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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百六十四回


 ************   ************



 村沢は、吉田さんについて、とうとう、本宅の中に入った。


 真っ暗やみの中で、吉田さんの懐中電灯がふわふわと漂っている。


 村沢には、何がどうなってるのやら、わかるはずもないが、吉田さんは、何も明かりがなくとも、おそらく平気なくらいに、ここは知り尽くしているのだろう。


 どこかにある、電灯のスイッチを入れたらしい。


 ぶわ!っと、あたりが、まばゆいばかりに照りかがやいた。


「おわあ!」


 村沢は、思わず声を上げた。


 そこは、当然、『玄関』であるはずの場所だが、すでに、あたかも『宮殿』そのものの様な面持がする、きらびやかな場所だった。


 天井からは、大きなシャンデリアが、みごとに下がっている。


 純和風な雰囲気の外側とは、かなり、いや、まったく、異質な感じがする。


 といっても、ヨーロッパ風というのとも、かなり、違っている。


 非常に不可思議な彫刻やら、わけのわからない、変わった装飾に満ちている。


 一瞬にして、別の宇宙に、ワープしたようなものである。


「これは、また。悪趣味と言うか、素晴らしいと言うか・・・・」



 村沢の顔を面白そうに眺めながら、吉田さんは言った。


「どっちですかな?」


「そりゃあ、まあ、立派なものだとは、まあ、思いますがなあ。しかし、この建物、見た目は和風の木造ですが、中身は違うんではないの?」


「ずばり。その通り。さっすがですなあ。まあ、当時はこの世になかった素材です。今も、あんまり、ないかな。王国の王宮とか、大使館とか、日本合衆国政府の危機管理センターとか、首相官邸とか・・・」


「どうやって、建築許可が出たんスか? 元々は、火星人が作ったとか?」


「まあ、そこは、私が関与したものではございませんので。でも、まあ、そこらあたりが正解ですなあ。もちろん、そう、ずばりと言った訳じゃあないでしょうがね。当然、日本政府には、そうした見返りがあったわけです。極秘ですぞ。ここを建てた技術は、タルレジャ王国が太古から持っていた、というわけですな。今もね。こいつは、もし、核爆弾が直撃しても、平気なんだそうで。」


「はあ・・・・そりゃあ、あやしいですなあ。で、なんで、ぼくにここを見せようと?」


「まあ、こちらにどうぞ。」


 この本宅の外周は、今は、がっちりと雨戸が閉められており、中で煌々と照明が付いていることは、ほとんどわからない。


 いや、もしかしたら、雨戸が開いていても、わからないのかもしれない。



「なんだか、異様に広いですなあ。」


「まあね。外から見るより、内部は遥かに広いわけですな。」


「なんで?」


「まあ、それも、王国の技術というわけで。あえて言えば、魔法瓶みたいなものですかな。」


「さっぱり、判らないですよ。」


「ははは。さあ、ここです。どうぞ。」


 吉田さんは、入口の『管理ボード』に、なにかの番号を打ち込んだ。


 ほかの、センサー類も、稼働しているようだ。



 案内された部屋は、『首都博物館』のメイン展示室を、遥かに超えるくらいの広さがあるように見えた。


 いや、そんなものではない。


 むこうがわの端が、もう、見えないのだ。


 まるで、無限の空間のような感じがする。 


 ありえない広さだ。


「おわ! こりゃあ、お宝だらけじゃないですかあ。なんですか、ここは。どうして、こんな広いの?」


 村沢が絶句した。


「みな、本物ですよ。それぞれにね。たとえば・・・まあ、この国土に初めて住んだ『人』が、最初に作った『かご』とかもありますが、価値は専門家以外には、あまりないでしょうかな。ここは、現実の中の、『異世界』とか、いうべきか・・・。つまり、かならずしも、この部屋には、入れないのです。ふつうは、当たりまえの部屋にすぎません。本日は、特別な『暗号』を弘子お嬢様から頂いておりましたので、こうして入れましたが。でも、もう次回は使えません。また、新しい暗号を、いただかなくてはね。あ、で、あなたがお好きなものを、いっこ、差し上げます。ご自分でえらんでください。」


「あやしい・・・・なんでだ? なにもかも、あやしいじゃないか。」


「まあ、弘子お嬢様が、機会を見て、そうするようにと、おっしゃっておられましたので。」


「ふうん・・・・で、あの子は、ぼくにどうしろと?」


「いやあ。べつにどうしろとは、おっしゃってないんですが。ただ、ぜひ、仲良くしてほしいと、おっしゃっておられまして。」


「言うこと聞け! とか?」


「ははは。まあ、そのように解釈いただいて、よいかと思いますが。」


「ふうん・・・・まあ、いっこだな。じゃあ、選んで、その価値分だけ、言うこと聞いてやろう。」


「おおお。さすが、村沢さんですなあ。じゃあ、じっくりと、御検分ください。わたくしは、あそこの椅子までさがっておりますゆえ。ご質問があれば、どうぞ。あ、この『館内スクーター』を、ご利用いただきますと、早く見て回れます。」


 吉田さんは、タイヤもなにも付いていない、不可思議なものを差し出した。

 

「おう!」


 そいつにまたがり、ちょっと床を蹴ると、ふわっと浮き上がって、すすす、と前に進む。


 床に足を付けようとすると、ふわわっと着地する。


「こりゃあ、いいなあ。これもほしいなあ。」


「ああ、そいつは、この『空間』でないと、動作しないんですよ。いまのところは。」


「なんだ、その、いまのところ、というのは?」


「弘子お嬢さまの、ご意志次第ですから。」


「やっぱ、あの子は、化け物か?」


「ああ、そう言って差し上げると、すごく、喜ばれますよ。ご存じなかったんですか?」


「え? あ、そういえば、なんだか、以前、あったまきたときに、そんな冗談言ったら、確かに、むちゃくちゃ、喜んだような・・・。おかしな子だとは思ったが。まあ、『王女様』だから、ぼくなりには、気は使ったんだがなあ。」


「ああ、あなた、それで、気に入られたんですな。みなさん、『王女様』ということで、やたら、ちやほやするが、実は、『悪魔』『魔女』『化け物!』と言われるのが、弘子さまは、一番お好きなんですよ。」


「やっぱり、おかしいんだ。あの子は。」


「いやあ、そういう方ですから。」


「正体は、何なんだ?」


「だから、『化け物』ですよ。」


「くそ。わけがわからない。吉田さん、久しぶりに、本人に会わせてくださいよ。」


「いいでしょう。そのうちに。申し上げておきますから。」


「たのむよ、まったく、ここまで見せたんだ。」


「そうですな。」


 村沢は、その、膨大な展示物を見て回った。




 *************   *************




































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