わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百五十八回
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「なんで、あんたたちが攻撃してくるんだ?」
情報局長は噛みついた。
「ここは、『金星』なんだぞ。」
「こまった『金星人』さんですこと。」
ポプリスが強烈な皮肉を込めて回答した。
「2億5千万年、地主がいなくなっていた土地が、いまでも自分のものだと主張する方が、どうかしてるわ。『金星は』本来女王様の所有地であり、それを『金星のママ』を通して、ビューナス様が貸与してもらっていた。そのもっとも根源である『貸与契約』を御覧なさい。持ってないなんて、言わさない。1億年以上、あなたがたが『金星』の『支配権』を行使しない場合で、『ママ』の統治が成り立っていない場合は、あなたがたの『支配権』は、終了となるのです。そうして、その後の『支配権』は、『ド・カイヤ集団』が頂いた。だから、あなた方は、不法侵入。攻撃されて当たりまえ。ちゃんと、筋通して貰いましょうか。金星の、『再賃貸』をご希望ならば、ちゃんと申し込みしてください。もちろん、それなりの、賃料もかかる。」
「ばかばかしい。『金星』の支配権は、ビューナス様が『永久貸与』されたものだ。しかも、我々は、この宇宙に居らず、その時点で、契約上の時間の進行は止まったと判断される。よく契約書を読みたまえ。そう解釈できるのだ。文句あるなら、『女王様』に、確認してみたらいい。『例外事項』として、あげられている中に、『不可抗力』による一時的な金星外への避難は、この期間に算入されないとある。これは、『不可抗力』による避難だ」
「ありえない。都合の良い読み替えに過ぎないわ。あんたがたは、『女王様』によって、追い払われたんだ。その時点で、『不可抗力』という概念は消滅した。」
「むちゃくちゃだ。契約違反だ。我々は、断固、『金星』での居住を再開する。どうしても、認めないならば、しかたがない。武力の行使もやむ負えない。しかし、我々の持つ攻撃力は、かつてのものではない。まあ、あなたがたの能力が、どの程度向上したのかは、知らないが。」
「さっきの、へなちょこ応戦を見る限り、それは正しくなさそうだね。いいさ、やってごらんよ。」
「こらこら、あまり、荒立てるな・・・」
横から、キラール公の声がした。
「あんたは、おだまり! 役立たず!」
「おやおや、夫婦げんかが、あいかわらず絶えないようですな。それじゃあ、能力は知れてますな。」
「まてまて、キラール公の言う通り、あまり頭から荒立てるな。局長。」
ブリアニデスが割って入った。
「話し合いしようじゃないか。ポプリスさん。」
「おや、ぶりさん。あんたも、生きてたのかい。ご苦労なことだね。まあ、いいよ。ここにおいで。話があるなら、聞いてあげよう。」
局長は、いったん通信を閉じてしまった。
「総統。あやしいですな。ポプリスは、確かに、むかしから、まあ、あんなのですが、なんだか腹に一物ありそうです。やけに自信がありそうですなあ。」
「ふうん。やはり、『女王』を、先につかまえるべきじゃないかな。所在は確認できたかい?」
「探してるんですがねぇ。どうやら、『タルレジャ王国』という小国の『王女様』が、『火星の女王様』ではないか、と、おおかたの予測があります。ただし、そうした認識は、ごく少数の地球人しか持ってないらしいですな。『三姉妹』で、現在地球を支配しているのは、『第3王女』と『第2王女』のようです。『第1王女』は、ここんとこ、行方明のようです。背後に『火星人』どもが、いる。」
「報告します。火星人の宇宙船が、一機だけで、殴り込みかけて来てます。『捕獲』しようとしていますが、まったく効果がありません、非常に防御が固いようです。火星のダレル副首相が乗ってるらしい。さらに、巨大な宇宙船が一機、いや、一艘かな。全長標準サイズで8キロメートルと300メートル。『アブラシオ』と思われます・・・が、金星軌道上に待機。さらに、正体不明の『水星』サイズの巨大物体が接近。」
情報局長が答えた。
「なんだそりゃあ。・・・・ああ、これか・・・・。真っ青だな、『天王星』みたいだな。」
「わかりません。未知の存在です。ヘレナリアさんがくれたデータにもないです。」
「ポプリス。聞いてるか? 『金星』に接近中の、この、真っ青な巨大物体は何だ。」
「・・・・・・・・・」
「くそ。ポプリス、答えろ!」
「あんた、態度、でかい。来たら、教えてやってもいいわ。」
「くそ。」
「いいさ、行こう。」
ブリアニデスが言った。
