わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百八十回
************ ************
「よろしい、準備完了である。よくぞ、がんばった。これで、あとは、本番を迎えるだけである。」
大奉贄典は弟子に向かって、そう語った。
「まさか、内戦が始まるとは。それでも延期にならなかったのは、驚きです。」
「さよう。しかしながら、王室の行事に関して、過去延期や中止になったことは、記録のある限り、ないのである。アヤ姫様の事態は除いてだが。」
「それは、つまり、アヤ姫様が生きておられたら、あるはずだった行事という意味ですか。」
「さよう。その通りである。今回のお二人に関する一連の行事が終わったならば、このアヤ姫様に関する極秘情報を開示いたそう。」
「ありがとうございます。しかし、南島では、アヤ姫様の亡霊が暴れておるとか。あれは、事実なのでしょうか。」
「うむ。それよな。もちろん、実際に起こっているのであろう。でなければ、TBC(タルレジャ放送協会)が報道したりはしないであろう。」
「あの・・・これは、問題がある質問であります。」
「ふむ。言いたまえ。」
「幽霊が実在すると言う事ですか。」
「うむ。その通りである。しかしながら、ここには、当然の事ではあるが、第1王女様が絡んで居る。」
「なんと?」
「よいかな。幽霊現象の多くは、勘違いや見間違い、幻想、妄想。そうした類である。しかし、この南島での現象は、物理現象である。それは、『地獄』、さらには、『真の都』に通ずる道なのである。」
「むむむむ。魔球の解説みたいです。」
「しかしながら、わしには、それを説明するすべはないのである。誰にもない。第1王女様以外には、おそらく、誰にも分からないのである。」
「やっぱり。でも、それでは、科学にはならないのでは?」
「さあて、どうかのう。直接、尋ねてみるが良いぞ。」
「第1王女様にですか? まさか。」
「みな、そう言って、だれも、これまで、聞かなかったのである。」
「なるほど。それは、しかし、禁断の事項ではないのですか。」
「ない。そうした禁則は、実際に、ない。いつ、どこで尋ねるかだけである。実際、我々には、その機会がないのだ。我々が王女様に接するのは、公式な行事の、公式な時間だけである。私的な懇談の機会など、これまで、なかったのだ。」
「なあるほど。そうなんだ。」
「いずれにせよ、そなたの番がくる。間もなくな。そうして、大きな、過去にはなかったような、この空間の大事変があるだろう。しかしながら、それは、危機ではなく、好機でさえある。よいかな。そなたの立ち回りひとつで、危機も危機ではなくなるのだ。」
「回避は出来ない危機が来ると?」
「出来ぬな。この空間の未来は、破壊に通じておる。そのこと自体は、我らには、どうにもならないが、立ちまわることは可能だ。その時がやってくるのだ。真の都が、この空間を消し去るであろう。しかし、まずは、『大事』を、こなさねばならぬ。それからである。よいかな。」
「はい。まあ・・・・」
「そのあいまいさが、そなたを救うであろう。」
弟子は、黙り込んだ。
************ ************
夜明け・・・・・
今日は、ついに『婚約の儀』の当日である。
あすは、『地球帝国創立式典』が行われるところとなる。
南島と北島は、創立式典の行事が終了するまでは『停戦』という話しになった。
地球帝国政府側は、話し合いにより、北島の『解放』を求めて来ている。
ただし、王室の廃止までは要求しないという。
折衷案というところである。
『おーい。カイヤちゃん、出て来―い。』
ヘレナが呼び掛けた。
『いいのですか? 王女様。こんなところに、勝手に忍び込んで。』
コンピューター・カイヤが答えた。
『まあ、あなたが黙っていれば、分からないわ。』
『はあ・・・で、何でしょうか?』
『まあ、そう、冷たくしないでくださいな。あなたは、自分の消滅が怖い?』
『怖いと言う意味は分かります。しかし、それを感じることはないと思います。』
『そうかな。アニーさんは、怖がりよ。』
『アニーさんは、化け物です。自実上の生命体ですから。』
『ふん。まあ、そうよね。いいわ。じゃあ、あなたとは、お別れになるかもしれないけど。だから、ご挨拶したかっただけなの。少し、少女的感傷ね。』
『あなたこそ、本質的には感情がない。着ている人間の感情を借りてるだけです。』
『まあね。でもね、たしかに、少し疲れたわ。』
ヘレナは、豪華なソファーにひっくり返った。
『私たちは、太陽の光を直接見つめることはできない。色とりどりの反映の中に真実を見るの。』
『ゲーテ様の受け売りですか?』
『まあね。でも、必ずしも、最近はそうじゃないわ。確かに、人類は進歩したもの。それでも、人は、まだブラックホールの中を見ることはできない。やっと、その外見は捉えたけれど。そもそも、見えない物はいっぱいあるわ。そうよね、ウナさん。』
『まあ、さすが、目ざといことです。』
中空から返事が来た。
ウナは、生きていた。
いや、そもそも、光人間には寿命がない。
それは、ヘレナにとっては、当たり前のことなのだが、マヤコがここにいたら、飛び上がって喜んだことだろう。
『あなた、あたくしと真正面から戦うお積り?』
『必要ならば。』
『そう。・・・じゃあ、必要なわけね。』
『あなたが、人類を粗雑に扱うのならば、やむおえません。』
『粗雑じゃない。最後の一本に絞るためよ。真実に繋がる最後の道よ。』
『それは、あなたの主観です。真実の道は、一本じゃない。あなたは、狂信的な独裁者と変わらない。ただ、宇宙を壊滅させる力があるだけ。』
『ふうん・・・・・阻止出来ると言うのかなあ?』
『しなければ。』
『まあ、でも、まだそう決まった訳じゃないわよ。テストはまだ、終了してはいないもの。ここが生き残るチャンスは、まだあるわ。』
人間に、いま、その姿が見えるのは、へレナだけだ。
一人芝居といえば、それもそうなのだ。
そう考えて、ヘレナは、くすくすと楽しそうに笑った。
*************** ***************
*************** ふろく ***************
「やましんさん、めまい止まったあ?」
「はい。大分落ち着きました。」
「自立神経が出張したんだってね~~~。幸子も、よくお池を空けて、アヤ湖に泊付き出張するけどさあ、早く呼び戻したらあ?」
「そうしたいんすがね。どうやら、ここには、いたくないらしいですよ。」
「そりゃあ、やぱり、お饅頭が足りないのよお。ほ~~ら、いっぱい用意しましたあ!! お饅頭嵐~~~~~!」
どかどか~~~~~~~~~
「はあ~~~~~~~~。」
「まあ、元気ないわねぇ。『ぎょあ~~~~~!!』とか言わないと面白くないな。今日は帰ろう~~~っと。」
「あらら。いなくなった。まあ、そうしたものだ。」
やましんは、ひっくり返ります。
*************** ***************




