表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百四十三回


 ************     ************



 松村家の『こどもたち』による『兄弟姉妹会議』が始まろうとしていた。


 この会議は、まったくそのまま、『マツムラのこどもたち会』と呼ばれている。


 兄弟姉妹全員が、各自のおこづかいから、一定の会費を支出している。


 社会人である、上の姉と兄は、それなりに会費負担が大きく、またその上に『寄付金』なんていうものも収めていた。


 多額の個人収入を上げているであろう『双子の姉妹』、つまり弘子と道子は、それにもかかわらず、学生会費だけである。

  

 かなりの『寄付金』を出しているらしい洋子の姿は、スクリーンの中に、時々動く美しい腕だけが見えているのみである。


 通常考えたら、それが洋子かどうかさえ怪しいということなのだけれど、それは明らかに洋子なのである。


 背景の部屋の壁に映っている絵は、500年ほど前にベネチアで、ある著名な画家によって描かれた絵で、『世界芸術遺産』クラスのものでありながら、世間では、全く知られていない絵画である。


 ただし、3人の専門家の鑑定を受けていて、間違いなく本物とされている。


 さらに、この洋子の居室の中でも『中央の部屋』と呼ばれる特別な部屋には、どうしたって洋子以外は

絶対に入る事は不可能である、とされる。


 双子の姉妹以外の、ほかの『こどもたち』は、もちろんまったく知らないことだが、あのリリカでさえ、この中央部に直に移動してくることはできない。




 司会は、明子である。


 いつも、そうだ。


「では、始めます。今日は、これまでになく深刻なお話し合いをしなくてはなりません。このような事態が生じたのは、本当に残念なことです。」


 明子はそう切り出した。


「今日は、特別に、『松村コーポレーション技術本部』の『本部長様』に、『職務外』にてお出で頂いております。もちろん、『こどもたち会』の会計から、講演に対する既定のお礼はお支払いいたします。」


 明子は少し間を開けた。


「さて、現在、お父様・・・つまり王国の国王様は、ずっと拘束されたままの状態です。それも、今日は出席していただけなかったのですが、『皇帝陛下』、すなわち、友子さんの指示によってです。さらに、『第1王女様』、すなわち弘子さんも、同様に拘束されたようなのですが、居場所さえわかりません。これも、おそらく『皇帝陛下』のご指示によるものです。わたくしたちは、もちろん、『皇帝陛下』に全面的な忠誠を誓うものですが、なぜ、拘束なさったのかが、ご説明いただけないのです。お姉さまは、なにか独自情報をお持ちですか?」


 明子は、さっそく、洋子に話を振った。


 姿は見えない洋子が、答えをした。


「いいえ。」


「・・・・それだけ、ですか?」


「はい。」


「うん、まあ! お姉さまともあろうお方が。そこにじっとおられて、情報収集なさっているのでしょう?何もないはずが、ないんじゃあないですか?」


 明子は、昔から、わりとずけずけと、洋子にものを言う。


 まあ、昭夫がさっぱり役に立たないので、それが自分の役割だと確信もしている。


「そうはおっしゃられましてもねぇ・・・わたくしも、『侍従長様』や、さらに『教母さま』にも随時状況をお伺いしておりますし、『王国首相様』にもお伺いいたしました。しかし、誰一人、詳しいことをご存知ではないとおっしゃいます。仕方がないので、本日ついに『皇帝陛下』に、じきじきにお尋ねいたしました。お話しは、していただけました。光栄なことです。お父様が、お元気であることは、お認めくださいました。しかし、直にお話することは、まあ、元々、弘子さん以外は出来ないわけですが、やはり、お認め下さいませんでした。お父様のお世話は、王宮の女官さまたちが、そのままなさっているそうです。なぜ、解放していただけないのか? お尋ねしましたが、ご回答はいただけませんでした。弘子さんに関しては、ノー・コメントでした。それだけです。残念ながら、弘子さんも含め、よい手立てはございません。今のところは。推測では、お父様が『核廃絶』に関して杖出首相の肩を持ったことが『皇帝陛下』のお怒りを買っているということだとは思われますが。」


「はあ。でも杖出さんは、『核廃絶』に結局賛成したでしょう。おかしいですよ。じゃあ、『日本合衆国政府』は? 協力してもらえないのですか?『杖出首相』は? あれほど、企業としても協力しているのですよ。でしょう?」


「はい、『杖出様』とも、先般お話しいたしました。『努力する』というご回答はいただいておりますが、進展は見られません。」


「あのお・・・・」


 弘志が手を挙げた。


「どうぞ、弘志さん。」


「この際、『火星人』に頼んだらどうなんですか?」


「まあ、あなた、『火星人』に連絡が取れるくらいなら、苦労しません。」


 明子が、いらいらしたように答えた。


「そうかなあ。ぼくはね、そこが不思議なんだ。相手は、きっと話しに応じてくるよ。先の一騎打ちの際、王国側が使った武器の多くは、マツムラ製なんだろう? 弘子姉さんがからんでるんでしょう。きっとね。良い関係を築きたくないと思うはずがないよ。彼らにも利益があると考えるさ。」


 弘志は、自分自身が『女将さん』や『宇宙警部』と接触していることは、話すつもりがない。


 ましてや、雪子の事は。


「あんた、自分で、そう考えたの?」

 