「いや、総統自ら行かれる必要はない。」
「いやいや、今が正念場だよ。ここで行かなくていつ行くの? 局長、同行頼む。」
「・・・・・あい。了解しました。」
局長は、実は、昔から、ポプリスが大嫌いである。
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「さて、首相閣下。あなたも、ここはひとつ、金星人と、会って見ませんか?」
ダレルが、杖出首相に提案した。
「そうしたら、地球人で、歴史上、最初に『金星人』と会談した『要人』となる。あなたにとって、大きな、箔が付く。悪くないでしょう。」
「会うのは良いが、意味があるかどうかだよ。」
「そりゃあ、意味がある。あなたは、なかなか瞬発力があり、思いもかけない行動もするが、慎重すぎるきらいもあるようだ。『おけつを入れざれば工事がならず。。。とか』でしょう。」
「冗談ですか? 」
「いやあ、あなた『火星』の諺を一つでもご存知かな?」
「む。知らない。いいさ、誰とでも会いますよ。この際だ。」
「ははは。良いでしょう。それにね、あいつが出て来たという事は、お客さんは、もっと増えるという事ですな。」
ダレルは、『宇宙警部』の巨大な『移動警察署』を、指さしながら言った。
「こっちが、通信するまで、ほっとくつもりなんでしょう。仕方がない。」
ダレルは、『警部2051』に通信を入れた。
「ああ、こちらダレル。『警部さん』どうぞ。」
画面いっぱいに、『警部2051』の姿が浮かび上がった。
「やあ、だれるさん。お元気ですか? ぼくは、元気ですよ。なあんと、ここには『第1王女様』も御同乗ですよ。びっくりでしょう。」
「いや、別に。」
「ほう・・・・あ、王女様どうぞ。はい・・・・」
警部の姿が見えなくなり、『ヘレナ=弘子』が現れた。
ダレルは、考えてみれば、『弘子』とは、お互いにこうした感じの状況の他では、まともに話をした事がない。
「やっと会えましたね、ダレルさん。よくもまあ、やってくれたじゃないの。間もなく、ポプリスちゃんが、ブリアニデスさんと会います。あなたもいらっしゃいな。それとも、宇宙の彼方に放逐されたいのかなあ?」
「いや。あなたと、じかに喧嘩はしたくない。杖出首相も同席なさりたいそうです。」
「ほう・・・いいわよ。じゃあ、待ってるわ。」
画像は消え、普通の宇宙空間に戻った。
「首相閣下は、あの体のばかでかい『少女』は、ご存じなんでしょう?」
「そりゃあもちろん、我が国民でもあり、また、最も有名な方ですからな。」
「なるほど。いいでしょう。じゃあ、ポプリスのところに行きます。・・・・・『ああ。こちらダレル。ポプリスさんに通信。これから、そこに向かいます。お互い攻撃なしで行きましょうよ。』
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宇宙海賊『マオ・ドク』は、かなり疲れた『ぶっちぎり号』で、太陽系に帰還しようとしていた。
途中、修理を依頼した『宇宙クジラ』の本拠地では、腐れ縁の『エビス号』が滞在していた。
「うああ、ジニーさん、何してる、こんな場所で。」
「あんたの知った事じゃあない。」
ジニーは、あいかわらず、そっけない。
「アマンジャの行方は分かったのかい?」
「あんたの知ったことではない。」
「まあ、そう言うな、デラベラリ先生が泣くからな。」
「いや、自分は、別に泣きませんよ。」
デラベラリ先生が、そっけなく言った。
「それより、宇宙クジラからもらった情報では、我が『太陽系』に、昔の古き知り合いたちが集結しているようですな。覇権争いになりそうだと。それでも、行ってみますか?」
「まあ、どうせ、行くつもりだったんだ。お嬢が心配だから、このまま、行く。」
「あんたが知ってる『お嬢』は、すでに存在しないんじゃないのか?」
ジニーが意地悪を言った。
「そうんなことはないと思うぞ。姿は違っても、お嬢はお嬢だ。」
「まあ、お好きなように。」
「金星の『空中都市』が、太陽系の通常空間に、間もなく出てきそうだとも聞いたです。『宇宙クジラ』によれば、出発地点はわからないが、接近していることは間違いないとか。」
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キッチン少佐は、地球の月に侵入していたが、そこで、もう一人の『リリカ』と遭遇した。
『リリカ』は、彼の宇宙艇を発見し、通信を交わした。
そうして、クレーター内の基地に、キッチンを招待したのである。
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