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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百二十三回


 ************   ************


『へレナさんヘレナさん。』


「なあに、アニーさん、もうすぐルイーザの演奏が始まるんだから、後にしてよ。」


『来ましたよ。パブロさんが会いたいと言ってきてます。』


「だ・か・ら。後にしてよ。」


『あのお、なんでも警官隊を引き連れて来てますよ。』


「はあ?」


『あなたを、誘拐容疑で逮捕したいそうです。』


「はあ? 何を根拠に?」


『証拠があるんだそうで、それを根拠に。』


「あたくしを警察が逮捕できるなんて、王室と教会が承認しなければ不可能です。大体、パブロおじさんがなんで、警官を・・・ああ、『皇帝陛下』が命じれば、話は別かな? 帝国の臨時警察が来てるの?」


『そうです。初の大仕事とか。あなたに会って納得できれば、帰ると。』


「はあ、そうきたか。待つ気はないとな?」


『ええ。間もなくそこに、使者が行き着くかと。』


「まったくもう。応接ルームは使える?」


『もちろん。予約リストに入れました。』


「あ、そ。あたくしたちが入ったら、すぐに次元閉鎖しなさい。誘拐してさしあげましょう。」


『こあ~~~~! 了解。』



   ***   ***   ***



 帝国臨時警察隊のお偉方が、すぐに控室にやって来た。


「はいはい。行きましょう。応接室まで、ご案内いたしましょう。あなた、いっしょにいらっしゃい。」


「は! 恐れ入ります。『第1王女様』。」


 ヘレナは先に立って、速足で控室から出て行った。


 古風ないでたちの警官が5人、その後に続いた。


 このくらいならば、ヘレナはすぐに倒してしまえるが、それは、まあ、止めにしたのである。




  **********   **********


 時間同士の関連性と言うものは、まったくないわけだったが、彼はもうすでに100年はこの『白い家』に住んでいるように思う。


 虚無の空間の中の一軒家で、近所付き合いなどは一切ないし、誰からも指示はされないし、危ない事は何もない。


 食事は、あれが欲しいと言えば、何でも食べられるし、飲みもの同様である。


 聴きたい音楽があれば、とにかくそう言えば、誰かがどこかで見つけ出して、素晴らしいサウンドで聞かせてくれる。


 読みたい本があれば、それも言えば、すぐにいつの間にか応接間のテーブルの上に現れる。


 ただし、テレビとかラジオといった類いのものはない。


 パソコンとかスマホもないが、それは彼が住んでいた村にも、村長室にしかなかったから問題にならなかった。


 ちょっと体調がよくないと言えば、どこからかお医者様がやってきた。


 ムヤマ先生という女医さんで、いい人なのだが、ここのことについてはあまり話してくれなかった。


 ただ、王女様たちのかかりつけ医であるということは分かった。


 それが唯一、現世との繋がりを示す事項だと言えた。


 しかし、彼自身は、別に不満ではない。


 自分は、図らずもスパイ行為を働くこととなった。


 やむ負えない事情はあったのだ。


 けれども、それが『第1王女様』に対する反逆行為だったとすれば、自業自得である。


 むしろ、なぜこのような『豪勢』な形で生きていられるのかが不思議なくらいだった。


 ただ、さすがに、ここではやることがなく、多少は何か仕事をしたかったから、中空に向かってそう言ったところ、庭に広い畑が現れた。


 もう90年も前のことである。


 イモ類とか、野菜類をたくさん植えた。


 収穫したものは、一定の場所に置いておくと、いつの間にか回収されていった。


 王国の『ドリム紙幣』が代わりに置かれていた。


 しばらくすると、収穫したものたちが、立派な商品になってやって来る。


 子供たちの、疑似お買い物ゲームみたいなものだが、十分楽しかった。


 売り手はいないが、清算機が一緒にやってきていた。



   ***   ***   ***



 100年経っても、彼は歳を取らなかった。


 ある日、再び『第1王女様』が現れた。


「もう、いいでしょう。あなたは100年間ここに拘留されていた。もう、ここからは出ましょうね。退屈でしたか?」


「いえ、とくには。農作業もあったし。」


「そう。この後、あなたには、新しい村に入っていただきます。すぐ、その村に、パプロ議員が訪問してきますが、さて、いまここで、言いたいことがありますか?」


「え?・・・・いえ、特には・・・・・」


「そうですか・・・・・義理堅い方ね。まあ、いいわ。じゃあ、こことは永遠にお別れよ、忘れものはないですか?」


「ええ。特には。」


「ここはね、『浦島太郎』の『竜宮城』の、逆バージョンみたいなものよ。あ、知らないかな。」



  **********   **********



 パブロ議員は、ようやく、『第1王女』を追い詰める手がかりを得たと確信していた。


 多くの、北島における失踪者の特定を我慢強く続けてきた。


 内部の協力者のおかげではある。


 もちろん、彼らの安全は図らなければならないが、『帝国』の出現は実に好都合だった。


 『第3王女』自身が、自らこちらの味方に付いてくれたようなものだ。


 しかも、最高の権力を持ってだ。


 これならば、『第1王女』を拘束することも可能だ。


 しかし、まあ、そうは言っても、王国民の間における『第1王女』の人気はさっぱり下がらない。


 これは、いささか不可思議でもあった。


 しかし、そうは、そうなのだから、あまり無理は出来ない。


 じっくりと行く必要がある。


 そうして、この状況を逐一、王国民に公表してゆくのである。


 さすがの王国民も、『第1王女』の恐ろしい正体に気が付いて来るだろう。



 その『第1王女』は、演奏会用の衣装の上に、豪勢なガウンをまとった姿で現れたのだった。


 タルレジャ・マフィアの、女ボスという風格である。



   ************     ************








 

 


 











































































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