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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百五十五回


  ************     ************



 シモンズたちは、真っ暗な空間に出た。


 いや、ほんの、ちいさな明かりが見える。


 目が慣れないと、よくは分からない。



「なんだろう、ここは?」


 ほぼ、同時に弘志が到着したらしい。


 ぼやっとつぶやいた。


 なにやら、あきらかに、向こうに人の気配がある。



「む、だれか、いるぞ! 誰だい! そこにいるのは!」


 シモンズが遠慮なく尋ねた。




「うきゃ~~~~~!! 出てけ~~~~!」


 悲鳴と共に、様々な物体が飛んで来たのであった。




 ************     ************

 


 皇帝ヘネシーは、ルイーザを呼んでいた。


 主要な課題は、みっつである。


 一つは、王国の『北島』と『南島』が、『帝国』の足元で、にらみ合っている事。


 ふたつめは、『第1王女』が、行方不明になっている問題。


 そうして、みっつめが、『金星』で起こっているらしい、異常事態についである。


 もちろん、それに付随する別の問題、たとえば、『地球帝国』の、創立式典に関する事項もあった。


 現在、もっとも、急を要しそうなことは、もちろん、みっつめの課題である。



「これが、金星から届いた、『南北アメリカ国』の探査機が捕らえた、最新の映像です。」


「これは・・・はっきり、せんのう。」


「まあ、遠いですから。この黒い点が、太古の時代に異空間に消え去った、『金星の空中都市』じゃと思われます。しかし、王国が、秘かに宇宙空間に『おいていた』人工衛星があります。陛下もご存じのとおりです。これは、さきの『火星人』と『王国』との戦闘において、『スティック・ミサイル』を打ち込んだあの衛星です。もっとも、多くの人々の記憶からは、すでに消去いたしました。少数の『不感応者』たちは、まだ覚えていますが、相手にされなくなっとります。これは、『第1王女様』が、秘かに宇宙空間に王宮の秘密工場から『空間転移』させたもので、ロケットで打ち上げたりはしておりませぬ。おわかりでしょう?」


「うむ。もちろんじゃ。しかし、姉上おふたりは、わしには、子細を、なにも語ってくれておらぬが。」


 皇帝ヘネシーは、不満げに答えた。


「まあ、確かに、そうなのですが、陛下。王国の、軍事機密自体のすべてを、陛下にお話する余裕は、いまだございませんでしたのじゃ。また、わしが、すべてを知っている訳でも、ありませぬ。そこで、良くお考えいただきたいのじゃ。陛下、『第1王女様』が、いま、ここに、いらっしゃらぬのは、大きな問題なのじゃと。」


「まあ、王国の、とくに『王宮』や『教会』の軍事に関しては、わしの領域ではない。帝国の『軍事』に関しても、そなたに任せたのじゃから、いちいち、文句は言わぬがのう。で?」


 皇帝ヘネシーは、はぐらかしてきた。


「ああ、はい・・・これが、『王国』の、その『秘密人工衛星』が、とらえた映像です。わし自身が、王国の『第2王女』の地位を温存していたのは、正解じゃったと思います。」


「まあ、そうかのう。・・・むう。これはまた、素晴らしいではないか。画質が違う。」


「そこが、姉上の恐ろしいところなのですじゃ。人工衛星というよりは、優れた人口知能を持った、『宇宙船』と呼ぶべきもので、そのエネルギーは、宇宙空間そのものから得ており、無限の寿命がありますとか。光の半分くらいの速度を、すぐに出すことが出来るほか、『空間移動』も、可能と聞き居ります。また、姉上の指令がなくとも、自分で判断して行動いたしますのじゃ。」


「いったい、どこから、持ってきた技術なのじゃ? 地球の技術ではあるまい。」


「詳細は、姉上でないと、わかりませぬ。ですから、なおさら姉上は必要なのですじゃ。陛下。姉上は、いずこなのでありましょうや?」


 ルイーザも、自分が知っている事を、しっかり隠していた。



 たとえば、『水星』の地下には、ヘレナが設置した多数の『惑星間ミサイル』がある。


 太陽を破壊する事さえも可能なしろものであるが、もちろん太陽系の反対側を狙う事も可能だ。


 少々、水星と金星の距離が隔たっている時期でも、まったく問題はない。


 地球を狙う事も、もちろんできる。


 その管理は、アニーが、たんねんに行ってきているのだ。


 『水星』は、ヘレナによって、惑星ごと、兵器そのものに改造されていたのである。


 『教母様』は、この事実をご存じである。



 ヘレナの分身になっているルイーザが、こうした情報を知らないわけがないのだが、発射できる数や、威力は、制限されている。



「わしは、知らぬ。」


 ヘネシーも、知らぬ存ぜぬを通している。


「・・・・・ふうん・・・・そうですかあ・・・・ああ、しかし、これが、金星の『空中都市』の、姿な訳ですじゃ。王国の古い資料によれば、この一つの都市ごとに、巨大な攻撃力を持っておるとも、伝えられております。おそらく、地球人の現在の技術では、まず、対抗はかないますまい。しかしながら、『第1王女様』がおられれば、話は別じゃと、思いますがな。ときに、火星側は、当然、地球を守ってくれるのでありましょうな。そこは、陛下の、受け持ちでございますゆえ。」


「そなたでは、到底、相手が出来ぬと?」


「まあ・・・・やってみなければ、わかりませぬが。この数は、並大抵の数ではございませぬ。まだ、詳細な数は把握できておりませんが、少なくとも、数百、もしかしたら、数千に及ぶのかもしれませぬ。相当数が、まだ、太陽と金星の間にいるのではないかとも考えられます。」


