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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百三十九回


  ************   ************



 洋子は、もう深夜に近づこうという、この時間に、ひとりでお茶をたてていた。


 和服を着ていることも多い洋子だが、いまは穏やかな洋服だった。


 確かに、洋子はひとりでこうしてお茶に浸ることも多いのは事実だ。


 特に目的があるわけではなく、精神を鎮め、自分の内部を見つめる、あるいは、無の境地を見出す、あるいは、何も無い世界に遊ぶ。


 ことさらに、人に向かって、こうなんだと説明したこともない。


 これは、自分だけの行いだから。




 そこに、目の前の空間が、少しちらちらと揺れ始めた。


 それがなんであるか、洋子が知らないはずはない。


 空間のゆがみは、すぐに生物の形態を為しはじめた。


 やがて、牙と角を持つ人類型生命体になったのだ。


 大きな体型である。



「久しぶりです。ビュリア様。」


 現れたリリカが、そう言った。


「その名前は、もう何千万年以上、使ったことがありません。いえ、使わない、と決めたはずです。あなたも、それはご存じだったでしょう?」


「まあ、たしかにそうだったと思いますが、でも、今は思い起こすべき時でしょう。」


「・・・ほう。まあ、あなたはきっと、ここに来たって、安全でしょう。なぜ本体が来ないの?」


「それは、危険があるかもしれないからです。現状では、ビュリア様が何を考えていらっしゃるのかが、わからないからです。ビュリア様は、大切な妹さんを消去したいと思っているのですか? まあ、ダレルさんが、そう言うので。直接、尋ねに来ました。あの体は、現在、女王様の本体だと思っていましたが、もしかして、違うのでしょうか? それとも・・・。まあ、いずれにしても、あなたが、鍵を握っていると見ました。だから、やってきた。」


「まあ、お座りください。と言っても、それでは、お茶も飲めませんね。」


「わかりました、いいでしょう。そこに行きます。」


 リリカの影は、実体化した。


「あなたの正体を知る人は、数少ない。でも、あなたは、この家の奥に隠れたままだ。なにを恐れているのですか? ビュリア様。」


「まあ、どうぞ・・・・」


 洋子が、大きなお茶碗を差し出した。


「ども、ありがとうございます。では。」


 リリカが作法を知っているわけがない。

 

 大きな手でぐっとつかんだ茶碗を一気に飲み干した。


「ちょっと、熱いですね。」


「あなた、お勉強をする必要がありますね。本当に、地球を納めるならば。それでは、まあ、無理でしょう。」


「ビュリア様が教えてくださるならば。」


「いいでしょう。しばらく、通いなさい。なんでも、すぐに答えが来ると思ったら、大間違いです。」


「脅迫しても、いいのですよ。」


「あなたは、そんなことできない。第一、やっても意味がない。かつてのビュリアが持つ力が、今も変わらない事はご存知ですか?」


「ほう・・・・。やはりそうですか。うまく、人間の体に適合しないのですね?」


「まあ、そうと言えば、多分そうでしょう。」


「女将さんが、すぐそばにいらっしゃるようですが、打ち明けているのですか?」


「いいえ。」


「まあ、可哀そうに。実のお母様でしょう?」


「その時は、もう少し先です。」


「ふうん。ダレルさんは、あなたの正体をすぐに見破ったようですよ。」


「ダレルちゃんは・・・、いいえ、ダレルさんは、仕方がない。」


「もしかして、あなたの中には、まだ女王様が残っているのですか?」


「それは、ひ・み・つ。ですわ。」


「ふうん・・・ねえ、ビュリア様、時間はタダ、過ぎるだけじゃない。わたしも、いろいろと研究をしました。その成果を、いくつかお見せする必要があるのかもしれませんね。それに・・・警部さんが来ていますよ。あなたを探し回っているが、さすがの子分たちも、ここはなぜだか、見えないらしい。妨害していますか?」


「まあ、そうです。今は、会うべき時ではないから。」


「可哀そうに。あれほど、恋焦がれて、2億年以上彷徨い続けた方を、まだ待たせるのですか?あなた、独身でしょう?」


「余計なお世話です。」


「ふうん。ね、ビュリア様、お互い、ここで協力する余地は、大いにあるでしょう? 考えてみてください。近いうちにまた来ますから。お茶も教えてくださいね。じゃあ、その時まで、さようなら。」


 リリカは去って行った。


「まあ、・・・・・・危険なことですわねぇ。」


 洋子は、そっとつぶやいた。


 時間に見放されたようなこの部屋は、一晩中、明かりが落ちなかった。





  ************     ************

  



































    ************ ふろく ************



「なんか、洋子さん、すっごいことになってきてませんかあ?」


「そうですね。まあ、やましんさんの、ごシュミですから。」


「変な趣味ですね。」


「この方は、昔から、ちょっと『変な』絵とかが、お好きだったのです。たとえば、古賀春江さまの絵画とか。」


「あの方の絵は、たしかに、好きですよ。なんだか、すっと入って来るから。洋子さん・・・・つまり、今回明らかにしたのですが・・というほど大げさな事じゃないけど、ビュリアさんとか、弘子さんとか、みんな、肉体があるようでない。それは、古賀様のおことばに、ちょと添うようなところもあります。『人間に顔や肉体がなかったら、どんなに気持ちが晴々するだらう・・・・』と。まあ、やましんの身勝手な解釈や、考え方ですけども。」


「へ~~~~~~~~! やましんさんが、そういう、まじめなこと言えるなんて、幸子信じられなあ~い。」


「うぎゃ。人を何だと思ってるんですか?」


「冗談しか言わない、おもしろいひとお~~~~! だから好き!」


「まあ、ぼくも、幸子さんが大好きです。」


「おわ~~~~~。お饅頭、どうぞ。」


 幸子さんが、大量のお饅頭をいっぱいに抱えて、差し出しました。


「ふふふふ。二人とも、お似合いですね。なんか、楽しそう。」


「はあ。まあ、世の中にいるようで、いない、この二人ですから。」


「じゃあ、わたしは、なんでしょうか?」


「洋子さんは、幸子の次の準準主役ですよね。」


「あ~~~~。そうですねえ。」


 結局それ以降は、おふたりの会話が延々と続き、いつものように、やましんは無視されたのでした。



                                      つづくのです・・・



    ***************      ***************




 

























 


















































 



















 








 







 




 


 

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