表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百二十八回


  ************   ************


 王室から提出された(歴史上初となる快挙であった。)個人データとの詳細な検証には、いくらか時間がかかるということで、また、結果が出たからと言って、すぐにすぐ何かが決まるわけではない。


 しかし、ここまで大掛かりにやって、『問題なし』となったらば、議員の政治家生命は危機に瀕することになるだろう。(秘密にすれば話は違うかもしれないが、それでは議員の立場を根底から覆すことになりかねない。)


 『第1王女』は、政治に口出しできないのが建前ではあるが、今は『国王大権』が発動されたままであり、やろうと思えばなんでも可能だ。


 唯一の歯止めは、『国王自身』と『皇帝陛下』である。


 国王は、皇帝が拘束して『超軟禁状態』になっている。(秘密の場所に押し込めているのだから。)


 実際のところ、これほど、易々と協力姿勢を示した以上、『第1王女』には自信があるのだろう。


 ある意味、この資料の『分析』をどこまで追求できるかが勝負になるかもしれない。


 パブロ議員は、思い切った方法を秘かに実行していた。


 『皇帝陛下』じきじきに、『検査を指導していただけるように』と、直訴したのである。


 議員自身は、『火星人』なんてほとんど信用していない点では、杖出首相と変わらないくらいだったが、少なくとも、彼らが超越的技術を持っている事だけは事実だと判断していた。


 『皇帝陛下』とはいえ、議員にとっては幼少時代から知っている仲である。


 その主張から言っても、王室の中では、異例の議員の『シンパ』ともいえる存在だった。


 彼女の後ろには、『火星人』がいる。


 なかなか面白い検査結果が出てくる可能性だってあるだろう、まあ、いくらか、そう期待してもいたのである。


 ただし、この突発的な事態を、公表するかどうか、議員はいささか迷った。


 もし、すべてを公表したら、『第1王女』の神秘性を、タダで高める手助けをしてしまうだろう。


 しかし、隠してしまったら、自分のやって来たことは何なのだ?いったい? と、なるだろう。


 結果が出てからにするか?


 警部は、『慎重に扱います。皇帝陛下の権威を傷つけるようなことにはできないから、そこんとこ、よろしくお願いしたい。』と、あえて公表を急がないようにと要求してきていた。


「ふうん・・・・しかしだなあ・・・」


 警部は、即公表、も、十分視野に入れていたのである。


 そのほうが、もし失敗しても、最終的には自分が有利になるだろう、という読みも、実はあったのである。


 もっとも、ふたりとも、どっちにしても、これらの技術全てが、実は『第1王女=火星の女王』に由来するものだと言う、肝心なことを見落としていたが。

 



  **********     **********



 もう、くたくた状態でカタクリ教授がホールに戻った時、演奏会はまだ休憩時間中だった。


「むむむむ。あり得ない事だ。絶対にありえない。私は、あそこに半日以上いた。で、この休憩時間内に帰ってくるわけがない。時差があるはずもなく、光速に近い速度で飛んだわけでもないし、それじゃ話が逆だ。」


 教授の奥さんは、不思議そうに尋ねてきた。


「あなた、どこにいらしたの? 急にいなくなるから、びっくりした。誘拐されたかと。電話も通じないし。警察に言おうかと思っていた。冗談じゃなくてよ。」


「まあ、拘束されていたことは事実だよな。ただし、『第1王女様に』だがね。」


「ええ~~~!! 『第1王女様』?」


「ああ、アムル先生といっしょにね。」


「まあ、アムル先生とですか。はあ・・・なら安心した。ひとこと言ってくだされば、こんなに心配いたしませんものを。」


「いや、すまん。急だったから。」


「まあ、そうでしょう。王女様とアムル先生ならば。」


 教授の立場はよくわかっている奥様のことなので、それ以上は尋ねなかった。


 

   ************   ************



 『第2王女=総督閣下』は、休憩時間中に、いったい何が起こったのかということについて、『姉ヘレナ=第1王女』からの意識による通報を受け取っていた。


「ま、お姉さま、ご勝手な行動をなさいますわねぇ。困ったもんだ。でも、あたくしは、今は演奏が第一ですわ。」


 会場を覗き込んでみれば、『第1王女』がボックス席に帰ってきている。


 何がどうなったのかは、まったく連絡がない。


 ルイーザは、あえて尋ねると言うことは、ここではしなかった。


 雑念は、頂きたくなかったからである。


「総督閣下! 準備はよろしいでしょうか?」


 舞台監督が尋ねてきた。


「『第2王女』でけっこうです。今日は。」


「あ、では『第2王女様』スタンバイ願います。」


「はいはい。」


「おや、珍しく緊張気味ですかな?」


 大指揮者殿が、ニタニタしながら、ルイーザをからかいに来た。


 さすがは、大物である。


 『第2王女』も『総督閣下』も関係なしであった。


 彼の頭にあるのは、『音楽』だけである。


「はい、入ります。」


 監督のゴー・サインだ。 


「よっしゃ。」


 大指揮者殿は、壁を叩いて「どうぞ」と言った。


 ルイーザは、大切な楽器を抱えて、舞台に上がって行ったのである。


 大指揮者殿は、それに続いた。



   ************   ************





























   ************  ふろく  ************



「ねえねえ、やましんさん、カール・ニルセンさんは、実在の作曲家さんですよね。シベリウスさんも。」


 幸子さんが言った。


「はい、そうです。どちらも1865年生まれの、北欧最大の2大作曲家さんです。フィンランドのシベリウスさまの『ヴァイオリン協奏曲ニ短調』は、シベ先生唯一の『協奏曲』作品ですが、一方、デンマークのニルセン先生は、『ヴァイオリン協奏曲』のほかに、『フルート』と、さらに『クラリネット』のための協奏曲も書いています。非常に完成度が高く高度な技法を要求しながらも、音楽の安定性が強いシベ先生に対して、ニルセン先生は、割と進歩的で当時の新しい音楽の在り方を開拓していました。一番前衛的なのは、たぶん『クラリネット協奏曲』で、『フルート協奏曲』は、わりとロマンティックです。『ヴァイオリン協奏曲』が、その中間どころかな。でもこの曲のソロ・パートの楽譜を見たら、やましん、脱走したくなりますよ。」


「むっつかしい、ということ?」


 お饅頭をむしりながら、幸子さんが言います。


「まあ、そうですよね。楽譜だけから見たら、ニルセン先生の方が、恐ろしい!」


「鬼のように?」


「ふうん・・・当たらずも遠からず、かなあ。」


「ふうん・・・・・幸子も聞きに行こうっと。・・・お話の中に入りまあす!」


「こらあ! 勝手に入るなあ・・・・・あ、いっちゃった。」



  ************     ************




 
















 















































 




























































 







 























 








 









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