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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百四十六回


 ************   ************



 杖出首相は、じりじりしていた。


 このままでは、なし崩しに、地球は自称火星人に支配されてしまう。


 実態はすでにそうだけれど、まだ、最後の輪は閉じていない。


 首相はそう思っていた。


 その鍵を、『第1王女様』と、その父親である、古い友人の、あの『国王』が握っている。


 ところが、その二人とも、自由が利かない身になってしまったらしいのだ。


 残念だけれど、この国の持つ力では、なかなか公式には、どうにもならない。


 とはいえ、『第1王女様』は、さらにまた、『第2王女様』も、まだこの国の国籍を持ったままだ。


 国民を保護する義務が政府にはある。


 非常に危険だけれども、ここは一発勝負に出る必要があるだろう。


 絵江府さんあたりが知ったらば、妨害に出てくることは、まず間違いがない。


 自分の政権がもし終わったら、絵江府が組閣することになるのは、ほぼ確実である。


 逆に言えば、自分には非常にチャンスは少なくなっている。

 

 だから、やるなら今しかない。


 今ならば、自分に権限がある。


 杖出首相は動いた。



 **********     **********



「はあ・・・やはり、しっかりと見張られてましたかあ、まあ、そうだよな。うんうん。」


 『うんうん』と結ぶのは、彼の癖である。


「まあ、そう、思ってたんでございましょう。村沢さま。」 


 吉田は新鮮なタオルを、汗びっしょりな村沢に渡しながら言った。


「はいはい。まあね。退屈だから、ちょっと遊びたかったんですよ。あなたとね。うんうん。」


「はあ・・・それにしちゃあ、あせびっしょりな。なにを企んでおいでかな?」


「お風呂を、いただきたくて・・・いやあ、通じないか。まあ、ぼくは、あせっかきだからなあ。あまり待たされるのは、嫌いだしね。よっしゃ、吉田さん。ここは、ぼくとあなたの仲だ。教えてくださいよ。みんな、何のお話を、してるのかなあ~~~~?うんうん。」


「論理が一貫しておりませんな。確かに、長年あなたのことは知っておりますが、べつにお友達ではございませんゆえ、そのように申されるのは、筋違いというものでございましょう。」


「ほう・・・。ねえ、吉田さん、ぼくはね、あなたのことも、可能な限り調べたんだなあ。しかし、調べれば調べるほど、あなたのことは分からない。たしかに、住民登録はあるが、どうも、ホンモノとは思えないんだなあ。裏が取れないと言うかなあ。あなたには、過去がない。あなたを知ってる人もいない。まったく出て来ない。うんうん。おかしいでしょう? 住民登録の住所には、なにもない。」


「そりゃあ、あなた、いまでは、誰も住んでおりませんゆえ。」


「じゃあ、あなたはいくつなのかな? あなたのご出身の島というのは、すでに100年近く人が住んでいた形跡がない。ご両親という方も、実在が確認できない。うんうん。」


「あなたさまの狙いは、この、中村善五郎でありますかな?」


「うん。」


「はあ・・・・?」


 沢村健司は、ぽんと膝を叩いて立ち上がった。


「ねえ、吉田さん。あなたは、先先代から、この家の家令だった。そうですよね?」


「まあ、そうですが。」


「この家のことは、知り尽くしている。」


「いえいえ、必要以上には立ち入らない。それが極意ですゆえ。」


「ふうん・・・この写真の主は、あなたかな、吉田さん。」


 古い写真である。


 非常に古いだろうと思われる。


 背景に映っているのは、どうやら、タルレジャ王宮であるらしい。


 しかも、そこに立っている、愕然としそうな美女は?


 その隣にいるのは、どうみても、吉田その人である。


「ほう・・・これはまた。大変、古風な写真ですなあ。」


「そうなんですよね。うんうん。この写真、いくら調べても、他には出回ってない。つまり、ぼくの知る限り、この世にこれ1枚しかないらしい。まあ、もっとも、これは、コピーですがね。うんうん。まあ、もちろん、あなたは持っているのかもしれないが。原板がどこにあるのかも、わからないが、あるとしたら、タルレジャ王宮かな。うんうん。」


「ふああ~~~。それはすごい。」


「ねえ、吉田さん、この絶世の美女。ご存知ですか? いやあ、知らないわけがない。違いますか?」


「そりゃあ、あなた、ここに勤めるものは、まあ、知らないでいることは、むしろ、むつかしいでしょうなあ。これは、アヤ姫様ですな。ご本宅の写真の間には、非常に珍しい、お写真が飾ってあります。しかし、これは、見たことないものですな。」


「ずばり。そうです。でもね、これはもう、100年以上前の写真でしょう。そこに、なんで、あなたが写っているのかなあ? うんうん。」


「ははは。なんで、これが吉田だというのですかな。似ている人間は多いものですぞ。」


「そうなんですがねぇ。念のため、あなたの写真と、これとを専門家に見てもらったんですがね、まあ、なんせ古いし、確定はもちろんできませんがね。まず、同一人物だろうと・・・ね。なんで?」


 沢村は、吉田の顔を覗き込んだ。


 吉田は、ぴくりとも、表情を変えない。


「さあ? わかりませんなあ。」


「ふうん・・・いいでしょう。でもね、ぼくは、この人物が誰か、調べたんですよ。そりゃあもう、苦労しました。でもね、あなた、この世に、まだ、アヤ姫様を実際に見たことがあるという人物が、生きていらっしゃること、ごぞんじですか?」


「へ?」


「びっくりでしょう?150歳ですよ。150歳。でも、さすがは、長寿で知られる王国だ。いらっしゃったんですなあ。生き証人が。秘かに生きていた。まったく、驚きでした。ね、この子ですよ。ほら、ここに、小さく映っている姿があるでしょう。どうやって入り込んだのか? 不思議です。でもね、この子が生きていたんです。」


 写真の端っこに、女性に手を引かれている、幼い子供が写っている。


 王室の公式な写真としては、あまりありそうにない。


 女性の姿は、はっきりせず、顔も判別しにくい。


「むむむ。これはまた、面妖な。」


 吉田がつぶやいた。




  ************   ************









 

























 

























  
























 











 






 







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