「襲って来るかどうかは、それこそ、まだ、わからぬであろうが・・・。」


 皇帝ヘネシーは、ダレル側から、コンピューター『カイヤ』を通して、すでに大方の情報は得ていた。


 『火星側』は、『金星側』と、すでに接触を始めているらしい。


 また、『ド・カイヤ集団』が、『空中都市』と交戦中になっていることも、すでに知っていた。


 ただし、その詳細な内容は、まだ伝えられていなかった。


 一方、ルイーザも、その情報を、ちゃんとつかんでいたのである。 





   **   **   **


 


 ふたりの話は、どうも、折り合いが良くない。


 当初は、ヘネシーが圧倒的な優位を確保していたが、例の洗脳事件以来、ヘレナがルイーザにかなりのアドヴァンテージを与えた様な感じになっている。


 ヘネシーも、姉二人をコントロールする『策略』に失敗して以来、さすがにそれは、ダレルの『策略』であったと言い訳してはいるものの、自分の正体が明らかになってしまったことから、『総督』と、まったくの無役だが、暗黙の力を持つヘレナに対して、相当なやりずらさを抱えてしまったことは事実である。


 しかし、それも、あと少しだ。


 自分の後は、どうなっても、ヘレナが継がざるを得ないようにする。


 『皇帝』は、自分の後継ぎを、無条件に指名できる権限を、ダレルに認めさせる手筈になっている。




 アニーは、じっと、この様子を観察していたが、双方が相手の出方を窺っていて、情報の出し惜しみをしている状態で、なかなか話がうまく進まないことは、どうみても、明らかだ。


 アニーとしては、たいへん嘆かわしい状態であった。


 ヘレナがいれば、こうしたことには、おそらくは、ならないだろうに・・・。


 しかし、それでも、最終的に、『総督』は、『皇帝』の命に、従うことが求められている。



 アニー自身は、ヘレナから、『指示するまでは、勝手に動くな』、と言い付けられている。


 ただし、『細かい事は別よ。』とも。


 この『指示』が、アニーにどういう反応を起こさせるのか?


 ヘレナは、もちろん、よくわかっていたのだ。



「よいか、『総督』、地球帝国は、よきアドヴァイザーである、ダレル将軍の意見を聞かねばならぬのじゃ。そなたも、そうじゃ。わかっておろうの。また、そなたの意見は聞くが、わしの指示は絶対じゃ。よいかな?」


「それはもう、わかっております。陛下。」


「ならば、よい。では、この金星の問題に関しては、ダレル将軍の指示を受け入れること。よいな?」


「はい。わかりました。その、指示は、いつ来るのですか?」


「間もなくじゃ。そなたを待たせはせぬ。」


「わかりました。」


「『王室』と『教会』が持つ、全ての兵器を、いつでも使える状態にして、待機せよ。」


「御意。ただし、わしが使えぬものもありますゆえ、そこは、ご理解ください。」


「ヘレナさまでないと、使えぬものがあると?」


「そうです。」


「ふむ・・・まあ、わかった。それは、仕方がない。次に、北島と南島の、にらみ合いじゃが、わしの本来の意志は、そなたもよく知っておろうが。」


「はい。おおかたは。」


「ゲートを、解放せよ!」


「はい?」


「ゲートを全て解放し、南島の勢力の駐屯を、まずは許可せよ、というておるのじゃ。すみやかに実行せよ。」


「ああ・・・・それは、さすがに、『国王陛下』と、『第1王女様』と、『教母様』の同意が必要でございます、陛下。」


「必要ない。『タルレジャ王国』の『国王』と、『第1王女』の権限は、『地球帝国皇帝』の名において、停止する。そなたが、『その』すべての権限を継承せよ。『教母』さまの拘束は、すでに命じた。」


「なんということを! それでは、『北島』の民が立ち上がります。そのようになっておるのじゃ、陛下。内戦になります。」


「よい。『ダレル将軍』から、火星の正規軍の導入を許可されておる。次回正時をもって、『北島』に介入する。そなたは、『ゲート』を開ければよい。命令じゃ。よいな?」


「わかりました。・・・お従い、致します。」


「それでよい。よいか、総督・・・・いや姉上、これは、わしの長年の目標じゃ。『北島』の開放は。いまこそ、実行するのじゃ。多少のいさかいは、この際、仕方がない。」


「多くの民が、死を選びます。」


「いいや、死なせぬ。そこは、ダレル将軍にしっかりと、依頼しておる。」



『む・・・この子、何をするつもりなのか・・・お姉さまに与えられた力を、いまこそ、行使せねばならぬかのう・・・』



 ルイーザは、覚悟していた。




   ***************     ***************


























 
















  ***************  ふろく  ***************

 



「やましんさんは、ツイッター、とかっていうものは、やらないんですか?」


 幸子さんが、今夜は両手に、おまんじゅうを握って、たずねてきました。


「いやあ~~~。またく、しません。やりかたも、しりません。する気も、ありません。」


「ふうん・・・・幸子もよく知らないけどお。どうして?」


「きっと、めんどくさいから、かな。」


「なるほど、納得。やましんさんみたいな、ガサツな性格では、不可能ですね。」


「いやあ、それもそうだし、精神的に打撃を受けることが、問題なんです。自分が信用しがたいからね。触らぬ神にたたりなし、なのです。」


「幸子も、神様ですけど?」


「あ、幸子さんは、例外です。幸子さんにいじられても、ショックはすくないから。」


「そりゃあ、そうでしょうとも! いくじなしなんだから。」




  ***************     ***************

 









































 



 




































 
















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