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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百七十三回


 ************     ************


 

 《びゅわ~~~~~!!》


 あやしい、ガスの固まりみたいなものが、村沢の正面にまで飛び込んできて破裂した。


 しかし、どうやら、この室内と、その外部の間には、まだ何かの障壁があるらしく、特に影響は受けなかった。


 また、あの《赤い文字》が、空中に飛んだ。


 『そうそう・・・追伸です。外の観察が出来たら、いったんドアを閉めてね。で、次に開けたときは、『婚約の儀』の翌日になります。《地球帝国創立式典》の日の朝よ。あなたが、いま、見ているのは、王国の『北島』と『南島』の内戦風景ですわ。そこに、あたくしが、現れるわけよ。あなたは、そのドアの陰から、あたくしを打ち抜くわけ。それは、あなたの腕ですわ。で、ドアを閉めてしまえば、もうそこは、本宅の部屋に逆戻りですの。あなたは、犯行時間には、トウキョウにいた。あなたが犯人であるはずがないわね。北島の戦場から見たら、何も無い空間のど真ん中から狙撃されたことになる。しかも、見たこともない、おかしな銃創。弘子さんは体を貫かれ、おしまいなわけ。でも、あなたは心配する必要はないわ。弘子さんは、死なない。彼女は不死だから。ただ、頭は撃たないでほしい。弘子さんも、女子だから。かわいそうでしょう? でも、そこらあたりの処理は、こちらに任せてね。じゃね。』




  ************   ************




 侍従長は、王国政府に通信を送った。


『『第1王女様』と『第2王女様』の『婚約の儀』は、予定どおり行いたい。『帝国創立式典』は、そちらも、王国の責任で、伸ばしたくはないでしょう。帝国から、にらまれますぞ。停戦しませんか?』




 ************     ************



「ヘレナ様ご自身は、お帰りにならない。ヘネシーさまは、『火星の女王様』付きの秘密警察に保護されてしまったらしい。まあ、居場所はわかっていますが、まあ、だれも手は出せない。困ったものですわ。思い通りともいえますが。なんか、複雑な気持ちですわ。」


 珍しく、ルイーザがぐちっている。


 彼女の立場は、あくまで『地球帝国総督』がメインである。


 しかし、ヘレナが雲隠れしたままなので、国王大権の特例法が実施中であり、その絶対的権力の代行者であるヘレナがいない以上は、その大部分はルイーザにまかされてしまっている。


『いいじゃありませんか。やり放題ですよ、ルイーザさん。いやあ、ヘレナさんかな。あなたの独裁だ。今だけ! このさい、やっちゃいましょう。』


 アニーがやたらにあおってくる。


 たしかに、いま、ルイーザの自意識は、ヘレナ自身でもある。


 ただ、ルイーザが消えてしまっているわけでもない。


 なぜか、ヘレナは、いくらか、手加減をしていたらしいのだ。


 おかげで、ルイーザは、ヘレナの自意識と、ルイーザ自身の自意識に、挟まれている。


『ヘレナさんの意志もあり、あすの『婚約の儀は実施する』方向で指示されていますしね。』


「わかっております。へレナさまのご意志は、わしの意志でもある。北島からは、そのための停戦が提案されました。南島政府は、皇帝陛下のご威光をバックアップとして、さっさと勝ち逃げしたかったのですが、つまり、それが、パブロさんの考えだったわけですが、まあ、そういうわけにも、もう、ゆかさない。というわけですわね。停戦を指示します。皇帝陛下はおいやでしょうけれども。」


『そうですよ、ルイーザさん。いや、ヘレナさん。でも、『婚約の儀』を行うならば、ご本人が必要でしょう? そこんとこ、さすがに、よく、聞いてないんですが。』


「儀式は、ヘレナ様のコピーが行うが、会見などは、一切行わない。もともと、神聖な儀式故に、それが習わしじゃから、問題もなにもない。夜間のみ、へレナさまご自身が、つまり、まあ、実施なさいます。たぶんね。」


『なるほど。よくできてますね。習わしというものは。』


「あなたが言えるものじゃあないでしょうに。憎たらしいこと。」


『おやおや、そりゃあ、失礼。ルイーザ様は、だいたい、ヘレナさんよりきついけど、やっぱり、そうなんだ。』


「わしは、いま、へレナじゃ。」


『はいはい。わかっておりますが、けっこう、ルイーザ様が混じってますな。』


「むむ。まあ、そうらしいが・・・。そこが、心憎いところじゃ。さすが、ヘレナ様というか。何と言うかじゃのう。・・・まあ、よい、停戦を指示せよ!」


『了解。政府には、あなたのお名前で、規定通り指示します。それと、侍従長につなぎます。あなたから、お話しください。火星側はどうしますか?』


「リリカ様に報告せよ。」


『了解。誰かさんが、カンカンかも。』


「わかっておる。」




 ************     ************



「くそ。どうなってるんだ。帝国政府が『停戦指示』? 皇帝が、創立式典まで、一時保養? なんだそりゃあ。」


 ダレル議員が、不満をぶち上げている。


「帝国内部の問題だ。われわれには手が出せないよ。」


 首相が答えた。


「くそ。ヘレナの仕業か。化け物め。」




 ************     ************



『ほほほほほほほ!いい気分だ。それに、パブロさんが、あんなに褒めてくれるとは思わなかったわ。』


『ヘレナさん、あれは、褒めてないんですよ。』


『いいえ、あれ以上の、ほめ言葉はないわよ。『化け物』よ、『化け物』、最高じゃないの。』


『ほうら、ダレルさんに報告が入った。どうしますかねぇ?』


『さああてね。リリカさんが位は上だわ。さあ、怒れ! だれるちゃん。お母様に盾つけるかな。それとも、まだまだ、赤ちゃんかな。』


『そりゃあ、怒る、ほら来た。』



 会議場内で、つかつかと、ダレルはヘレナに近づいた。


 唐突な行動だったので、一同が話を止めた。


「ちょっと、話したい。外に出てもらおうか。」


「はあ。なにを、失礼なことを。これでも、わしは、タルレジャ王国第1王女じゃ。」


「ぬあんとぬかす。太古の鬼婆のくせに。さっさと出てもらいましょう。ソー、まかせる。」


「はい。」


「おんどりゃあ、わしに、喧嘩売る気かのう? そっちのほうこそ、大古青鬼じゃろうが!」


 ヘレナは、急遽、火星標準語はやめて、日本語で応対した。


『ヘレナさん、場所柄、態度、悪いです。』


 アニーが割り込んだ。


『おどりゃあ、ルイーザみたなこと言うんじゃねーわ。だまっとれ。』


『はい・・・・』


「いいわ。出てやりましょうよ。けんかなら、わいは、負けんけーのお。」


 ヘレナは、ダレルの青い大きな顔を、じっとりと、なめるように見回した。


 普段の美しい、優雅で貴族的なヘレナとは、ちょっと、思い難い。


 それから、二人は、会場から出て行ったのである。




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