わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百七十四回
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「あんたなあ、化け物のくせして、もうろくしたのかな?」
ダレルは皮肉たっぷりに言ったつもりだった。
しかし、『化け物』という言葉を使ってしまったことを、直ぐに後悔した。
「まあ、うれしいわあ。ついに、あたくしを、化け物と認めてくれたのね。2億5千万年このかた、公式には、認めてくれなかったもの。さすが、あたくしの息子だけのことはある。ちょっと遅すぎだけど。」
「くそ。あんたを喜ばす気なんかまったくないんだ。だいたい、息子呼ばわりされるすじあいがあるのか? いいか、あんたは、今回の地球征服には手出ししないと、約束したろ。」
「しておりませんわ。ぜんぜん。まったく。何をしたと言いますの?」
「あのね。あんた、実質的に支配権を握ろうとしてるじゃないか。『第3王女』がトップ。次が『第2王女』。まずは、このふたりに権限を集中させ、あんたは、その僕となって、応援するだけだろう。それがどうだい、いまのままだと、あんたが支配権を操るだけの傀儡になる。」
「まあまあ、だれるちゃんともあろう人が、情けない。いい?いまやっているのは、邪魔者の除去と、隠れてる邪魔ものを引っ張り出して、始末することよ。」
「誰が邪魔ものだよ。ブリューリかい? ジャヌアンかい? 地球自身とか言うやつか? ブリューリはわかる。でも、ジャヌアンは、それは、約束したろ。あいつは、利用するんだと。『第3王女』は、そもそも、あんたがミスって作ってしまった失敗作だった。だから、ここで、消す。ジャヌアンは、そのための駒だと。それが、第1段階。そこからは、『第2王女』の世になる。彼女があんたを消す理由は無くなる。しかし、実は・・・」
「まったまった。あんたね、こんなところで、べらべらしゃべってどうするおつもり。あああ、しーらない、ジャヌアンさんが聞いちゃたかなあ。」
「きさま、なんと?」
「ふんふん。彼女のことはニュースで聴いたでしょう。」
「どうせ、コピーを使ったんだろ。」
「正解! でもね、今のコピー人間が、本物と見分けがつかない事はごぞんじでしょう? あたくしと、リリカさん以外にはね。」
「くそ。だからなんだ?」
「ふふん。ジャヌアンさんとは、和解したの。本当に。」
「え?・・・・なんと? いつ? どこで?」
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『教育中央センター』とか『中央教育センター』とか呼ばれる施設(どちらも正式名称ではないらしいが)を、徹底的にぶっこわして回った『池の女神様』たちは、とりあえず王国内の、支所を次々に破壊していった。
『アヤ姫さまあ~~~、ここ、完了です。』
幸子さんが報告してきた。
『わかりました。いま、残りは、いかほどですか?』
『ああと、半分くらいかなあ? だいたいです。』
『そうね。だいたいね。分かった。次、行きましょう。幸子さま!』
『はい。アヤ姫様!』
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北島とにらみ合いっこになっている南島の首相は、ようやくその報告を昼前になって聞いたのである。
「なんで、いままで黙ってたんだ?」
「いやあ・・・・報告が上がって来なかったんですよお。つまり、妖怪変化に、しかも、しかもですよ、アヤ姫様の一党に、襲われているなんて、報告できなかったのでしょう。」
「ばかばかしい。どこの世の中に、そんな妖怪が出るんだよなあ?」
「いやあ、首相・・・・あのお・・・・」
たまたま来ていた第3秘書が、おずおずと言った。
「あの、王室担当の私ゆえに申しあげますのですが、アヤ姫様の幽霊は、出ます。何度も、王宮の中で見ました。絶対います。」
「はあ? きみ、休暇取りなさい。病院に行って、場合によっては、教育センターにも入って、きちんと直したまえ。」
「はあ・・・・・首相も、そこに一週間くらい逗留なされば、見ますよ。きっと。王宮の官吏は、大方見ています。」
「ふうん。首相、そりゃあ、あやしいな。」
パブロ議員が言った。
「ふうん。まあ、でも、そこらあたりは、あまり、いまここでは、追求しないでおきましょう。』
議員は、不感応者である。
話が、ややこしいいことになりかねない。
「とにかく、まだ進行中の事態のようですから、調査員を出しましょう。ああ、人選はぼくがします、あなたはお忙しいから。」
「じゃあ、たのんますよ、議員。」
「あいよ。」
もちろん、ダレル氏は、議員子飼いの、強者の『不感応者』を出す考えである。
『くそ。幽霊のしっぽを、捕まえて、みせよう。それにしても、『第3王女』は、どうした? 気になるな。こっちの知らない手を繰り出してきているか。ふん。『もちはもちやに』、だな。』
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************ ふろく ************
『やましんさん、体調悪いですか?』
『うん、だるくて、のどが乾いて、おくちがからからで、お手洗いがすぐそばだよ。もうだめだ。』
『はあ・・・女王様のお話では、50年前から、もうだめだ、と、毎日、言っていたとか? それって、オオカミ少年?』
『あのね、幸子さん、あのお話は、ある意味、差別的な要素も含んでいるんだよ。』
『ふうん・・・・幽霊は、いつも、差別されてます。』
『そう? ここでは、すごく優遇されてない?』
『それは、まあ、女王様が、いらっしゃるからですわ。』
『あそ。ふん。まあ、でも、言い返す元気なし。ちょと、マッサージに、いって来ますから。』
『あら、幸子がいたしますのに。』
『体中が、ぎたぎたになりますので。はい。』
『ぶ~~~~~!!』
************ ************ つづく




