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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百二十七回


  ************   ************


 サンプルの採取と、本人からの聞き取りは、ずいぶんと時間はかかったが、さすがは『第1王女様』の指示があるので、誰も拒否したりはしなかった。


 こうしたあたりは、『南島』とはまったく様子が違うところで、パブロ議員でさえも『第1王女様』に感謝すべきかもしれないと、本気で考えたくらいである。


 もっとも、議員からしたら、『北島』の環境は、国王の権威を被った、わずか17歳の『第1王女』による独裁支配であり、住民は非常に劣悪な抑圧状態にあると、『判断したい』ところである。


 しかし、こうして住民の健康状態を見ていると、みな栄養状態は良さそうだし、飢餓の兆候などは影も形もなかったのである。


 話を聞いていても、しごく当たり前で、特にいちいち『王女様』を、あえて賞賛する様子もない。


 表情も多彩で、脅迫されているような雰囲気はどこにもない。


 けれども、それは以前からよく分かっていたことでもある。


 この『第1王女様』の恐ろしさは、もっと奥深いところにあり、見た目では分からないものだ。


 議員の最終目標は、『王室の廃止』、そうして『北島の開放』である。


 別に、目標がかなうならば『王女様』を、あえて殺害したいわけでもない。


 一方、警部の目標は、当然ながら、いささか違うところにある。


 それは、帝国による『タルレジャ王国』の適切な『管理体制』の確立であり、特に内政が見た目、どういう形になっていてもそれは気にしない。


 分かりやすく言えば、この王国では『第3王女=現皇帝陛下』より、『第1王女』の人気がいまだに高く、『北島』では、神格化されたまま、と言う現状は、あまり望ましくない、ということであった。


