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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百三十八回


  ************   ************



 パブロ議員の政党は、『自由党』であり、王国政界においては比較的少数派である。


 王室を廃止したうえで、南島に事実上統合し、双方の自由主義社会・経済社会を、さらに発展させると主張している。


 有力な学者や知識人と言われる人たちからの支持がかなりあることも手伝って、政権与党には、まだ相当及ばないものの、それなりの力があることも事実である。


 政権を持っているのは、中道右派と考えられる『自由タルレジャ党』である。


 自由主義・資本主義を建前とし、そこらあたりは『自由党』とかわらないが、王室の存在は『伝統』として認めるが、政治には一切関与しないことを求める立場にある。


 ただ、その所属議員たちは、右から左までかなり多彩であり、そこが特色でもある。 


 『タルレジャ自由党』は、右派政党で、王室の独立を認め、さらにその地位の向上を主張しているが、王国民の意向を重視する立場である。


 『民族タルレジャ党』は、文字通り王国の民族性を最大限重要視する。


 王室を絶対的な権威として、憲法の改正を行い、王室の主権を、かつてのように回復することを主張する。


 『タルレジャの翼』は、『タルレジャ教』支援団体が背後にあることから、政教分離に反するのではないかと左派から叩かれることが多いが、自分たちは宗教団体ではないと主張している。

 

 政治的な考えは、中道路線で、政権与党とあまり変わらないが、どちらかと言えば、より右派的な側面が強く、タルレジャ教団に親近感が強いのは、当然と言える。


  一方、左派政党としては、まず『タルレジャ解放民主党』がある。


 現実的な『資本主義的社会主義』を主張する政党で、『タルレジャ独立党』からは『修正主義』と批判されてきたが、最近は協調路線を取り始めている。


 王室は、将来廃止するとし、現実的には、いずれ、徐々に『縮小路線』に乗せたいと言っている。


 それが、いつのことか、などは一切公言していない。


 『タルレジャ独立党』は、社会主義の実現を目指すとしているが、暴力革命は否定する。


 『王室』は、そこにはそぐわないので、できるかぎり早期に廃止と主張する。


 これ以外にも、国政には進出できていない少数政党が存在はするが、あまり力は持たない。


 そういうことで、『王室の即時廃止』を主張しているのは、パブロ議員の政党だけだった。


 

  ************   ************



 『第1王女』が拘束されたらしい、という情報は、各政党にもすぐ伝わった。


 当然、『右派』からは大きな懸念の表明がなされた。


 ただ、議員たちも、基本的には帝国の『洗脳』を受けていたので、王国の政治家たちは、いささかやっかいな立場に、いきなり立たされたのであった。


 『第1王女』は、地球全体に『ファースト・シグナル』を送って、地球人の意識を基本的な線に『まとめた』が、その後の細かい修正は『総督閣下』に任せてしまった。


 『総督閣下=ルイーザ』は、ヘレナの様な長年にわたる『全惑星』を独裁した経験がないこともあって、いささか、おっかなびっくりというか、かなりぎこちない地球人の『精神支配』になっていたのは、やむ負えないことではあった。


 特に、自国である『タルレジャ王国』については、『皇帝』から、段階的な『北島解放路線』を取るように指示されていることもあり、その扱いに苦慮していた。


 というのも、彼女は『皇帝ヘネシー』と違って、王国の『第2王女』の地位は維持してはいたが、内政には関与しないという王室の伝統も、きちんと守っていたのである。


 ただ、実際のところは、『第1王女』の強大な意志が『王国』を包んでいるため、『皇帝陛下』のご意志をもって、王国民を自由に操ると言うわけには、なかなかそう簡単にはできなかったわけだ。


 そこで、『皇帝陛下』は、『第1王女』に対して、『総督』に従うように、という非公開の命令を出してきていたのだった。


 『皇帝』に忠誠を誓った『第1王女』だから、当然『もちろん、ご命令の、ままに。』と回答はしていたが、実際は、のらりくらりとやっていたのだった。


 これは、まあ、頭からそういう考えだったわけである。


 そこで困ったのが『第2王女』だった。


 ルイーザは、もとより『皇帝』陛下に忠誠を誓っていたが、彼女の中には『へレナ』の分身が入り込んでいるので、ヘレナの意志にも逆らえない。


 両方を成り立たせる道を探す必要があった。


 こうしたことは、権力争いなどでは、決して珍しいことではなくて、まあ、よくあることだ。


 ヘレナは、二人の妹たちが、最初からあまり突っ走らないように、見えない『手綱』を握っておく必要性を感じていたのだ。


 特に『皇帝』は、理想が高い事もあり、頑強な不感応者でもあり、またダレルが『指導役になる様に仕組んだ』こともあって、保護してさしあげる必要性が高いと思っていた。


 ところが、ヘレナの意図を解さない(あるいは分かっていても従わない)ダレルと皇帝陛下自らによって、この二人は、ヘレナのその見えない『手綱』から、解放された状態に置かれたのである。


