表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/230

わたしの永遠の故郷をさがして 第四部 第十一章 


「いったい、何がどうなっているのでしょうか? 先生?」

 道子がまだ少し苦しそうに尋ねた。

「覚えてる?」

「はい。記憶はあるようですが、もしかしたら、多少、とんでいるのかもしれないですね。」

「まあ、まだ詳細はその腕輪を分析しないと分かりませんが、大変危険な生き物ですね。」

「これは、生き物ですか?そう言われれば、確かにそうだったかも。」

「あなた、私を信じられる?それとも、そうじゃない?あなたは、意識を二重に乗っ取られていた。いま一個は、外れたわけだけど、まだ本来のあなたじゃない。違うかな?」

 道子は、少しニヤッという感じで笑った。

「先生は、危険な方ですね。」

「そう。でも事実がわかっていないと、治療なんかできないでしょう?」

「はい。先生はいつも信頼します。でも、秘密は守っていただくことが前提です。」

「あなた、いつから宇宙人なの?」

「まあ、ひどい言い方ですわ。宇宙の中では、地球人だって火星人だって仲間ですもの。わたくしも先生も火星人の末裔です。」

「2億5千万年経ってもね。でもね、あなたは、きっと、そのどれでもない。」

「ふふふ。先生も仲間になりますか?」

「だから、出来ないんでしょう?」

 道子は両手を半分挙げて言った。

「まいった。先生には勝てないですわ。お姉さまは、大丈夫ですか?」

「病室に運びました。あなたは別の部屋に入れます。誤解しないで、間違わないようにするためだから。」

 道子は、こんどは、大きく口を開けてから答えた。

「はい。理解します。」

「都内で、『宇宙風邪』が、急速に広がっています。誰かが菌をばら撒いた。でも、おかげであなた方の腕輪は外せた。いったい、これは誰の仕業なのかしら?」

「『宇宙風邪』? それは、大昔に、つまり人類の歴史時代以前に、一度蔓延したあと、封じ込めたはずです。」

「そう? 犯人は、誰?」

「可能性があるのは・・・」

「うん?」

「お姉さまに、聞いてください。」

「わかった。治療法は分かっている。問題は、まだ間に合うかどうかよね。」

「実家にも、王国にも、すぐ指示します。国連でも、対応が必要です。」

「ご実家は、もう動いているでしょうけど。確認してください。総督閣下が号令出せば、威力が違うでしょう?下手したら、人類が危ないでしょう?」

「はい。感染経路が普通とはまったく違います。もう、三十分もあれば、すでに地球全体に広がっていると考えられます。本当に、人類の危機です。」


 ************   


「アニーさん、これはまずいよ。猛烈な勢いで感染が広がっている。」

 シモンズがデータを睨みながら言った。

「ハイ。確認しまシタ。お薬ノ、きんきゅウ製造をシテイマス。月のウラガワの研究所にも依頼シマシタ。ドウヤラ、りりカさんタチも同意してクレマシタ。」

「あの、リリカかい?火星の鬼。」

「まあ、ソウレス。」

「ふうん。大丈夫かなあ?それに、間に合うのかい?」

「非常に厳しいレス。体力のないニンゲンは、スデニ危険。」

「ぼくには責任があるよ。なんか手がないのかい?」

「注射シナイト、効果ガエラレナイノデス。・・・あ、シモンズさんニ電話。ヘレナから・・」

『おおい! 聞こえる?』

 ヘレナの声だ。その姿が中空に浮かんだ。病室らしい。

「聞こえてます。」

『あなたが、犯人でしょう?』

「半分あたってます。」

『まあ、前科があるからね。』

「今回は、ぼくが作った菌じゃあないよ。」

『わかってる。お礼を言います。助かったわ。腕輪は外れた。感謝の印と言ってはなんですけれど、この菌の力をぐっと弱めるように、すでに地球上の人間たちの体の中に、抵抗力を与えました。ただし、すぐ完治にはならない。まあ、お薬が届くまで持つくらいにはできると思うわ。まあ、ほっといたら直ってしまう人もかなりいるでしょう。ただし、「不感応者」には多分、あまり上手くゆかない。見分けは症状でしか、つかないわ。それでも、何もしないのとは随分違うとは思う。あとは、具体的な努力しかない。迷惑かけてしまったわ。許せないのは、ダレル。それと、あの子。たっぷりお仕置きしなくては。じゃあ、またあとで・・・』

「おいおい、お仕置きって何だよ?あ、切れちゃった。ううん。やはり妖怪変化。しかし、必ずしも、すべてが悪でもないらしいなあ。ねえ、アニーさん。」

『ヘレナは、ヘレナでアッテ、単純に、善悪デは、測れないノレス。』

「ふうん。善悪以外の、どんな基準があるの?」

 アニーは答えなかった。


  ************   ************


 二人のリリカから、アリム(ジャヌアン)に連絡が来た。

「腕輪が外されたようです。失敗です。ダレルさんは、またまた逃走しましたが、無駄でしょう。」

「おやおや、それじゃあ、あたしが危ないわ。取調官長さんに、念のため、他所で匿ってもらわなくちゃね。」

「ヘレナ様は、どこに逃げても、お見つけになりましょう。お覚悟なされませ。」

「誰の味方なのよ?」

「正直に申しております。」

「あたしを甘く見ちゃあいけない。いいわ、でも計画はそのまま実行するんだから。あなた方は、少し待っていなさい。また指示するから。いい? お薬作るのには協力して。人類に滅亡されたら本末転倒だからね。」

