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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百三十七回


   ************   ************


 『第1王女』が地球帝国政府によって拘束されたらしい、という情報は、即座に王宮を駆け巡った。


 侍従長は、直ちに情報の確認を指示した。


 王宮からは、地球帝国政府(王宮のすぐそばの『第1タルレジャタワー』に、すでにその大部分が引っ越して来ていたが・・・)に対して、事実かどうかの問い合わせがなされた。


 しかし、なぜか『地球帝国側』は、すんなりとは回答しなかった。


 実のところ、『地球帝国』自身が、必ずしも十分な情報を持っていなかったのだ。


 もちろん、『皇帝』ヘネシーは、何があったか知っていた。


 ダレルが、地球人には手が届かない、別の次元空間に拘束したということ。


 けれど、その情報は『帝国政府』の高官でさえ知らなかったのだ。


 元、国連事務総長にして、新たな『地球帝国首相』にも、知らされていなかった。


 『総督』=『第2王女』ルイーザは、アニーからの情報でこの事実は知っていたが、妹である『皇帝』の許可がないと、公表は出来ない。


 そこで、侍従長は、これまでにない事態に、直面したのだった。


 今までは、『王宮』の意志の上位に立つ存在などは、まずありえなかった。


 もちろん、政治的な向きには、王宮は関与しないのが建前であリ、そこを崩したことは、今回の事態以前にはなかったのだ。


 現在は、『第1王女』が『国王大権』を発動したことから、王国は『第1王女』の事実上独裁体制になっていた。


 その『第1王女』が、失踪したとなれば、これはまさしく異常事態である。


 パブロ議員あたりが、すぐになんらかの行動を起こすであろうことは、容易に推察できた。


 最悪、『地球帝国』が、『王室』と『教団』を軍事的に制圧するような事態もあり得ないとは言えないと

、いや、その可能性が高いと、侍従長は見た。


 『第3王女』=『地球帝国皇帝』が、どうやら『火星人』に完全に操られているらしいということも、侍従長はきちんと見抜いていた。


 侍従長自身は、『不感応者』である・・・ということは、周囲には当然秘密だったが『第1王女』は、もちろん知っていた。


 侍従長は、ただちに『タルレジャ王室・タルレジャ教団自警団』、通称『王室警備隊』に緊急事態を通告した。


 『帝国』の軍、あるいは、王国政府の『防衛隊』が迫ってきた場合は、応戦する構えを取ったのだ。


 もし、戦闘になれば、それは『内戦』ということになる。


 王室は、『第1王女』によって作られた、『無限警備隊』とも言われる兵力を持っている。


 もちろん、秘密裏にだが。


 この兵士たちは、当然ながら人間ではない。


 かつて、火星で開発されていた『コピー人間』たちだ。


 何万人でも、何十万人でも、短時間で製造可能である。


 彼らが使う銃器も、同じように『無限』に製造できる。


 その原料は、宇宙空間自体から調達するので、事実上限りはない。


 しかも、王室には、『アブラシオ』が、背後にいる。


 この巨大な『宇宙戦闘艦』に敵対可能な航空機などは、地球には無いし、火星人もそこまでの軍備は、実は、持っていない。


 しかし、侍従長は、『第1王女』が、事実上の『人質状態』にあるのではないか、ということは、考慮する必要があった。 


 いささか、相手の出方を見る必要があった。


 また、ダレルも、実はヘレナを拘束したからと言って、安全だと確信していたのではない。


 『ヘレナは一人ではない』


 これは、昔からの大きな警告だからである。


 自分の側に、分身のひとりが加勢してくれていることは事実であり、『彼女』によれば、あの『女王』とは、互角に渡り合えると、豪語している。


 今回、うまく異空間に閉じ込められたら、こちらの勝ちだとも主張していた。

 

 けれども、ダレルは必ずしも信用はしていなかった。


 『女王』は、そんなに簡単な相手ではない。


 必ず、何かの手を打ってくる。


 自分たちが、およそ知り得ないことが、きっとまだ、数多くあることも、間違いはないだろう。


 そこは、駆け引きにも、なるだろう。


 


   ************   ************



 侍従長が予想したとおり、パブロ議員と例の警部は、『王国政府』と取引きをしていた。


 王国政府首相は、帝国から、この先、ずっと睨まれてしまうことは好ましくないと考えていた。


 もっとも、『地球皇帝ヘネシー』の意図がどこにあるのか?


 首相は、そこを測りかねていたのだ。


 自分が知っている『第3王女』は、確かに北島の開放と民主化を目標としていた。


 しかし、王室を廃止するというところまで考えていたとは思えない。


「いいですかな、首相。『第3王女様』は、現在いわゆる『火星人』との協力関係にある。ただし、不肖パブロは、『火星人』というのは、あまり信用していない。信用してはいないが、我が王国が、この『地球帝国』と言う枠組みの中で、たくましく生き残るためには、それなりの対策が必要だ。しかし、どうやら『王室』と『教団』は、『地球帝国』に敵対姿勢を取りつつある。それは、マズイ。主導権は、どうあっても、我々政府が握らなければならない。そこで、やむ負えず、超法規的措置ではあるが、北島を一旦『封鎖する』必要があります。ただちにね。」


「封鎖だって?」


 首相は、怪しげな顔つきになった。


「そう、封鎖です。簡単でしょう。北島の最大の弱点は、入り口がひとつしかないことですよ。そこを封鎖したら、物資の調達が行き詰まることは明らかだ。また、経済的な封鎖も必要ですな。食料の自活はある程度出来ても、エネルギーの供給、資金の調達、大きな影響が出るはずだ。第一、帝国の本拠地は、北島にあるのです。」


「北島の底力は、あなどれないですよ、議員。南島と対立したら、彼らが何も持ち出すか、かならずしもはっきりしない。おかしな話しですがねぇ。同じ国なのに。けれど、帝国の『タワー』が北島にあることは、むしろ、危険要素だよ。」


「しかし、いいですか、背後にいる『マツムラ・コーポレーション』の主力は南島にある。これは、かつて『王室』が王国の一体化の象徴として、王国政府に妥協せざるを得なかったところだ。つまり、弱点ですよ。マツムラからの資金や物流を止めましょう。『タワー』には、独自の防衛システムがあると言う。彼がね。」


 議員は、警部に顔を向けた。 


「いやあ、それでは、本当に内戦になりかねない。」


「だから、この方が、ここにいるんですよ。『帝国』が援助してくれるでしょう。」


「ああ、まあ、そうですな。もしも、軍事的な必要性が生じれば、援助しましょう。」


 警部は、あっさりと答えた。


「あなたに、そこまで言い切れる権限があるのか?」


「うむ、まあ、これまで隠していたが、私の事実上の職責は、こうであります。」


 警部は、一枚の小さなカードを、懐から取り出した。



  ************   ************



「ダレルさん、ヘレナ様を、どこにやったの?」


 火星人形態のリリカが、ダレルの隠れ家に、立体画像通信で押しかけて、こう、迫っていた。


「なあに、安全を確保するために、身を隠してもらったんだ。暗殺の危険性が高くなってきたからね。相手は、極悪ミュータントだ。並じゃあない。あの体は、女王のお気に入りだよ。守らなくてはならない。そうだろう?」


「誰が、相手だと言うの?」


「聞きたいかい?」


「そりゃあ、そうでしょう。」


「『第1王女』の、お姉さまさ。」


「はあ? え、え、え? なんだ、それは・・・・・・・」


 リリカは、この答えは、さすがに予測していなかった。

 



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