表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百三十二回


  ************   ************



 ルイーザ(『地球帝国総督』=『タルレジャ王国第2王女』=『タルレジャ教第2の巫女』)は、聴衆にあいさつを行った。


「『第1王女様』は、緊急のご用件にて、急遽お帰りになりました。皆さまに、大変申し訳ないと申しておりました。しかし、いたしかたのないことです。そこで、皆さまには、わたくしが、たっぷりと演奏をお贈り申し上げます。どうか、お聞きくださいませ。」


 一部で『おわ~~~??』という声もあったが、大方は盛大な拍手で迎えたのだ。


 20世紀以降のヴァイオリニストに、巨大なレパートリーを用意してくれたのが、クライスラー氏である。


 氏の功績は誠に大きく、そのおかげで、多くのヴァイオリニストが生活の糧を得ているわけだ。


 『第2王女』は、今夜、クライスラー氏の作品をたっぷりまとめて用意していた。


 CD一枚分に相当するくらいの分量である。


 つまり、約1時間に及ぶものだった。


 もともと、『第1王女』と二人で分担するつもりだったものを、ひとりでぶっ続けに演奏する。


 大変な体力が必要である。


 音楽は一般的に『文科系』と考えられているのだろうけれど、こと楽器の演奏は、むしろ『体育会系』に分類したほうがよいくらいの『肉体労働』である。


 クライスラー氏の音楽は、大変気が利いていて、聞く側にはじっつに楽しいが、弾くのは、けっして簡単なものではない。


 ルイーザは、しかし、軽々と弾いてしまうのだ。


 緊急ピアニストの男性は、ここが勝負とばかりに、最初、やや気負いがあった。


「先生、あまり緊張なさらないで、気軽に行きましょう!」


 『王女様』から、しかも、いまや、地球帝国ナンバー2の『総督閣下』から、『先生』と呼ばれたこともあり、彼はぐっと腹に力を入れた。


 根性を固めた訳である。


 すると、なんとなく気が楽になった。


 2曲目からは、自然体で臨めるようになったのだ。


 1曲目は『愛の喜び』。


 2曲目は『愛の悲しみ』。


 聴衆は、大いに喜んだのである。


 そうして、3曲めの『ウイーン奇想曲』が始まったのであった。



 **********   **********



 シモンズは、『第1王女』が拘束されたことを、アニーからすぐに知らされた。


『シモンズさん、なんとかしてくださいよお!』


 アニーは、コンピューターらしくなく訴えた。


「あのね、アニーさん、それは君の役目であって、ぼくの扱う範疇じゃないよ。ダレルさんに交渉するのが一番だ。」


「しましたよ。とっくに。でも、相手にしてくれないです。ダレルさんを強制する権限は、アニーには無いです。ヘレナさんから禁止されています。」


「ふうん。そのことを、ダレルに言ったのかい?」


「もちろんです。ヘレナさんの親心です。でも、軽くあしらわれました。あの二人は、ちょっと普通の親子じゃあないですから。」


「じゃあ、しょうがない。ぼくは、その『異次元監獄』なんて、探せないよ。」


「弘子さんの機械がありましたよね。」


「む。いやあ。あれが使えるはずがない。使えるくらいなら、ヘレナができないわけがない。」


「弘子さんは、天才ですよ。ヘレナさんが出来ない事を可能にする可能性は、十分あります。」


「ぼくも、天才なんだけどね。この機械、まだ解明できないんだ。」


「仕組みはわからなくても、使えればいいんですよ。」


「ふうん・・・・ね、アニーさん、ちょと待ってくれないかな。」


「まあ、アニーは、いいんですけどね。」


「うん。ダレルを騙す必要があるんだから。」



  **********     **********



「お姉さまは、確保したか?」


 ヘネシー皇帝は、コンピューター『カイヤ』に尋ねた。


『はい、すでに王宮に向かって護送中です。間もなく到着されるでしょう。』


「そうか。ダレル様が、厳重に保護すると申されておる。わしは、姉上を生かさなねばならぬ。そうして、『皇帝』の座を譲らねばならぬのじゃ。それが、わしの務めなのじゃ。」