 明子が詮索するように尋ねた。


「そりゃ、もう。他に誰が考えるの?」


「誰かが、入れ知恵してないの? と言ってるのよ。」


「たとえば? 誰?」


「そりゃあ、まあ、色々いるでしょう。それこそ、両方の政府筋とかどこかの諜報機関とかさ。弘子さんは、あなたと『意識』が通じるとか、そういう噂もあるし。」


「ない。です。」


 弘志は、強く否定した。


 かえって、おかしかったかな・・・と本人も思ったくらいに。


「あ、そう。」


 明子は、それ以上は、追及して来なかった。


「ねえ、君たち、しかしだ、これが『皇帝陛下』がお決めになった事ならば、仕方がないよ。」


 昭夫が口を出してきた。


「そこで、やはり、『総督閣下』しかないだろう。仲裁できるのは。あたりまえなんじゃない?『閣下』には連絡してるんですかな。渉外担当役員様は?」


「そおりゃあ、あなたがするべき事でしょう? 長男様? あなたの役割ですわよ。」


 明子が言い返した。


「わたくしが、お伺いはしております。」


 洋子が間に入ってきた。


「弘子さんの、この情報が入ってすぐにも、お尋ねいたしました。」


「ほう、で、なんと?」


 昭夫が救われたように尋ねた。


「驚いていらっしゃいました。どうやら、『総督閣下』にもお知らせなく、実行されたようです。まあ、からんでいらっしゃるのは、『パブロ議員』さんのようですね。」


「やっかいな・・・!」


「天敵ね。我々『こどもたち』の。」


「議員さん側には、接触できないんですか?」


 珍しく、優子が発言した。


 全員がびっくりした様だった。


「そうですね。優子さん、あなたがおっしゃる通り、議員さん側にもお尋ねはしました。ご本人は、忙しいということで、応じてはいただけませんでしたが、秘書のガヤックさんがお答えくださいました。」


 洋子が答えた。


「あの人は、良い人だ。」


 昭夫が言った。


「それはそうです。ただ、弘子さんの件は、極めて政治的な問題も大きく、今の時点では回答できないとの事です。ただ、身体に危害を加えるようなことは『させない』とも。それだけは、自分が保証したいと、おっしゃいました。」


「思い切った事をおっしゃいますのね、あの方らしいわ。」


 明子がつぶやいた。

 

「まあ、ガヤックさまは信頼できる方です。」


 洋子もそう言った。

 

「パブロは信頼しにくい人だよ。都合のいい時は、いい顔するがね。」


 昭夫は、個人的にも、あまりパブロ議員が好きではない。


「どちらかと言うと、わが社と王室や教団との関係を、悪く宣伝したいらしいからな。」


「あのひとは、政権を狙ってるのですから、必ずしもマツムラを叩くだけでは、うまくない事は、分かってるはずよ。」


 明子が机をこつこつと叩きながら言った。


「パブロ議員は、ババヌッキ社との関係が深いと言います。ババヌッキ社は、ご承知のように『食料から軍事まで』と、わが社との競合分野が大きい。なにか、考えていらっしゃることが、あるのでしょう。」


 洋子が珍しく、他人を疑うようなことを言った。


「うちも、お饅頭製造からやってるんだもんね。」


 弘志がちょっと、からかうように言った。


「あんたね、将来会社背負う気があるなら、もうちょと、真剣に言いなさい。王室に渡すわよ。『不思議が池お気楽まんじゅう』は、重要な関連会社です。」


 明子である。


「おお、こわ。」


 全員が、大きく笑った。


「ま、そういうわけで、さっぱりお話しが進みません。そこで、ここで、本部長さまに講義を頂きましょう。」


 明子は、内線電話を『吉田さん』に入れた。




  ************     ************



  

 


















  ********** ふろく **********



「やた、お饅頭が出ました!」


 その、おまんじゅうを頬張りながら幸子さんが言いました。


「ぼくにもください。」


「や、弘志クン、どうしたの。」


 突然、弘志クンが現われたので、びっくりしました。


「いやあ、それがですね。弘子姉さんもいないことだし、ちょっと休息に来ました。やましんさん、元気ですか?」


「まあね。変わりはないです。」


「じゃあ、よくないんだ。」


「まあ、ね。」


「あの、洋子姉さんが、ビュリアさんだというのは、本当ですか?」


「あれ、君は知らないはずだよね。」


「またまたあ、やましんさん、お人が悪い。このものがたりの特徴は、多くの主人公が、2憶5千万年前から不死になって生き続けていることでしょう。なら、きっとぼくだって、誰かの引き続きなんでしょう?誰なのかなあ・・とか、思って。聞きに来たんだ。」


「ふんふん。そらあ、幸子も知りたい。」


「君は君。それ以外じゃない。それが回答です。」


「そんなあ、たとえば、パル君とか・・・」


「予約済みです。」


「え? 誰だろう・・・正晴さんかな・・・・」


「まあ、いいじゃないですか。自分は自分。他の誰でもない。」


「ふうん。じゃあ、幸子は、誰なんだろう?」


「幸子さんは、神さまでしょう。」


「まああ、そうだけど。でも、元人間ですよ。ならば、誰かでしょう? きと。」


「まあ、もう少し先になったら、分かるかもしれないけどお。」


「少しだけ教えてください、せっかく、来たんだし。」


「じゃあ。・・・・・・いやあ、まだ決めてません!」


「ぶっ!」


 

  ***************   ***************































































 














































 























 











 













 



 














 









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