わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百七十八回
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紅バラ組の代表者会議が開かれていた。
紅バラ組は、急速に膨張し、拡大し、もはや、トウキョウの地域女子暴力グループにはとどまらなくなっていた。
彼女たちが所持する武器は、地方警察の武器を、すでに遥かに超越していた。
さすがに、防衛隊のような重装備はないが、紅バラ組の為に防衛隊が出動するという発想は出て来ないうちに、彼女たちの実力は州警察に匹敵するくらいになった。
女子高校生から始まり、さらに中学生たちも、次々に組員に改造されてゆく。
この、強力な洗脳薬剤と即効教育システムが、どこで作られているのか?
警察の現場は探っていたが、なぜか、中央は、あまり立ち入ろうとはしない。
むしろ、現場が介入しすぎないように監視しているのだ。
なお、大学生は、ピュアな精神が少なくなり、理屈が先に立って扱いずらいので、組織の中核は、中高生になったのだった。
ただし、一部、専門知識が必要なので、優秀な女子大学生が、全体の5%程度は、スカウトされていた。
必ずしも、幹部という訳ではない。
組織が大きくなると、全員会議というわけにはゆかなくなる。
それは、厳しい引き締めが必要だと言う意味にもなるが、紅バラ組の結束は非常に固い。
「いいか、てめぇら、よう、聞け。組長から連絡があった。関西州から西側の、瀬戸内側本州地域は、わいらが自治権を取ることに決まった。もちろん、組長がボスじゃ。ただ、ヒロシマだけは、政府が直轄することで組長が譲歩したようじゃ。まあ、これは、やむおえまい。州都は、オオサカじゃ。州名は、『紅バラ州』となる予定じゃ。」
「お~~~~~~~!!!」
歓声が上がった。
「リーダー。シコクは、とれなかったんか?」
「そうじゃ。まあ、わい自身は、いずれは、併合するつもりじゃがのう。まあ、最初からあせるものではない。時を待つのが、上策じゃ。」
「地球帝国の傘下には入るんじゃろうか?」
「うむ。それは、組長の方針じゃ。わいらは、地球帝国の屋台骨とならねばおえん。そこは、根性入れてわきまえよ。」
「あい!」
このリーダーの正体は、いまだ明らかには、なっていない。
組長が、実はへレナであり、副組長が、改造後のルイーザであることは間違いがない。
ただし、もちろんそれは、リーダーしか知らない、秘密事項でもある。
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「まったく、お姉さまのお考えは、革新的と申しますか、むちゃくちゃと申しますか、表現しがたいほど、すばらしいですわ。」
はあはあ言いながら、ルイーザがつぶやくように言った。
「ふんふん。それは、褒めたの? けなしたのかなあ?」
アニーの仲裁があったにもかかわらず、いったん、とっつかみあいの喧嘩となったが、これは、このふたりの和平のためには、やむ負えないことだった。
世間さまからは、いささかも信じられないだろうが、このふたりは、つかみあいの喧嘩は、実のところは、しよっちゅうだったのである。
怪我はしないように、おたがい注意はしていたが。
どちらが強いかと言えば、それは、まあ、ヘレナが強い。
しかし、ルイーザは、かなり手加減をしているのだ。
本気になると、実は殺し合いになりかねないからだ。
妹ととしての、マナーのようなものである。
よほど、どうしても通したい事件がある場合を除き、姉にうっかり勝ったりはしないのだ。
ただ、絶対に譲れない場合というものが、時にはあるものだ。
そういう場合は、それなりに、覚悟を決めて挑むことになる。
すると、その内容をヘレナの本体が認識したら、意外とあっさりと承認されてしまうものでもある。
まあ、そうした場合は、喧嘩にもならないわけだが。
「いずれにせよ、なにを、どうしたいのかが、はっきりといたしませんわ。」
「まあ、めんどくさい子ね。しばらく、管理しないと、すぐに跳ね上がる。ほら、文句言わずに、あたくしに従いなさいませ。」
ヘレナは、分身の心理操作をした。
「あ・・はい・・・・お姉さま。分かりました。すべて、仰せのママにいたします。あたくしは、あなた自身です。幸せです。」
「あたりまえよ。逆らうのは、1億年早いわ。」
『あ~~~あ。また、無理やり従わせちゃった。』
アニーがぼやいた。
「あなたも、改造されたいかなあ? まあ、それって、快感だものね。人間はねぇ、あたくしに操られると、異常な幸せを感じるものなのよ。」
『そりゃあ、あなたが、そうさせてるんだから。昔からそうですよね。麻薬みたいなものです。長くなれば、もう、操られるのが当たり前になる。絶対にあなたには、反抗はしたくなくなる。北島の人は、みなそうですよね。』
「人心支配の極意だわ。あたくしがやらなくても、人間自身が、そうするようになる。」
『おお、こあ~~~~~~!結局、やはり、地球も支配するんだ。』
「ふうん・・・・・アニーさん、やはり、ちょっと変ヨ。どしたのかな? やはり、改造が必要かな。最近まったく、改造してないしな。」
『いやいや、大丈夫レス。アニーハ、モンダイナイレス。』
「おおありみたいね。ま、今は、あなたを調整している暇はないわ。あなたをいじくるのは、大事だ。さて、そこで、アニーさん、お願いがあるんだけどなあ?」
『はあ? なんでしょうか・・・・・・・』
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あんじの属する、穏健派ミュータント組織としては、紅バラ組の急速な膨張は、ほってはおけない事態だったにもかかわらず、なぜか、組織のトップは、あの衝突以来、派手に動かないように指示してきていた。
「ねえ、『接続者』さん、いいのかなあ。みんな、ちょっと、不満感と不信感が増大中。例の急進派に移ろうかとか言うお話しもあるみたいですよ。」
「あ、そ。おらしらね。」
「ほらほら。それがよくない。知ってるんでしょう? 何を待ってるの?」
「はあ・・・・・おらしらね・・・・と、言いたいのですが・・・先ほど指示が来ました。叩きます、徹底的に。急進派2派との共闘がなりました。あなた、おひま?」
「まあ、何か用があるなら、優先しましょう。」
「よかった。じゃあ、ちょっと、一緒に来てください。」
「ふたりで?」
「おや、心配かなあ? じゃあ、このさい、レーダー君も連れてゆきましょう。」
「どこに行くのですか?」
「ふふん。まあ、行ってのお楽しみかな。良いところだ。」
「そりゃあ、よくない言い方でしょう。まだ、良いところにはゆきたくない。」
「きみは、どこの出身だっけ?」
「火星です。」
「は? え? なに?」
「あら、言ってなかったっけ? あたしは、火星人。もっとも、名目上は金星人だけど。普段は、角や牙とか、隠してるの。まあ、もっとも、長く出してない。もう、出ないかも。多少は、整形もしてるわけですよ。」
「なななななな。連中のスパイかい?」
「まさかあ。まあ、あえて言えば、反逆者。反体制派。反女王派。かな。」
「むむむむ。そりゃ・・・・・」
「連れてくの、やめますか?」
「・・・いや。いい。行こう。」
「そうこなくっちゃ。」
「やれやれ、やっぱ。ひとすじなわでは、ゆかないよなあ、この人たちは。」
「は? なんですか?」
「いいや。いいです。」
「だいたい、あなたは、どこの御出身ですか?」
「地球です。」
「あ、そ。」
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