 ダレルとジャヌアンに操られたままのヘネシーが言った。


『はい。『第1王女様』のお命を狙っているものがあることは間違いがありません。しかし、その正体はまだ解明できません。『ミュータント組織』であることは、確実である、と思われますが、既知の団体ではないと考えられます。』


「自爆したエージェントはまだ見つからんのか?」


『防衛隊が探していますが、深海に沈んだので、なかなか難しいです。ミュータントが回収した可能性も否定できません。』


「帝国は、各国に捜索を要請したのじゃろうが。」


『はい。アメリカ国も、日本合衆国も、艦艇を出しました、いずれ、時間がかかりそうです。』


「むむ。『火星側』の協力を依頼すべきじゃな。」


『陛下、それを狙っている人物がいる可能性があります。慎重になさるべきでしょう。』


「例えば、だれじゃ?」


『例えば、『日本合衆国首相』。彼は、『火星人』の正体を確かめようと考えています。』


「ふん。取るに足らぬじゃろうて。」


『甘く見てはなりません。日本合衆国政府の後ろには、マツムラ・コーポレーションがいます。あの会社は、何を考えているか、分からないところがあります。もちろん、王国の後ろ盾でもありますが。』


「わしは、一応、松村家の娘じゃ。姉上ものう。」


『ああ、失礼いたしました。』


「いや、よい。しかし、そなたは、本当にコンピューターかのう? いかにも人間的じゃ。」


『間違いなく、コンピューターです。しかし、人格を持つ『将来型』のコンピューターです。』


「わかっておる。姉上とは、繋がってはおらぬと、誓ったであろうが。」


『はい。その通りです。』


「ならば、よい。あの『地球そのもの』に会いに行くぞ。」


『わかりました。準備いたします。』


 皇帝は立ち上がった。



  ************   ************



 『ブリューリ』は、自らの罪を、すでに自覚していた。


 なぜ、ああなったのかも、よく考えてみていた。


 自分は、本来、いったいなにものだったのか?


 そこから、始める必要があった。


 まだ、禁断症状が、抜けきってはいないらしい。


 『火星』から解放された時点では、自分は、『怪物』のままだったと思う。


 しかし、地球に潜入して以来、急速に自らを拘束していた、何かの呪いが砕けたように感じたのだ。


 ヘレナが撒いた、新しい『抗ブリューリ剤』が、有利に働いたようだと、ダレルは言う。


「予想外の効果があった。」


 と、彼は言うのである。


「それでも、ヘレナには復讐するべきだ。」


 そうも、進言された。


 自分を、あのような恐ろしい怪物にしたのは、誰だったのか?


 そこが、問題なのだ。


 『火星』の閉ざされた歴史では、自分が、当時開明的で優秀な指導者であった『女王』を取り込んで、怪物に仕立て上げたことになっている。


 自分でも、そう考えて来ていたのだ。

 

 しかし、遠い過去の記憶が、少しずつ蘇ってくる。


 自分は『宇宙警察』の警察官だった!


 ようやく、そこに行き当たったのだ。



   ************     ************

































    ************  ふろく   ************



「やましんさん、世間はお休みですよお。」


 幸子さんが言うのです。


「やましんは、ずぅ~~~~~~~っと、お休みですよ。」


「でも、書いてるじゃあないですかあ。」


「収入がゼロですから、これは仕事には当たりません。」


「じゃあ、やっぱ、失業中の、おじさんかあ。」


「働きに出る意思がないので、雇用保険法とかの『失業』の意味には当たりません。」


「食べられなくなたら? じゃあ、どうすんですかああ!」


「ま、野垂れ死にです。」


「はあ・・・・・女王さまに、助けを求めましょう!」


「あの人は、『自らを助けるもののみが救われる』の主義ですからね。」


「『働かざるもの食うべからず』とか、人間は言いますよね。」


「そうそう。まあ、またく働いてないわけじゃあないけど、働いていると言う範疇には入らないんですよ。」


「人間の世界は、難しいなぁ。幸子、人間は無理!」


「まあ、そうでしょうなあ。」


 幸子さんが、いやあな顔になりました。


 幸子さんだって、今は女神様だけれど、昔は、人間だったんですからね。



    ************     ************

   






























 




 





 


 



 



 


 





























 





  
































 


 




 


 


 










 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