラリ先生、それから、古い通称『片目のジニー』(最近はジニーさんで通されている。人権上の問題である。)と、その第1の子分は、会議室に、静かに乱入していた。
「ああ~~~。あなた方、海賊のもてなし方は、ちゃんと教わったかな? 昔は、海賊は丁重に扱われたものだ。それは、おじょう・・・つまり、火星の女王さまや、ビューナスさんと、じっつに、上手くやっていたからだ。これからも、そうありたい。おれたちは、長く放浪したが、金星の方々もそうだ。火星人さんは、地中に埋まってたろ。そこの・・・・ああ、たしか、『どかいや商店』の、おじょうちゃんも、昔からの仲間だ。お父上の事を、俺は良く知ってる。あんたが、はだしで、刀持って、男の子追いかけ回してたのもな。え、なぜ、おれたちを、外すのかな?」
ポプリスが、目をむいた。
金星人は、ダレルを頼った。
「別に、外すと言う気ではない。しかし、ここは、外交の場だ。海賊は、外交に絡まないんだろう? そうだったように、記憶しますが。」
マ・オ・ドクの方目が吊り上がった。
「ほう。さっすが、おじょうの弟子だ。おじょうは、どこに行った?」
「火星の女王なら、行方不明だ。」
「ほう・・・・さっきまで、ここに、いた様な気がするが。」
「あの方は、地球人だ。さる、王家のお姫様だ。女王とは関係ないと思う。」
「ほーーーー! 関係ないと思う。か。ほーーーー!」
案の定、その話題から離れない、マ・オ・ドク(マオ・ドクともされるが、正式には、音が分断されるらしい。)を見かねたジニーが割り込んだ。
「われわれは、海賊と言う呼称はもはや使わない。正式に『商社』だと思ってほしい。ぜひ、話し合いに加わりたい。過去のいきさつというものにも、我らは詳しいぞ。とくに、金星人さんにとっては、役に立つだろうな。」
金星側が、ざわついた。
「よい情報を、お持ちのようだな?」
情報局長が体を少しだけ乗り出しながら、にこやかに言った。
「もちろん。ビューナス様に関する、新情報がある。」
「ほう・・・・・なにかね?」
「ただでは、いやだな。商売だから、いまや、情報は貴重な商品だ。そうでしょう。地球の偉い方。」
杖出首相は、反応しなかった。
そのときである。
猛然と、警報が、鳴り渡ったのである。
『緊急! 緊急! 攻撃発生、攻撃発生! 未知の勢力から攻撃されている! 戦闘要員は、緊急配置につけ。応戦中。くりかえす、応戦中。戦闘要員は各持ち場に急げ!』
「なんですかな? 火星のダレルさん?」
金星の情報局長である。
「いや、我々は、一切動いてない。あ、まって、連絡が来た。」
ダレルは、通信機を取り出した。
『ダレル指令。未確認の物体が金星を攻撃。我々も同様に。』
「だれだい? いまどき。」
『わかりません。乗員が確認できない。無人͡攻撃艦かもしれません。応戦許可を願います。』
「いいよ、許可する。君に任せるが、逐次連絡してこい! 事態が動いてもな。早めに帰艦する。」
『了解。・・・・失礼・・・また、連絡します。かなり、強敵ですな。地球人じゃない。』
「あ~~~、みなさん、火星艦も攻撃されている。相手は不明だが、幸い、地球ではないようですな。」
横目で、杖出首相を見ながら、ダレルは報告した。
宇宙警部が動いた。
「杖出首相、来て下さい。ここは危ない。」
「ああ・・・みなさん、会議の中断を要請します。」
「いいでしょう。いったん、解散としましょう。」
情報局長が言った。
そうして、金星の『空中都市・ワン』が、かなり揺れを感じた。
通常、ありえないことである。
『上方の、『第135都市』、大被害。 『第60都市』、被害拡大中。他の都市が『ワン』の上方に移動。『10大都市』以外は、防御が限界値! 攻撃艦発進しました。敵方を攻撃中。』
「総統、持ち場に行きましょう。」
「ああ。」
情報局長の言葉に、ブリアニデスは、動いた。
杖出首相は、宇宙警部とともに、ミニパトに急いだ。
「くそ、来たばかりだぜ!」
文句言いながら、海賊も引き返しだした。
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アブラシオは、月の裏側に待機していた。
ヘレナからの指令を待っていたのだ。
『おまたせ。ごめん。いろいろ、ややこしくて。』
『ヘレナ様、確認。状況は?』
『見てるわよ。大事な体が、壊れちゃったから。まだ、回収は出来ないもの。やっかいなのが出て来たか。』
『どうしますか?』
『もちょっと、見学。』
『了解。・・・・・いいんですか?』
『まあね。実力、拝見といきましょう。』
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ちょっと遅めですが、みなさま、メリー・クリスマス。
いつも、つこのようなものをお読みくださいます方に、深くお礼申し上げます。
この1年は、みなさまにとって、いかがでしたか?
まあ、まだ、残りがあります。
最後のダッシュの方は、頑張ってください。
やましんも、もう一回分くらいは、書きたいな。
かぜなどお召しになりませんように。
また、大晦日あたりに出ます。




