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わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第百十六回


 ************   ************



 『大奉贄典』と、その『弟子』は、さまざまな具体的準備を行っていた。


 最終的な候補者となった10名の青年について、念入りな、身を清めるみそぎの神事が行われていたのだ。


 彼らの体や精神に宿る、悪しきものの洗浄が目的である。


 それは、実際の衛生上も。行っておくべきことがらではあった。


 それは、遥かなむかし、『火星』で広く行われていた、あの『習慣』から得られた教訓でもあった。


 もちろん、現在の地球上には、そうした『習慣』は、ほぼないと言えるだろう。


 これは、あくまで、『神聖』なタルレジャ教における『神事』としての『儀式』である。


 それを司る主体は、あくまで『第1の巫女』だけだ。


 『大奉贄典』とその『弟子』は、神聖なる儀式の『補助者』であるにすぎない。


 王国の非常に古い時代においては、『巫女』自らが行い、余人の介入はけっして許されていなかったと言われる。


 そこに『補助者』がなぜ入り込むことになったのかは、実はよく分かってはいなかった。


 『第1の巫女』、つまり現在の『第1王女』ヘレナは、そうした経緯も知っている可能性が高かったが、誰も、あえて聞くことはなかったのだ。


 まあ、実際、聞くことが可能なのは、その時点の『大奉贄典』と、その『弟子』だけであるけれども。 


 『第1の巫女』に次ぐ権威がある『第2の巫女』たるルイーザも、こうした儀式があることは、つい最近までは知らなかった。


 彼女に、女王ヘレナの『分身』が住みついて、精神的に支配されたことにより、初めて知ったことがらである。


 さらに、今回は、その絶対秘密の『晩餐』に、『第2の巫女=第2王女』のみならず、その婚約者ふたりも同席すると言う。


 『第1の巫女』がお決めになったことは、宗教的儀式に関しては、『絶対』である。


 例外は、『経典上』では、『教母』さまのご命令が出た場合だけだけれども、実際のところ、それは不可能な状況になっている。


 『第1の巫女』が『教母』さまに、具体的にお伺いを立てなければ、『教母』さまは判断が出来ないからである。


 まず、そうした事態はありえないと言うべきだった。


 まさか、そこに『弱点』が潜んでいたとは、さすがの『ヘレナ』も、まだ気がついてはいなかった。


 『大奉贄典』とその『弟子』は、決められた作業を、マニュアル通りに、こなせばよかった。


 けれど、その背後において、まったく彼らが認識してない作業が、自動的に進行していることは、知らされていない。


 その必要もなかった。


 それは、少し次元のずれた、『北島諸島』の中の、ある島で実現している。


 そこには、みごとに『生贄』となった、多くの『若者』たちが暮らしていた。


 青年ばかりで、女性は存在していなかったが、毎年お祭りの日にだけ、女性がたくさん現われる。


 彼女たちが、どこからやってくるのか、青年たちは知らされていないし、そこに興味は示さないように作られていた。


 彼らは、本来の人間ではなく、いわゆる『コピー人間』である。


 それは、すでに『火星』で、リリカによって実用化されていた技術だ。


 また、『生贄』の儀式に使われる『調理器』は、火星文明の最末期に、女王へレナが、リリカに開発を指示していた、その完成された機材だった。


 火星文明の崩壊により、使われることはほとんどなく、そのまま『地球』に移設されていたのである。


 そうして、王国で現在まで活用されることになったわけだ。


 極めて効率の良い、『自動調理装置』だったのである。


 それは、『大奉贄典』とその『弟子』にとっては、大変に『神聖な』神具であったが。



  ************   ************



 パブロ議員の元には、情報が届いていた。


 議員が秘密協定を結んでいる、ある北島在住の『ミュータント集団』からの報告だ。


 紙媒体はない。


 これもまた、かつて金星で開発された技術であり、火星も導入していた。


 小さな物体が、自分で昇華しながら、目の前に文字が浮かび出る、スパイ用具である。


 指定された相手の前でないと、変態はしないのだという。


 議員は、こうした『おもちゃ類』が好きではなかったが、どうやら相手は気に入っているらしい。


『貴殿のご要望による調査対象者は、埋葬されたり放棄されたりした証拠は全くない。しかし、その後、『第1の巫女』が管理する『特異』な場所に実在していたと言う、数人の村の女の報告がある。『祭り』に招待されて、青年たちと関係を持ったとされる。しかし、その本人たちとは接触できなかった。捜している。見つかったら会わせる。待て次回。』


「ふん。『都市伝説』とか呼ばれる、根拠のないくだらない話ばかりだ。」


 議員は消えてしまった文字を罵った。


「しかし、意外と、それは使えるかも、しれんな。揺すってみるか。もめたくはない時期だろう。それに『第1王女』はどうやら、『帝国』からは、本当に排除されているらしいという話しもある。確認が必要だが。事実なら、使えるかもしれんな。まあ、遺跡からも、こうして出て来てるし。」


 議員は、机の上の『箱』を揺すった。


 それから、秘書に指示した。


「『第1王女』に、非公式ルートで、会見を申し入れてくれ。『お祝い』をぜひ直接伝えたいと。見せたい発掘品もある、と。10分でよいと。いや、5分でも良いな。」





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