 それは、地球の『事実上』の支配者である火星の『ダレル総司令官』『ダレル将軍』・・・いろいろと言い方はあるが・・・がかなり気にしていることらしい。


 もっとも、警部クラスには、それが本当は、2億年以上続いている『親子げんか』から派生していることがらであるという『事実』は、一切関係のない事である。


 そこで、パブロ議員は、気にしていた男を発見した。


 彼の放った、重要な任務を背負った『スパイ』である。


 しかし、どうやら、最終段階で失敗に終わったと思われる。


 ちらっと『第1王女』を見やれば、そっぽ向いて知らん顔をしている。


 議員は、その男の面接担当をしていた女性の隣に座った。


 白衣の袖のマークから見ると、アムル医師の配下である。


 サンプルを取り終わったところで、議員が口を挟んだ。


「ああ、ちょっと、変わってもらって、よろしいですかな?」


「はあ? ああ、もちろん、議員様。」


 その女性は席を離れた。


 議員は、両手を組みながら穏やかに、小さく、しかし率直に尋ねた。


「ああ、君は、地下に入っていたんだろう?」


 まあ、これだけ言われれば、何のことかの察しはつくはずだ。


 彼は答えた。


「ええ・・・・そうです。」


「最後までは、見えなかったんだね。ああ、別に非難はしないし、危害も与えない。報酬はそのまま。」


「まあ、そうです。返されましたから。報酬は気にしませんよ。ぼくには使ないんだから。」


「ふうん。君は、自分が何をされるかは、聞いていたのかな? いやいや、それは違うね。」


「聞いてはいませんが、分かってはいましたよ。なぜ、違うのですか?」


「ほう・・・じゃあ、先に聞くが、何が起こるはずだったと思うのかね。」


「ああ、『第1の巫女様』に、『生気』の献上を行うはずでした。」


「『セイキ』の献上?」


「そうです。タルレジャ教徒にとっては、最高の栄誉です。自分の最奥の精神力を、巫女様を通じて神にお届けします。議員さんは、タルレジャ教徒ですか?」


「昔はそうだったが。今は無信仰だ。」


「そうですか、じゃあ学ばれたでしょう。毎晩のお祈りは『生気』を神に贈るのですから。」


「まあ、そう言えわれていたな。しかし、君が見かけたものは、それと同じことだと言うのかな?わざわざ、あそこまで隠された、巨大な施設で?」


「いいえ、レベルが違います。あの『儀式』は、個人として、全ての『生気』を捧げるのですから。」


「すべて捧げたら、どうなる?」


「知りません。だから、僕も知りたかった。だから、協力した。でも、見届けられませんでした。ぼくは落伍したのです。それ以上は知りません。」


「ふうん・・・・・どうやって、君はここに来たのかね?」


「あなたと同じだと思いますよ。議員さん。白い家からです。」


『~こりゃあ、まいったなあ。』


 議員は、そう思った。


「じかに、ここに来たのかね?」


「ぼくが、村から出た時間も、ここに入村した時間も記録があると思います。他所に寄ってる時間はないと思いますが。」


「ふうん・・・ま、あ、君にはまたすぐに会う事になるし、奥の手を使ってでも、君の身柄は、こちらにあずかりたいと思っている。南島にね。だから、君には報酬が必要になる。」


「奥の手って。なんですか?」


「このあと、『第1王女』様の許可を頂く。君はそれに従う。それはダメかな?」


「いえ、『第1王女様』のご指示ならば、なんでもありです。ぼくのすべては、『王女様』のものですし、ぼくは罪を犯しました。だから、処罰があっても当然です。」


「ふむ。もし、君が反逆したとされたら、どうなるのかね? 私が知る限り、『王宮』や『教会』の決まり事は、はっきりと公表されておらず、君の身が心配なのだ。分かるかな? それに、『南島』に行くことが処罰だと思うのかね。」


「まあ、あなたの関与とか、ぼくが何をしたのかとかは、聞かれましたが、まだまったく話していません。南島は、ある意味『生き地獄』だと聞きます。」


「そうか・・・まあ、安心したまえ。君は救い出す。君は、実に重要な存在だ。王国の未来を決める存在ともいえる。それなりの待遇をしたい。『南島』もそう悪いところじゃない。」


「はあ・・・・・そう言われても、ぼくは『北島』以外の世界は知りませんから。ここ以上の生活があるとも思わないです。」


「もっともだね。だが、心配ない、希望を持ちたまえ。この世界は、それほど悪くない。まあ、良くないところも、あるけれどもね。ずいぶん良くなったんだ。皇帝陛下のおかげでね。」


「『地球帝国』というところは、『独裁世界』だと聞きますが。『北島』よりも、何が良いのですか?」


「『自由』だよ。帝国は君主制だが自由がある。ここには、それがない。そう、思うよ。『独裁』と言っても、自分たちの国の『自治』は、自由なんだから。」


「ここも、そうですよ。ぼくは、どの『王女様』からも、何かを強制されたことは一回もないですから。食事も教育も医療も費用は要らない。決まった仕事を無理のない範囲ですればいい。残業は、なしです。南島は、残業の山だと聞きますが。」


「そうかね。確かに、残業はある。改革は必要だが、でも、君はここから、南島に自由に遊びに行けるかね?」


「必要がないですよ。」


「『必要』だって? それは、『移動の自由がない』と言うことだよ。」


「え。そうなんですか?」


「そうだよ。刑務所に入れられるのは、罰として移動の自由が奪われることでもある。」


「移動できないのが、罰とばかりも言えないですよ。ぼくは、ある意味、守られている。『地球帝国』からさえも。まあ、あの警部さんが今日、ここに来たことには、ちょっと気にはなるんですけども。これまで、こんなことは、まったくない事だったからです。あなたもですが。」


「ああ、まあ、そうだろう。でも、大丈夫。時代は変わっても、我々と法が、君を守ることになる。」


 男は、議員をみつめた。


『こいつ、『エスパー』だ、というからな。心の中まで見通しかもしれないな。』


 議員は、多少の恐怖も感じていた。


「他の人たちが、あのあと、どうなるのか、聞いてないのかね?」


「ええ。まったく。何も。」


「そうか・・・・」


 彼は、白い家の事は、まだ、話さなかった。




  ************   ************































   

















































































 




  

 















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