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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百三十回


  ************   ************



「議員殿は、どう思われるのですかな?この事態を?」


 いんぎん丁寧に警部は尋ねた。


「ふん。『第1王女』がいわゆる『魔女』であることは分かっている。もっとも、突然変異のような存在だろう。ミュータントの分類に入るに違いない。」


「なるほど、我が『皇帝陛下』は極めて柔軟な姿勢を示しておられるのです。ミュータントであれ、不感応者であれ、世界に積極的に貢献しようとする人間を責める理由はないと。ただ、この新しい地球世界に敵対的な行動を取る者には、それなりの対応が必要であると。すぐに懲罰ではない。回心の機会が与えられます。そのために、多くの教習機関が世界各地に設置されている。我々は、『第1王女』様を尊重していますが、『背徳者』である可能性を排除出来ないとも、考えておりました。先ほどの件は本部に報告しましたが、指示が届きました。『第1王女』様を、演奏会終了後、『保護』いたします。」


「『逮捕』じゃなくて、『保護』?」


「そうです。逮捕する根拠が明確ではない。また、『保護』ならば、先ごろも実行された前例がありますし、そう問題視はされないでしょう。」


「『逮捕』と、どこが違うの?」


「いえ、まあ、違いはないですな。現象としては。」


「ねえ警部さん、先ほどの夢のような体験から言えば、逮捕も保護も拘束も、どうやら、出来そうにないように思うんだがね。」


「そうですな。じつは、火星のダレル氏から提案がありまして、一か所、『第1王女』であれ、脱出は不可能であろうという場所を提供すると・・・」


「はあ? ダレル? 気に食わんやつだ。会った事もない。どうせ、食わせ物だろう。」


 こういうあたりは、杖出首相とよく似た考えを持っているパブロ議員である。


 火星人などというものは、まったく信用していない。


「しかしながら、地球政府は、ダレル氏のアドヴァイスを尊重する約束となっております。」


「うん。まあ、そこらあたりは地球規模の話だ。ぼくは、あくまで王国の未来に興味があるだけだ。そんなことが可能ならば、そうしてもらったらよい。実際『第1王女』がよけいな口出しをしなくなるのなら、実に助かる。ただ、この後の王国の儀式には出てもらう必要がある。現状では、そこを否定すると、王国民から猛烈な反発が来そうなんだ。地球帝国が適切な対応をしてくれる必要がある。」


「ああ、なるほど。いいでしょう。いや、実際、地球帝国の創立式典にも参加していただく必要があるのです。そこらあたりは、早速皇帝陛下から、それなりのご発言を頂きましょう。」


「そんな力が、あなたにあるのかな?」


「まあ、そこは任せて下さい。」


「ふん・・・・」


 議員は、やや不満そうに、肯いた。


 議員は、自分より権限がある人物というのが、実は、あまり好きではないのである。




   **********   **********



 あんじは、もともと豊かな才能があったうえに、高度な訓練を続けた結果、すでに優秀なミュータントになりつつあった。


 彼女に与えられている役割は、『紅バラ組』の解体である。


 いっぽう、くっこは、これまた秘められた才能があったのかどうかはわからないが、『紅バラ組』の中で急速に頭角を現してきていた。


 あんじの組織は、対『紅バラ組』用のミュータント軍団を、少しづつ東京に集めて来ていた。


 本来、争いを好まない穏健な組織なのだけれど、『紅バラ組』に関しては、かなり大きな危惧を抱いていた。


 それは、ある意味、身内の問題でもあったからである。


 一方『紅バラ組』も、彼女たちを狙う組織があることを、当然、掴んでいた。


 すでに承知のように、『組長』は滅多に姿を現さない謎の美少女である。


 その正体が、タルレジャ王国の『第1王女』であるなどと想像する者はまったくいなかった。


 『副組長』も、あの時、一回やって来ただけである。


 普段は、すべて『リーダー』に任されていた。


 もっとも、この『リーダー』というのが何者なのかも、『組長』以外は誰も知らない事柄だった。


 また、現在『紅バラ組』は、全国組織に成長している。


 その実態は、まったく分かっていなかった。


 公安当局も、もちろんこの不良グループを追いかけてはいたのだが、肝心なところで、しっぽを掴めないでいる。


 今回も、慎重にこのビル内の捜索を行った。


 弘志が協力していたが、彼や、ゲーム遊びに来ていた女子高生たちの証言にもかかわらず、そのような施設は全く見当たらなかった。


 光線銃で破壊された壁というものも、影も形も見えなかった。


 警察当局は、当然「くっこ」や、他の組員と思しき少女たちからも事情を聴くべく表向き動いてはいたが、ここしばらく、みな行方が分からないという。


 どこかに籠城しているとみられるが、その場所が特定もできずにいた。


 もう少し言えば、『紅バラ組』には、最終的には手を出すなというお触れが、幹部対象に秘かに出されていた。


 唯一、『松村家』担当課だけが、行き掛かり上も、孤軍奮闘していたのである。


「くそ。どうなってるんだ。」


 『がちゃんこ刑事』がうなった。(当然、本名ではないが。)


「くさるな、松村家相手なら、このくらい、普通にあっておかしくない話だよ。」


 大分先輩の、『みるくわり』刑事がなだめている。


「『おにいちゃん』に、いいように騙されてるんじゃないですか?」


 『がちゃんこ』が『みるくわり』に、かみついた。


「まあまあ、そう言うな。どこかに、隠された入口がある。まあ、組員は口が堅い。そこからは情報は出ないだろう。しかも、あまりやり過ぎるなと、上から圧力がかかってるらしい。」


「なぜなんですか?」


「そりゃあ、おまえ、『紅バラ組』は、体制側だからさ。連中は、地球帝国に反感を持つ少女たちをつかまえては、洗脳して仲間にしてしまう。『不感応』な大人や『背徳者』を見つけ出しては、当局に通報してくれている、ありがた~い存在なんだ。しかし、『青少年の健全な育成教育』条例や、その他多くの約束事に反する行動を取る。刑法に触れるようなことも、今回のようにかなりあるが、なぜか証拠を消されてしまう。こんなことできるのは、松村家以外にはないだろうと、我々の部署は作られたが、帝国の創設で、非常にきわどい立場になりつつあるんだ。我々は、もう、廃止されるかもしれない。」


「そりゃあ・・・・もしかして、人員整理とか?」


「まあ、さすがにそれはないだろうけどなあ。」


 そこに、『最も新入り』の、警部が現れた。


 彼は、地方の出身で、地元では有名な『オカルト』警部だった。


 本庁に持ってあげられたのは、『栄転』と言えば、まあ、そうなのだが、どちらかといえば、厄介払いに近かった。


 もちろん、彼こそ『不思議が池の幸子さん』の夫となった警部である。


 つまり、改造人間であり、『鬼』である。


 さらに、あえて言えば、『アヤ姫様』によって、『火星人』になるように改造された、と言っても良かったのである。


 それは、しかし、ダレルの・・・ではなくて、明らかに、『第1王女』の『スパイ』として、潜入したわけなのだ。


 


 

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