わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百七十五回
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『みなさま、今夜は、お忙しい中、ようこそお越しくださいました。
さて、地球人類は、長く闘いの歴史を築いてきました。
残念ながら、これは事実です。
もちろん、平和な時代が、地域的に長く存在した事は事実です。
たとえば、タルレジャ王国は、判っている限り、神話時代以前の『カタクリニウクの乱』以降、二億年以上にわたって、戦争をしたことがなく、内戦もありませんでした。もちろん、小競り合いや、家庭内部の抗争はあったらしいです。しかしながら、そのタルレジャ王国でさえ、現在内戦のさなかにあります。
なぜ、人類は、争いを止められないのか?
動物としての、本能からくるのであり、なくすことは不可能だと言うご意見もあるようです。
ただ、解決策に関しては、まとめてしまえば、三つの見解があるようです。
ひとつは、おたがいに話しあい、譲り合い、尊重し合って、平和を維持すると言う考えです。
ここには、均衡を保つために、各自がある程度の武力を持つことが容認されるという前提があります。
また、ルールを破った場合は、国際機関の統制のもとで、制裁が可能だと言う事です。
ただ、これには、抜け道が多く存在して、これまで完全な平和は、達成されず、また、達成されないことを、むしろ、相相反する利益とする存在と、その庇護下にある人々と、一方、その代償としての受け皿として、多くの特定の人びとの犠牲を、生み出しています。
それは、よくないと思う人は増えていますが、それが間違いだと言う方も存在します。
ふたつめは、自分たちが持つ武力で、他の多くを打倒したうえで、残った特定の集団のみで、平和を達成しようとする考えです。
その内容は、さまざまです。
妥協する部分も出てくるかも知れない。
みっつめは、地球人類を、完全に圧倒する、問答無用の存在を用意し、すべての人々を、ほぼ完璧に服従させて、平和を達成するという考えです。
その存在は、時には、神と言われ、自身が神だと自認する方は、歴史上、国王とか、皇帝とかも呼ばれ、また、時に、独裁者とされます。」
【『ぶ~~~~!』 という、批判の声も上がった。しかし、どっちサイドの人かは、わからなかった。】
・・・さて、本日は、このように、予想外の数の皆様が、お集まりくださいました。
少し前までは、巷の小さな会場で、隠れながら行っていた集会が、この集会の基礎にあります。
しかし、ここは、このように、1000人くらいの収容力がある、かなり大きなホールです。
しかも、みなさま、ご承知のように、ここは、マツムラ・コーポレーションさまの、本社敷地内にありまして、高級なレストランや、お酒が楽しめるコーナーもあり、おまけに、お隣には、巨大な病院がありますし、松村さんの御本宅の敷地が、すぐそばにあります。
このお国の首都の中でも、最も安全で、治安のよい場所とされますし、また、地元政府さまも、おそらくは、ですが、格別な配慮を怠らない地域であります。
わたくしの国籍は、タルレジャ王国ですが、この国には、多大な恩義がございます。
今回、このホールの利用に関しては、マツムラ・コーポレーションの、会長様ご自身からの、ご推薦があったと、聞いております。【いくらか、ざわついた・・・。となりと、ひそひそ話しする人もいるし、立ちあがった人もいる。】
会長さまは、もちろん、・・・おそれおおくも、名声高い、『地球帝国総督閣下』と、さらに、あの、『偉大なる皇帝陛下』の【司会席の女性は、深く一礼した。・・・聴衆の中の多くも、それに倣った。立ち上がって、抗議の意思を示した人も、それにならい、それから、席に着席した。】お姉さまであらせられますわけです。
そこで、皆様にお願いですが、ここには、さまざまなお立場の方がいらっしゃることは、承知いたしておりますし、また、入場には、マツムラ・コーポレーション様ご提供の、セキュリティー・チェックを、お受けいただいたわけです。
そこで、この敷地内における、暴力行為などに寄ります、ごたごたなどは、おそれいりますが、もし、そのようなことが起これば、『皇帝陛下』に対する失礼にも当たるかと思いますので、どうかご遠慮ください。【ざわざわ・・・・】
ただし、言論の自由は、ここでは確保されます。
そこを、ご理解ください。【ざわざわ・・・・・・】
最後に、時間の限りはございますが、講師様がたとの討論会も、用意いたしております。
一番最後には、皆さまが、度肝を抜かれる講師様が、まだ、ええ・・・おみえでは、・・・・・ないのですが、いらっしゃってくださる予定でおります。お楽しみに。
では、まず、基調講演として、『タルレジャ王国王立大学の、歴史特任教授で、さらに、トウキョウ・関東州立大学学外特別教授、ブル博士より、お話をいただきましょう。」
マヤコは、舞台下の司会席から降りた。
「あぶないあぶない。マヤコさん、動じないひとだからなあ。でも、ねえねえ、ぶるさんが、歴史の先生だってさあ。」
「女将さん、大きな声はダメですよ。」
番頭さんが・・・現職は、支配人だが・・・ささやいた。
「だってさ、あのひと、火星物理学者さんだったんだからさ。」
「そらあ、もう、生き字引ですもん。女将さん。」
「なら、あたしも、あんたも、そうだろう?」
「ぼくらは、学者じゃないですから。それにしても、度肝を抜かれる講師様って、いったい、だれかなあ?」
「ううん・・・・さあて、マツムラ・ヨウコサン、とか。」
「そりゃあ、本当に、そうならば、かなり、おおごとですが・・・・まさかね。みんな、おかしくなるかも。」
「あんなこと、信じてるの?」
「え?」
「ありえないじゃん、あたしは、そう思うんだ。ビュリアちゃんは、隠れたままで、出て来ないし、真実は、聞けないけどさ。まさか、王女さまには、聞けないし。」
「あの、・・・・・」
「うん?」
「いやあ、ビュリアさんじゃないですか?」
「え? まさかあ! だって、ビュリアちゃんのことなんか、ほとんど誰も知らないじゃないのさ。」
「し! いやあ・・・・・あ、ぶるさんが出た!」
見た目は、大昔のブル先生を知る人ならば、びっくりしたであろう。
そのまま、だったからである。
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