わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百五十一回
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「このような蛮行が許されるはずが無かろう。杖出首相を再教育し、効果が無ければ、交代をさせるのじゃ。彼が出した、『R2P』は、無効じゃ。』
皇帝ヘネシーは、人間の側近を傍に置かず、ほとんど『コンピューター・カイヤ』を通して話を聞き、指示を出すようになっていた。
もちろん、時には人間にも会う。
ジャヌアンの意向を受けた、例の『取調官長』などもそうだ。
彼には危険性と言うものが、ほとんどない。
一定の地位を狙ってはいるが、それだけだ。
彼が求めているのは、安定した収入と、自分の好きなことができる時間だ。
核兵器の廃絶などは、彼にとっては重要問題ではない。
だから、別に反対行動もとらない。
杖出首相は違う。
第一、彼には大きな権力がある。
日本合衆国は、タルレジャ王国同様に小さな国だが、侮れない力がある。
姉二人が絡んでいるだけに、さらに、なかなかやっかいな相手である。
『陛下。杖出首相は、一国の首相です。あまり簡単にはお考えになりませんように。しかも、残念ながら、手続き上の問題があって『R2P』は条約上いまだ有効です。『第1王女様』は、日本合衆国の国民でもあり、国民の保護を申し出ても、それは当然ではあれ、おかしくない。もし、『国連』・・つまり『帝国側』が拒否したら、自己否定になります。積極的な協力をすべきではないですが、表向きは協力しなくては。だから、首相の拘束は問題です。』
「拘束ではない。研修じゃ。よいな。すぐに行動するのじゃ。」
『はい、わかりました。ただちに、研修に行ってもらいます。』
「それでよい。そもそも、ヘレナ様を、あの場所から連れ出すなどということが、可能なのか?」
『ダレル将軍のお考えでは、不可能です。ただ、ひとり、シモンズという『多重スパイ』に、少し懸念が残ると。なんでも、大昔の宇宙海賊の子孫とか。』
「2千年位なら、子孫もあり得ようが、2億年も経てば、そのようなことは無意味じゃ。」
『まあ、そうですが。中抜きはしているようです。』
「『不死化』しておったと?」
『はい。確実な資料はございません。なにしろ、海賊ですから。アニーなら知っているのでしょうけれど、接続は禁止されておりますから、今すぐにはわかりません。』
「ふん。・・・・・まあ、よい。わしの役目は決まっておる。姉上には歴史通り『皇帝』になってもらわねば困る。話だけで、聞きわけて、受け入れはすまい。」
『はい。何度も打診しましたが、それは『拒否』なさっております。』
皇帝ヘネシーは、もちろん、切り札がさらに必要なことくらいは、十分、判っていた。
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「総督、ついに、元の宇宙空間に出ます。」
あの、偉大なカタクリニウクの後継者は告げた。
「そうか。どこに出る?」
「太陽系の中心。水星の近くに出そうですな。熱いですよ。」
「それは、よい。好都合だな。金星のそばだ。最高だろう。」
「もちろん。すぐに、まず、『金星』を押さえましょう。」
「ああ、もちろんそうだが、『火星』も押さえなくては。戦闘部隊を火星にもすぐに送れるな?」
「もちろん。手配済みです。この長い時間をかけて、我々の技術は各段に進歩しました。まあ、相手がどうかは、判らないですけども。」
「やってみようよ。もし、どうにも歯が立たなければ、すぐに和平交渉だ。」
「了解。」
「まあ、久しぶりに、楽しみな事だ。」
実際のところ、ブリアニデスは、うきうきが止まらなかった。
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ジャヌアンは、深く瞑想していた。
彼女のダンスには、瞑想が絶対に必要なのだ。
ここに閉じこもってからも、毎日踊り続けている。
観客は、この特殊な監獄の衛兵だけだ。
通常の看守ではない。
皆、腕利きの兵士たちだ。
ただし、全員、取調官長の協力を得て、洗脳してしまっている。
何をやっても自由だが、無茶はしない。
自分に遺された道は、一つしかないからだ。
過去の自分は、ここから太古の過去に遡った。
それは、間違いだったことが分かっている。
今回は、正しい道を歴史に与える最後のチャンスなのだ。
「ジャヌアンさん。面会だ。」
衛兵が伝えに来た。
「ほう・・・・」
我に返ったジャヌアンは、牢獄から出された。
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