「わかりました。」


    

「さて、のんびりはしていられなくなった。第三王女を、今すぐにでも消さなくては。刺客は変更。この際、自殺してもらおうかな。ダレルさんに、依頼しよう。まったく、最初からそうすればよかったわ。かっこつけるんじゃなかったな。まあ、あたしの美学が、そうさせるんだけれど。」

 アリム(ジャヌアン)は、部屋の中で踊り始めた。



 ************   ************


「ふうん。どこに隠れたのかなあ。今回は、うまく姿をくらましていると見える。次元を超えたかもしれない。そうなると、非常に厄介だわ。それにしても、ヘネシーが危ないわね。アニーさん?ちゃんと、守ってあげてくれてる?」

『ハイ。ヘレナさあん、お呼びで?』

「あなた、まだ、ぼけてるわね。」

『多少は。』

「ボケボケですわ。ヘネシーの様子はどう?」

『いきり立っておられマスレス。特に杖出首相に。また、どうやら、国王ノ処刑も考えているようレス。』

「まさか? でも、ダレルがやれと言えば、やるかもしれないわね。きっと。もう、そのくらい洗脳されてると思う?」

『はい。思ったより、深く改造されてイマスね。タダシ、ダレルさん自身が、どうも普通じゃナイノデハないかト想像します。ハイ。ヘレナが指示した事、想像した事の遥か違う彼方を、ヤッテイマス、なのレスです。』

「ダレルの後ろに、誰かがいると言うのね?あの子を、操っている。」

『ハイ。この際、モウシアゲマスがね、そう考えラレエマスデスよ。』

「アリムでしょう?」

『サアテ、アニーハ、アリムさんダケデハナイ、と思うノデアリマス。教母サンも、共犯デアラウト、トウショカラ、推定シマシタ。シカシ、証拠は、見つかってイナイ。』

「ふうん。ママは、まだ怨んでいるのかな。でも、ママはヘネシーが大好きなはずよ。わたくしをまだ怨んでいるとしても、ちょっと考えにくいなあ。やはり、ブリューリちゃんか。ダレルは、うまく操っているつもりで、操られている。よくあるお話よね。」

『しかし、ブリューリさんの気配はアリマセン。いくらナンレも、居ればワカリマス。人間じゃナイカラ。』

「でもね、アニーさん。ブリューリはいるのよ、この地球上のどこかに。分身が地獄で捕まった事は分かってるけど、本体が見えない。あの、気に入らないメッセージをよこして以来、雲隠れをした。おかしいのよ。どこに隠れたのか? 隠れても、あなたにも、わたくしにも、見えない場所よ。どこ? いくら、抗ブリューリ薬を撒いても、効かない場所よ。完全に密閉されていて、しかも情報がよく見える場所。それは、どこ?」

「さあて・・・・・」

「相手は、『とりあえずは』ヘネシーを狙っている。セレモニーでかっこよく襲う気だったけど、これで気が変わったかもしれないわね。わたくしとルイーザがどっちもこうして留守になった。ここを狙うかもしれない。というか・・・そうか、わたくしに殺させる気だったのか・・・」

『ひエー。オソロシヤー!』

「わたくしも、相当なおボケ様よね。そうか。やはり、意外と、黒幕はすぐそばにいた・・・か。」

『え?』

「いい、アニー、これから指示すること、絶対にボケないで、守ってね・・・・・」


  ************   ************


 セレモニーの日取りは、決まった。

 ところが・・・・・

 

 大多数の王国民は、常に国王と王室と教会を支持してきた。

 それは、確かに、パヴロ議員の様な反体制派もそれなりの力を持ってはいるが、三王女の人気は、それらを、はるかに超えるものだった。

 しかし、王国民はここに来て困惑していた。

 国王が姿を現した!

 これだけで、もう天地がひっくり返るような大事なのだ。

 そこに持ってきて、第三王女と第二王女が地球を支配する存在となり、その政策に真っ向から反対する立場で、国王は現れたのだ。

 南島の王国民は、基本的に第一王女と第二王女によって洗脳されている。

 しかし、北島の住民は、結局第一王女の干渉があって、結果的にはまったくその影響を受けていない。

 

 だから、南島の住民は、皇帝陛下を支持し、北島の住民はこれまでどおり、国王と第一王女がすべてだった。

 第一王女は、当然皇帝陛下の支持者であるはずなのにもかかわらず、この日のテレビやラジオ、インターネット等で、王国民はもう度肝を抜かれ、ひっくり返る事となった。


 『わたくしは、現状では、国王様を支持いたします。』


 たったこの一言のメッセージだったが、東京発のこの言葉は、世界中を駆け巡った。


 ************   ************
























































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