 それは、王国政府も同じであった。


 しかも、国王は、いまだ、幽閉状態のままである。


 パブロ議員は、もちろん、物事のすべてを知った訳ではなかったが、直感的にチャンスが来たと悟った。


「首相。あなたの考えが、このパブロといささか違うことは分かっている。けれど、『第1王女』も『国王』も、実際動けないのだとしたら、あなたがすべてを、いま、仕切って正当な訳ですよ。北島が暴走しないように監視することのどこがおかしい? いいや、正しいのです。理論的には『国王大権』を実際に実行できる、『国王』と『第1王女』があるべき席にない。ならば、順位からしたら『第2王女さま』と『第3王女さま』だが、おふたりは『帝国』の要人であり、『国王大権』を実行可能な立場にない。ならば、いいですかな、『国王大権』が実行不可能状態に陥った、憲法上にいう、『破滅的非常時』ですぞ。『破滅的非常時』には、あなたが独裁的な指示が可能になる。兵力を配置しましょう。特に危険性が高い、北島の連絡通路を重点的に。」


 そこに、情報が届いたのである。


「首相、北島に動きがあります。侍従長が『兵員』を動員しはじめているらしいと。ただし、確認は出来ておりません。『王宮』は、否定しております。『非常災害訓練』だと言っています。」


「『災害訓練』? なるほど、そうですか。じゃあ、南島も、『訓練』に協力しましょう。」


 首相が答えた。


 パブロ議員が、しごく納得したように、深く肯いた。



 ************   ************



「ううん・・・おいしい!」


 ヘレナが叫んだ。


「どっちが? 料理?お酒?」


 正晴が、ナイフとフォークを縦に握ったまま尋ねた。


「そらあ、もう、お酒も、お料理も。どこで作ったのかしらねぇ。」


たちの良くない、きつねあたりじゃないのかな?」


「ぶ~~~~! 正晴さま、ご冗談がお上手ですわね。でもね、このビールは、むかし、金星と火星で作っていたころの『ババヌッキ・ビール』に近い味がするの。地球では、この味はなかなか出せないのよ。」


「何時の話ですか?」


「まあ、ざっと、2億5千万年ほど、前の事ですわ。」


「あの、弘子さんは、それを知ってる訳なんだ。」


「そうよ。あたくしは、不死だから。あなたも、もうすぐ『不死』になるのよ。」


「つまり、『化け物』になると?」


「ピンポン! 大正解。やっと、ものの言い方がよくなって来たわ。『化け物』大当たり。不老不死の『化け物』になるのよ。すばらしいことでしょう。」


「それは、かならず?」


「そう、『かならず』よ。わたくしの夫になるならば、『かならず』そうなるの。」


「あの・・・これは、尋ねちゃいけないと、母から言われたけど・・・。」


「あら、どうぞ、あなたが尋ねちゃダメなことなんか、なにもありませんわ。」


「『第1王女』の夫は、子供が出来たら、みな、早死にすると・・・。調べてみたら、調べられた限り、つまり、1000年以内では、実際全部そうなんだ。例外なく、2年以内に、姿が消えている。すくなくとも、記録が無くなる。まったくね。なんで?」


「さすが、正晴さまね。かつて、『婚約の儀』の前に、そこを尋ねた方はありませんでしたわ。」


「はあ。そうなんですか・・・・」


「うん、そうなんだ。あのね、『不老不死』のひとが、いつまでも、世間をうろうろしていたら、おかしいでしょう? だから、消えるの。」


「消える・・・って?」


「ふふん。そこよ。『真の都』に入っていただくのよ。」


「『真の都』は、実在するの?」


「そう。実在する。間違いなくね。」


「死者が行くところとか、『地獄』か『天国』だとか・・・」


「そう。うわさは沢山ある。でも、どっちでもないわ。確かに、『死者』も入る。でも、生きたまま入る事も出来る。そうしたら、そこで永遠に生きるの。このあたくしが許可した人だけが行けるのよ。」


「もし、行きたくなかったらどうするの? 無理やり?」


「そうね。これまでは、強制していた。確かにね。でも、ここで、改めようとは、思うのね。正晴様のご意志を尊重するわ。それで、いいかしら?」


「弘子さんは、どうなるの?」


「まあ、もちろん、どこかの時点で、老化は止める。もう少し、大きくなってからね。だって、ほらあ・・・ね。この胸だって、まだ大きくなる余地があるの。正晴様も、そのほうが、嬉しいでしょう?」


「ぶっ! あの、・・・・はい。でも、そこからは、歳を取らない?」


「そうよ。かつての『第1王女』が、みな、いつまでも『若いままだった』、と伝えられるのは、本当な訳よ。もっとも、『アヤ姫さま』以降は、実例がなかったから、はっきりした映像はないわけよ。でも、今回からは違うことになる。道子さまも、同様にする考えですのよ。あなたも、武様も、ご意志は尊重するけれど、付き合ってほしいの。まあ、そうね、大体、少なくとも、3000年は、そのままで行こうかと。思うのですわ。」


「3000ねん?」


「アッと言う間よ。3千年なんてね。でも、現代は科学も宗教も社会も大きな曲がり角よ。あなたは、この先、世の中の急展開を見るでしょう。スリルでいっぱい、ですわ。」


「その先は?」


「あなたも、武様も、この体も、結局は『真の都』に入るわけ。でも、あたくし自身は、いつまでも変わらない。すくなくとも、宇宙の最後までね。でも、たぶんその先は、・・・・・たぶん、別の宇宙に移動するの。いままでも、ずっとそうだったから。永遠に、それを繰り返すの。これまでは、まったくの孤独だった。でも、この宇宙では、新しいことにしたい。」


「新しいこと?」


「そう、あたらしいこと、あたらしい時代。あらららら、ほらあ! 食べないと、くさっちゃうわよ。」


「いや、まさか・・・くさらないだろ・・・・・」


 それ以上、もう、話したくないんだろう。


 正晴は、いささか、気が遠くなりそうだった。





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