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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百五十四回


  

  ***************   ***************



 杖出首相は、月のかなり近くまで連れて行かれた。


 ダレルの旗艦は、そう大きな宇宙船ではない。


 全長は、500メートルほどで、コンパクトなものだ。


 全長が、8キロはあるアブラシオに比べたら、実に小さい。


 それでも、抜群の防御力がある。


 攻撃より、防業に力を入れた宇宙船である。


 もし、アブラシオが攻撃してきても、こいつを破壊するのは非常に難しいだろう。


 もっとも、そう思っているのは、ダレルだけかもしれないが。



 ときに、ダレル自身は、2憶年前の自分と、いまの自分が、そう変わっているとは考えていない。


 もし、変わったとするならば、それは周囲の方である。


 しかし、リリカは、それは間違いだとさかんに指摘して来る。


「あなたは、変わった。別人みたい。今は、ただの権力者みたい。むかしは、もっと純粋だった。」


 とか、なんとか、文句を言うのである。


「あんたは、女王の傀儡だし、とっくに出家したような存在じゃないか。『魔女』そのものだ。ぼくは、現役ばりばりの、『火星人』なんだ。」


 

 


『火星の再興。それがすべてなんだ。他に何もない。別に地球人をさげすんでるわけでもない。彼らはほろびかけている。かつての火星や金星のように。それは阻止してやりたい。両方成り立たせるんだ。いくらかの無理は出るさ。』


 ダレルは、そう思う。


『ダレルさん、杖出首相をお招きしました。』


 部下には、『ダレルさん』と呼ばせている。


 自分は、悪役宇宙人の柄じゃあない。


「ああ、わかった。応接室にお通しして。地球のコーヒーを出してください。ぼくが、このまえ、あの温泉で買ってきたのが、まだ賞味期限内だろう。」


『はあ・・・ええと、・・・はい、まだ、大丈夫のようです。』


「よかった。大切に扱ってくださいよ。ぼくとしては、協力者として同意し合いたいんだ。」


『了解。』




   **********   **********



 

 杖出首相は、いくらか不気味ではあるが、それほど違和感のない部屋に通された。


 そこに、ごく、当たり前のように見える、コーヒーが出て来た。


「大丈夫ですよ。首相。ほら、これが、そのコーヒーの入ってた、ぱっくです。」


 すぐに、身長2メートル半はある、巨大な人物が現れた。


「ダレルです。首相閣下にお目にかかれて、光栄です。あなたは、地球を代表する有力者のおひとりと認識しております。」


 威圧感を感じながら、しかし、まったく、そういう雰囲気は出さないまま、杖出首相は答えた。


「日本語がお上手ですな。杖出です。」


 ダレルは、握手を求めてきたが、首相は無視した。


「まあ、地球上の言語は、すべて習得可能です。もっとも、だいたいは、そのたびごとにですが。しかし、この言語は、『女王』も使う、重要な言語ですからな。常識として、習得しました。」


「なるほど。『タルレジャ王国語』も、ですかな。」


「もちろん、そうです。あの王国は、地球上に誕生して2億5千万年経ちます。地球人は認識していないようですが。」


「あなたがたの存在自体が、信用できないと、まともな地球人なら、考えて当然でしょう。」


「ここに、来ても、なお、そう思いますか?」


「地球上では、ほぼ、どのようなトリックも、可能になった。簡単には信用できないのですよ。あの王国の『第1王女』が持つ、異常な能力はわかっています。そこまで否定はもはやできない。それでも、あの荒廃した『火星』に、生命があるとは考えにくい。まして、今に続く文明があるなんて、どこからも証拠が見つからない。」


「まあ、もちろん、そうでしょうなあ。あなたがたの力ではね。しかし、トリックはトリックだ。必ず、どこかにおかしいところがあるものです、ときに、首相閣下。今、太古の金星の『空中都市群』が、金星を再び手に入れようとして、その『金星』を根城にしている、ある『勢力』と闘っています。見に行きませんか? おそらく、この後、『火星』にも、そうして、『地球』にも侵攻するでしょう。話し合いはするつもりですが、場合によっては、軍事衝突になるかもしれません。地球人だけで、対抗できますかな?」


「そらあ・・・・まだ、聞いてない情報だ。いいでしょう。行けるのなら、行ってもらいましょうか。それと、地球と連絡したい。」


「よろしい、では、まず金星に行きましょうか。そうこうしていたら、さすがの地球側も、異変に気が付くでしょう。・・・・・『金星に進路を取って。ただし、慎重にね。』」


『了解。進路、金星。』




  ************   ************


 

「事務総長。これは、おかしいです。」


「ふん・・・・これは、『金星』じゃないか?」


「そうですが、ここ・・・・ほら。大きなものが、たくさん集まっているような・・・・」


「何時の写真かね?」


「さっき、『南北アメリカ国』の、『金星探査衛星』が送ってきた最新画像です。でも、こっちは、ほら、数が減っているでしょう。ドーバー博士の見解では、大気中に入ったんじゃないかと。」


「ふうん・・・『地球管理局』は、何と言ってる?」


「確認中ですが。まだ、返事がない。」


「早く返事しろ! と、言いなさい。組織上、私の意向は尊重されるはずだ。『皇帝陛下』と『総督閣下』には、伝わっているのか?」


「はい。そのはずです。」


「『総督閣下」と、話がしたい。すぐに、伝えてください。」


「はい。事務総長。」


「『地球帝国創立式典』まで、あと一週間だ。おかしなもめごとは、起こしたくないが、気になる。」


「ええ。同感ですよ。」


「王国の『第1王女様』は?」


「行方不明のままですが・・・・、あの杖出首相も、消失したらしいです。」


「そりゃあ、『火星人』が、絡んでるんじゃないのか?」


「わかりません。もしそうなら、我々の手には負えないかもしれないです。」


「ふうん・・・・」


 事務総長・・・『初代地球帝国大統領』・・・は、机の上でじっと手を組んだ。


 けっして、ただ、座って居るだけの人ではない。


 それでも、『総督ルイーザ』の、意識統制下にはある。 






 ***************   ***************

 



 『アブラシオ』は、じっと太陽の周辺で、様子を窺っていた。


 ヘレナからの指令は、まったく、何も出ない。


 アニーとは、連絡し合っているが、アニーもヘレナの居場所が分からないままにいる。


 いますぐ、介入する理由はないが、もし、『地球』が金星の『空中都市』などに攻撃されたら、話は別である。



『どんな事態でも、地球は守りなさい。』



 それが、ヘレナからの変わらぬ指令だったからだ。





   ***************   ***************










 
















































 






 


 




 


 


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