わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百十八回
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「それにしてもですなあ・・・・・」
国連の事務総長(初代地球帝国首相に就任予定である。)は、急遽日本合衆国にやってきていた。
折り返し、『タルレジャ王国』に、訪問する考えでいる。
「できれば、国連本部で解決したかったのですが、どうしてもあの『王国』が折れない。最終的には、王国抜きで進めなければならないでしょうけれど、極力それはしたくない。あなたの、今一度、御助力が必要です。」
「できることはやりましたよ。働きかけはずっとしてきました。しかし、現状では、王国政府がいくら約束しても、国王が了承しなければ、どうにもならないですよ。しかも、『第1王女』がすべての実権を実質的に握っているし、彼女に対する『王国民』の支持は、まったく揺るがない。不思議なことにですね。まあ、さすがの皇帝陛下も、実の父上に直接手を出すことは、なさりたくないでしょうし。この問題は、持越しでいいんじゃないですか? 実際に『地球帝国』に対して使う意志はないですよ。そこは、『第1王女』も暗にですが、明言しています。」
「世界の多くの国が、了承しかねているのです。『王国』が、『南北アメリカ国』や『ロロシア』さえしのぐ、『未来兵器』を所有していることは、先の『火星人』とのテストマッチでも明らかです。その後、さらにそれを上回る『最終兵器』さえ、実はあるのではないか、と懸念する向きも多い。全地球の『核兵器』と『生物科学兵器』の廃絶が実施されるなかで、そのどちらにも当たらないという理由で、『王国』がそのような強力な兵器を所有することが認められて良い訳がない。『原爆を起爆装置に使わない水素爆弾』を持っていると言う推測もあります。」
「そりゃあ、デマでしょう。我が国も探査はしたが、そうしたものを作れるような施設はないようですなあ。」
「たしかに、『水爆』はデマでしょうなあ。でも、『神の杖』とか、『レールガン』に相当するような武器は実際に見たわけですし、現在まで、開発中だった国も、その凍結を表明している。『王国』だけ例外ということはできない。このあと、すぐに『王国』に行くが、是非あなたからも、もう一回、強力な圧力をかけてください。『第1王女』は、いまだにあなたのお国の国籍も持っています。マツムラ・コーポレーションの日本国内での活動を制限することも可能でしょう? 『皇帝陛下』の了承はいただいております。むしろ、それに従わないのであれば、問題になります。あなたの政治生命にも影響するし、帝国の『副首相』も無くなるかもしれない。」
「まあ、ぼくは、地位なんか、これっぽっちも気にはしないが。まあ、わが政党や、周囲のことはありますなあ。」
「そうでしょう。あなたは、ここで立場を固めておく必要がある。我々にとってもそうです。この国に、強い指導者が残っている必要があるのです。」
「まあ、あなたが『王国』に到着する前に、『ヘレナさん』とは、話をしましょう。特別な会話経路があることは事実ですからな。」
「そうでしょうとも。とにかく、実際の廃棄に時間がかかることは分かりますよ。要は、ああした目立つ兵器は、すべて破棄する、それまではけっして使用しない、という確約が欲しいのです。」
「まあ、やってはみましょう。」
「ええ、お願いします。時間が、もう、ないのです。『皇帝陛下』が、お待ちになれる時間が。実は、出発間際になって、『火星人』からも、秘密裏にではあるが、『すぐに善処するように』、要望が来ています。逆らう事は、非常に危険です。地球人類の破滅につながりかねない。」
「その自称『火星人』の、誰? から、ですかな。」
「自称ではないですよ、すでにね。ダレル将軍閣下です。」
「ほう、なるほど・・・・・」
杖出首相は、ダレルが拘束されているらしいという情報を、先に入手していた。
しかし、王国での『演奏会』に、その姿を現した、という最新情報も届いている。
どっちにしても、ヘレナに聞きたいことは、いろいろと出てきている。
何を考えているのか、是非、改めて聞いておく必要がある。
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『もう出て来てくださいよ。お仕事の時間だ。』
ダレルからのお呼びがかかった。
ブリューリは、地球の真ん中で、するべきことはやった。
抗ブリューリ薬に対する抵抗力は、かなり整ったはずである。
とは言え、相手はへレナである。
昔のいきさつから言っても、今回はけっして油断はしていないだろうし、さらに上を行く手段を持っていると考える方が間違いはない。
けれど、ブリューリ自身が、火星時代のブリューリではないのである。
彼は、その前の時代の自分を思い出していた。
自分が、なんだったのか。
どうして、ああなったのか?
すべてではないが、大方思い出したのだ。
それは、ヘレナにとって、あまり都合の良いものでは、ないはずである。
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「やたあ、やましんさん、やったああ! 幸子の結婚式、出たあ!!!」
「よかったね、幸子さん。」
「は~~~い。お話のこととは言え、嬉しいですう。長く待った甲斐がありました。」
「はい。」
「で、これから、どうなるのですか?」
「いやああ、それはまだ、秘密です。」
「ちゃあんと、考えてあるんですかあ???」
「いやあ、まあ、ね。今日は疲れた、フルートも人前で吹いたことだし。もう、寝ます。ぐ~~~~~~。」
「ふうん・・・・・まあ、いいか。今日のところは、許してやろう。」
鬼の姿になった幸子さんが、ふっと消えたのでした。
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